時は暗く沈んだ夜。日をまたぐかまたがないか。場所は繁華街を離れた人通りの少ない道。
女性の悲鳴が舞い上がり、夜空へ吸い込まれていく。
それを聞くは正義の味方。久呂津知町のローカルヒーロー。疾風のように闇を裂き、光のごとく夜を照らす。
歯をガタガタを鳴らし震える女性。腰を抜かして地面に倒れている。
女性の前には季節外れのトレンチコート。開けられたコートのドアから見ゆるはいきりたつヒズ サン。ロートル サン。
二冬はこせるであろう皮下脂肪を貯めたボテッ腹、頭上は寂しいのに、生える場所を間違えた無駄に濃いスネ毛。ザ・変態痴漢男。
「ええい! いたいけな若い女性に……」
颯爽と現れるは正義の味方。
「ええい! いたいけな女性に己の醜い欲望を見せつけ、悦に入るとは男の風上にもおけんやつ」
えらく匂ってくる香水の匂いにヒーローは一度口をつぐんでから、言い直した。
女性が助けの声がするほうを振りかえる。
「おパンツかぶって パンツマン!」
そして、また久呂津知町の夜空に悲鳴が響き渡った。