食いタンのみのタモツ
第七話「トイレに行きたかった伊藤さん」
第一回戦第一試合が終わった後、勝者のタモツを除き、「流しのガンマンジョー・ジョニー・ジョー」「テンパイ即リーのバッベボン・バベ男」「人数合わせの伊藤」の三人は敗者復活戦専用の対局室に集められた。敗者復活戦では、一回戦敗退のダメージで発狂する者や、後がない対局を勝ち上がるために殺人も辞さない者などが少なくないので、専用の対局室では厳重な警備が敷かれている。また、臨機応変に事態に対処出来るように、警備の黒服から、今大会総責任者であるドンジャラ良江への連絡も密に行われていた。
「あの、トイレ行ってきていいですか?」
伊藤は一回戦対局中に大量の小便を漏らしてしまったため、スカートとパンティを履き替えたかった。純白のスカートについた黄色いシミが目立ち、伊藤は恥ずかしさで顔を赤くしている。その姿が全世界へ中継されてしまったのかと思うと、その取り返しのつかなさに伊藤は恐怖を感じ、また強い尿意に襲われていた。少し漏れていた。
「いけません。不審な行ないをされぬよう、トイレも食事も睡眠も、敗者復活戦が終わるまでは全てこの部屋の中で行なってもらいます」
そう言うと黒服の一人がドン、と床におまるを置いた。
「こちらにどうぞ。ご安心を。私たちは目をつぶり、耳をふさぎ、息を止めておりますので。また、本戦と違い、敗者復活戦の録画映像は、ダイジェストだけを後で流すことになりますので、余分な箇所はカットされることになっております」
そうは言っても、ジョニーとバベ男は爛々と輝く目で伊藤を見ている。
しかし尿意が迫ってくるのは仕方がない、あまり警備の黒服たちの呼吸を止めっぱなしにして死なせてはまずいと思い、急いで伊藤はおまるにまたがり放尿した。
彼女は急ぎすぎた。
スカートとパンティを脱ぐのを忘れてしまっていた。
さすがにもう汚れきったものを身につけていられなくなった伊藤は、丁寧に手で股間と尻を隠しながら、スカートとパンティを脱いだ。
「着替えさせてください……」
ヒック、ヒック、としゃくりあげる伊藤は流れる涙をぬぐうために手をあてるが、下半身が露わになってしまうことに気付き、また手を下ろす。
「残念ながらこの場で伊藤さまご自身が着替えをご用意になっておられぬ限り、私たちが衣服をお渡しする、といった協力行為を行なうことは認められておりません」
伊藤は上半身を犠牲にして下半身を守ろうと思い、着ていたシャツを脱ぎ、ブラジャー姿をさらしながらも、下半身を隠そうとした。
「また、まことに残念ながら……」
黒服は伊藤の行為を手で制す。
「不自然な方法での衣服の着用も、イカサマ防止のために禁止となっております」
絶望した伊藤の手からぽとりとシャツが落ちる。
それを眺めていたバッベボン・B・バベ男の股間はボッビバンバンビンビンボッボになっていた。
画・マタギ先生