Neetel Inside ニートノベル
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青と白の浜辺

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青。
私の真上には真っ青な空色のキャンバスが広がっている。
空に浮いている雲たちは、まるで無邪気な子供がそのキャンバスの上に白い絵の具でかきなぐったそれのようだ。


そこに茶色で大きな二つの翼を生やした生き物が飛んでいる。
なに、珍しいこともない、ただの飛竜だ。
しかもワイバーン、数いる飛竜の中でも特別おとなしい部類に入っている、いや、そのはずなんだが……
「グルルルッ!」
ワイバーンはその赤い瞳でこちらを睨みつけて鼻息を荒げている。
私はそんなワイバーンを眺めながら小さくため息を一つついた。
「……、まったく、どうして私はこう魔物に好かれないのでしょうね……」
そんなことをもらしながら腰の鞘に納まっている刀の柄に手を伸ばす。
いまどき純粋な鉄を打って作られている刀なんて骨董品としての価値しかないと大抵の人は思うかもしれないが、
こいつはずっと一緒にやってきた私の相棒その1だ。
名前は黒猫。
さて、そうこうしている間にワイバーンは勢いをつけて私に急降下してきた。
「まったく、命は粗末にするもんじゃありませんよ……」
私はぼそっとそう言うと黒猫を抜刀し、地面を蹴り上げた。
「せいっ!」
私は一思いに黒猫でワイバーンを一刀両断した。
真っ二つに裂けたワイバーンだったものは砂浜にどちゃりと音をたてて落ち、そのままじたばたともがいていたがすぐに動かなくなった。
「せめて安らかに眠ってください……」
私はワイバーンに死体にそう言ってから目を閉じて一礼した。


「くれは~」
実にむず痒い声に私はゆっくりと瞳を開く。
すると鮮やかな緑色のビキニに身を包んでいるこれも珍しいことのないエルフの女の子が私に手を振りながら駆け寄ってきた。
「やぁトリス、海水浴は楽しめましたか?」
「ぶーぶー、楽しさ半減~、私はくれはの水着が見たかったのに~」
この甘ったるい喋り方で話しているのはトリス。
一緒に旅をしている私の相棒その2だ。
トリスは私の後ろに横たわっているワイバーンの死体を見るなり、
「およよ、私のいない間にまたくれはっちは魔物とバトっちゃってたんだ」
と、しごく当たり前のことを聞くような表情でそう言った。
「くれはっちって言うな」
「アハハ、もう、そんなことで怒らない、怒らない♪」
まったくいつも思っていることだが扱いにくい。
私はトリスと言い争うのをやめて踵を返した。
「ほら、気がすんだら行きますよ」
私はそういって歩き出す。
「行くって……、ちょっとくれは、いや、くれはちゃん、むしろくれは様待ってよ~」
後から楽しげにピタピタと砂浜を素足で踏む音を響かせながらトリスが駆け寄ってくる。
私たちの別に珍しいこともない、いつもの日常が今日もこうして過ぎていくのであろう。



ぐ~
「あ、くれはちゃんお腹なった♪」
「///」



くれはの日記帳、青と白の浜辺にて。

       

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