Neetel Inside 文芸新都
表紙

NOT シー LOVE!
十余り八.五つ眼 「マーガレット・ケンウッドの決意」

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――Moreover,man slaughtered! eyeball scooped out!(またもや、男性が餌食に! 目玉も抉られ!)――

――investigation of event has a rough going‘Eyeball collector's Murder’(捜査は難航‘アイズコレクター殺人事件’)――
 
――Victim of the fifth person! Where the criminal? (五人目の犠牲者! 犯人は何処へ?)――

――男性の変死体 新都市――

――米で同類の事件? 模倣犯?――

――アイズコレクターは生きている? 元FBI捜査官に独占取材!――


 今、挙げた新聞や雑誌の見出し記事は岩下さんが集めてスクラップしたものだ。
 私はそれらのスクラップが貼り付けれているスクラップブックを静かに閉じた。そして、そっと岩下さんのトートバックの中にそれを仕舞った。当の岩下さんは私の横――病院のベッド――で安静に眠っている。つい数時間前の鬼気迫る彼女の雰囲気が嘘みたいに感じられるような安らかな寝顔だ。
「I'm so sorry…….(本当にごめんなさい……)」
 私は彼女に向かってボソッとそう呟いた。
 岩下さんを傷付けてしまったのは確かにあかりんかもしれない。でも、あかりんが岩下さんを傷付けてしまうきっかけを作ったのは他でもないこの私なのだ。私が「サンタナ」で岩下さんに対して「あのような事」を言わなければ、岩下さんはこんな事にはならなかった。そう考えれば考えるほど私は後ろめたい気持ちでいっぱいになってしまう。
 本当に人間はおかしな生き物だと思う。どうして泣いてまで自分以外の誰かの幸せを願う事が出来るのだろう。そんな感情の傍らに誰かの不幸を願うどす黒い感情も同時に併せ持っているというのに。けれども、岩下さんは私が言った事を真に受け、そして、あかりんの幸せを願い愚直にも東奔西走したのだ。何が彼女をそこまでさせるのだろうか。その答えを今すぐに岩下さんに聴いてみたい。
「ねぇ……どうして?」
 でも、岩下さんは私の問いかけに返事をするわけがなかった。
 私は彼女の安静を邪魔しないようにそっと岩下さんの病室から出ていくことにした。
 病室を出る間際に岩下さんの方を振り返って彼女を見つめてみた。そして、ふと思った。
 岩下さんも私と同じように大切な人を失くす痛みを知っているのだろうか。失う事の痛みを知っているからこそ、あかりんの為にあれ程の涙を流したのだろうか。
 結局それは私にはわからない。でも、岩下さんの真意がわからずとも私にはやるべき事がある。あかりんの為に、そして、「光一」の為にやるべき事がある。本当は自然の成り行きに事を任せるつもりだったけれど、こんな事になってしまったのだから仕様がない。
 明日、あかりんに会おう。そして、あかりんに言ってしまおう。 
 それが今の私に出来る岩下さんに対する罪滅ぼしなのだ。

       

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