Neetel Inside 文芸新都
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主人公になりたかった男
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今日も学校だ。


7時30分、部屋のインターホンで目を覚ましベッドからのそのそと這い出す。

 「起きた?」

母の声が聞こえる。つらい、しんどい、めんどくさい。
そんなことをよそに毎日は繰り返す。

一日の授業を確認し、鞄に授業道具を詰め込む。
ワイシャツと靴下を持って、2階に降りる。

「毎日毎日同じことの繰り返しか・・・」

朝の白米を口に含んで牛乳で流し込む。
顔を洗う、髪を洗う。
ドライヤーで乾かして、ワックスをつける。

正直髪型なんてどうでも良い、誰も俺なんて見てないから。
俺の好きなように、やりたいように。

「行ってきまー」
「行ってらっしゃい」


ママチャリのかごに鞄を突っ込んで。
いつものように、糞つまらない日常を迎えに行った。


     


まっすぐな裏道のど真ん中を行く。


春の終わりの暖かい風に憂鬱になりながらも自転車をこぐ。



最近、吐き気が酷い。
それはこみ上げてくるような物理的なものじゃない。

精神的にくるような、額にそわそわした何かがきて、涙腺が緩み、息が切れる。
夜は涙が出そうで出なくて、変な気持ちで布団をかぶる。
いらいらが募る。しんどい。

寄りかかるような体勢で自転車をこぐ。


上目遣いに空を見ると綺麗な青空が見下ろしていた。


青空は好きだけど、雨は好きだけど、曇りは嫌い。
今の気持ちは曇りまっしぐら。……つらい。





目の前にはトラックが迫っていた。

     


走馬灯のように思い出した。



学校で事故の報告があったこと。
その事故の被害者が俺の大嫌いな格好つけてる不良だったこと。
いつも「死ねば良かったのに」と思ってたこと。

「死ぬのか俺?」

スローモーションなんかじゃない。
止まった時のコンマ1秒の世界でいろいろなことを考えていた。





間一髪。避けた。
トラックが右へ、自転車が左へ移動した。
奇跡に近い確率で回避した。



でも俺は

それを何事も無かったかのように

後ろから聞こえる罵声をよそに

学校へ向かう


毎日毎日

同じ場所へ

       

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