Neetel Inside ニートノベル
表紙

童貞賢者オナキング
第二話「激闘! VS四天王」

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 こうして強大な帝国となったリーマン・シスターズは、勃起エネルギーをほぼ独占することに成功した。
 しかし幸いなことに、予想されていた社会の混乱は起こらなかった。まだ誰もEDになったことを、周りに明かさなかったためである。
 今は精力増強グッズがバカ売れしている程度だが、騒ぎが大きくなるのも時間の問題であった。
 もはや帝国以外で勃起出来る男はヤラハタ シゴキ。ただ一人である。
 戦え、シゴキ! 世界のチンチンを取り戻す、その日まで!!

 いや、ちょっと待てよ……帝国を除けば、もう俺以外の男は全滅なんだよね……
 もしかしてモテモテエロゲフラグ立ってる? ハーレム作れるじゃん、ハーレム。チンギス・ハーン超えるぜ!
ジャック「さっきから、何ぶつぶつ言ってるんですか?」
シゴキ「いや、どうやって世界に平和をもたらそうか考えててね」
ジャック「さすが主人公ですね。
しっかし童貞だけの国なんて……放っておいても一代で滅びるでしょうが、勃起エネルギーを独占されていては私達も同じ運命ですからね」
シゴキ「……ストーリーが破綻しちゃうと困るから黙ってたんだけど、人工受精させればEDでも問題ないんじゃね?」
ジャック「駄目なんですよ……オナニスキー粒子が無い状態では受精卵が成長しなくなるんです」
シゴキ「またしてもオナニスキー粒子か。便利な言葉だね」
ジャック「ですから帝国を討ち滅ぼす以外に方法はありません。現在、先進国で構成されたD9(童貞ナイン)が対策会議をしているようですが……」
シゴキ「あれ? 壊滅したんじゃなかったっけ?」
ジャック「世界中の特殊性欲部隊はもう壊滅しましたが、まだ軍隊は残っています。ですから、少なくとも童貞島の百万人の相手は彼らがしてくれると思いますよ」
シゴキ「怪しいもんだ……せいぜい部隊を送り込んで『部隊は壊滅状態! 恐ろしい能力者がいます! 敵は一人で・・うわあぁぁ、来るなあぁぁぁぁ……ブツン』みたいな、噛ませ犬通信を入れてくれるぐらいだろ」
ジャック「そんな無能な集団じゃありませんよ。特に日本の代表者は、第二次幼女大戦でも活躍した、わた・・」
シゴキ「ちょっと待った! 新キャラの名前覚えるのしんどいから紹介しないでくれ」
ジャック「酷いこと言いますね。脇役にも人権はありますよ……
なんにせよ、その会議の報告待ちです」
シゴキ「手っ取り早く、核ミサイルでも打ち込めばいいのに」
ジャック「何言ってんですよ! アニメの見すぎです。核なんて使えるわけないでしょ」
シゴキ「使ってこその兵器なのに……」
ジャック「使わなくても兵器になるのが核なんです。それに稀代のアホとして、教科書に載りたがる人なんていませんよ」
シゴキ「じゃあジャックのテレポートを駆使して、貯水タンクに毒を流し込んで回るのは?」
ジャック「……あっ、都合よくメールが来ました。作戦会議が終わったようですね」
 スルーされちゃったよ。ちょっと寂しい。
ジャック「作戦内容を伝えます。
一週間後にダッチワイフー上陸作戦を行い、童貞百万人を武力鎮圧するそうです。一週間のオナ禁では、さほど脅威にならないだろうとの考えで日程が組まれたようですね」
シゴキ「すごい普通だ。何の面白みもありゃしねえ」
ジャック「同時に極秘作戦も展開するようですが、極秘ですので内容は知らされておりません。私達の任務は『四天王とオナキン・スカイウォーカーをどうにかせよ』とのことです」

 どうせなら四天王もオナキンもまとめて射殺してくれればいいのに。って思ったけど、能力者は能力者でしか倒せないとか何か設定あるんだろうな、と脳内補完した。
 それと今、気付いたんだがタイトルだけ見ると、まるでオナキンが主人公みたいじゃないか。これは困った。
シゴキ「問題はやっぱりオナキンか。とてもじゃないが勝てそうにない……。人質に使えそうな人間とかいないの?」
ジャック「難しいですね。独身ですし、彼の両親はすでに他界していますし・・その前に人質なんて取っちゃ駄目です!」
シゴキ「……ツッコミが遅くなったな」
ジャック「誰のせいですか、誰の」
シゴキ「ぶー。ここはもう順当に四天王から攻略していくか?」
ジャック「そうですね。四天王を倒していけば何かしら方法が見えてくるかも知れませんし」
シゴキ「よーし、多少強引な展開ではあるが、一週間の内に四天王の奴らを潰すか」
ジャック「しかしどうするんです? まずは仲間でも探しに行きますか? 向こうが5人ですから、こちらも5人になるように」
シゴキ「おっ、ジャックも随分展開が読めるようになってきたじゃない。でも、せっかくの便利な能力を忘れちゃ駄目だ。一人ずつテレポートで運んで、百人ぐらいでリンチすれば楽勝じゃないか」
ジャック「ひ、卑怯過ぎますよ!」
シゴキ「良い褒め言葉だ。もっとも、オナキンだけには百人がかりでも勝てる気がしないけどな」
???「私もそちらの童貞の方と同意見ですね」
シゴキ&ジャック「!!!」
 露出狂を思わせるマント姿の男の存在に気付いた時、俺達は既に肩をつかまれ、テレポートさせられていた。敵にもテレポート使える奴がいたとはね……
 太陽がまぶしい。どうやら外に移動させられたようだ。ここは・・・野球場かな? かなり広い。あー、靴下のまんまじゃん。ママンに怒られる。
 そして周りには、予想通り百人ばかりの童貞が……。手にはハサミ、バット、バールのようなものが握られている。マジっぽい武器はやめて。

 どうやら敵に先を越されちまったようだぜ、この卑怯者めが。マジ、ファック。

     

ジャック「すっかり包囲されてしまいましたね」
シゴキ「誰だよ、俺と同じようなこと考えた奴は……」
???「全てはオナキン様のお導きです」
 露出狂のように見えるマント姿の男がそう答えた。
ジャック「あなたが私達をテレポートさせた訳ですか?」
???「ええ、その通りです」
ジャック「好都合です!」
 ジャックが力を込めると大気が揺れ、またたくまにオナラが百人の敵を包み込んだ。臭くはないけど、臭い気分になってくるぜ。
 オナラが晴れると、そこにいたはずのモブキャラ百人は姿を消し、露出狂っぽい男1人だけが残されていた。
???「ビックリンリンです。てっきりテレポートで逃げてしまうかと思いましたよ」
ジャック「例え逃げたとしてもあなたが連れ戻すのでしょう? さっき肩をつかんだときに付着させた、この発信機のようなモノで追いかけて」
???「ええ」
ジャック「そして私との消耗戦にし、テレポート出来なくなったところを百人がかりで攻撃するつもりだったんですか?」
???「ええ」
ジャック「しかし、その思惑は崩れましたよ。逃げなくていいんですか?」
???「ええ、せっかくの逃げられなくなった獲物を前にして、逃げる必要なんてナイジェリア?」
 なんかこいつの口調ムカつく。やめさせよ。
ジャック「そうですか……」
 ジャックが小声で話しかけてくる。
ジャック「いくつか分かったことがあります。まず彼には感知能力が無いこと。私がテレポートさせた百人を連れ戻さないのも、発信機を使うのもそのためです。
そして・・」
シゴキ「おい、ちょい待ち。露出狂が近付いてくるぞ。都合よく待っててくれる相手じゃねー」
ジャック「では一つだけ。感知能力が無いということは、私達がテレポートで逃げてしまえば、もう追って来れないということです」
シゴキ「逃げるのはありなんだ」
ジャック「戦闘の基本は退路の確保です。今日勝てなくても、明日勝てばいいだけの話ですからね」
 この子、戦いのことになると結構シビアになるなぁ。
シゴキ「よっしゃ。ようはさっきの百人テレポートで疲れてるから、回復するまで時間を稼げってことだな」
ジャック「です」
 よし、俺のトーク術を見せてやるぜ。
シゴキ「YO、俺はヤラハタ シゴキ。あんたは四天王の一人かい?」
???「いいえ、私は百八天王が一人ゼンラーです」
シゴキ「ひゃくはち? 四天王じゃなくて?」
ゼンラー「ええ、以前は四天王だったのですが、なにせ組織が百万人にまでなったでしょう。それに合わせて増量したんですよ」
シゴキ「お、多すぎる。倒しきるのに何ページかかるというのだ……」
ジャック「待って下さい。たしかにゼンラーの性欲は強大ですが、それに並ぶ者は童貞島に百人どころか十人もいませんよ?」
ゼンラー「ええ。正確に申し上げますと百八天王の中の、皮かむり二十一人衆の中の、四神のゼンラーです」
シゴキ「ながい!」
ゼンラー「ほとんどの方は、まだオナ禁を始めて日が浅いんですよ。ですから、四神以外の方々は数合わせの中間管理職とお考え下さい」
シゴキ「四天王が四神になっただけかよ。四神って、あれだろ。白虎とか朱雀とかの。お前の聖獣はなんなんだ?」
ゼンラー「……そこまでのキャラ付けは考えてませんでしたね」
シゴキ「だったら考えといた方がいいぜ。そしたら『五人目の最強戦士、黄竜推参!』とか出せて時間稼ぎ出来るからな」
ゼンラー「ええ、考えておきます」
シゴキ「……」
ゼンラー「……」
 クソ、話すネタが無くなった。最近アニメ見てる? とか定番クエスチョンは場違いだし……そうだ!
シゴキ「お前がオナキンに付き従う理由はなんだ? 金ならくれてやる。人質を取られているのなら誘拐してきてやる。強い奴と戦いだけなら、お前んとこのボスの方がはるかに強いぞ。
悪いようにはせん。こちら側に付け!」
ゼンラー「そんな下らない理由と思っとんのかぁ!」
シゴキ「なんだ、狂信系のキャラかよ。して、その理由は?」
ゼンラー「……あれは、まだ私が留置所にいた頃の話です。私は無実の罪で捕まり、身も心もヒゲもモサモサでした」
シゴキ「無実の罪?」
ゼンラー「私はただ生まれたままの、ありのままの姿を見せただけです。それをあろうことか、世間の俗物共は異常者扱いしたのです」
シゴキ「露出狂かよ……人間が不快に思うことは犯罪になっちゃうんだよ。残念なことに」
ゼンラー「私の裸が何をしましたか!? それに露出狂なんて品のない言い方はやめて下さい。そうですね……露出家とでも呼んで下さい。芸術家のようなノリで」
 絶対、呼ばねー。
ゼンラー「そして露出狂のレッテルを貼られ、再就職もままならぬ私に職を与えて下さったのがオナキン様だったのです。そのときにオナキン様から頂いたお言葉は今でも忘れません。
『仮にお前がヘンタイだったとして、男がヘンタイで何が悪い? それに既存の価値観を塗り替えるヘンタイは進化の鍵だ』
つらくなったとき、苦しくなったとき、この言葉には何度も救われました」
ジャック「いい話っぽくしてますが、内容酷いですよ」
シゴキ「どんどん自分から喋ってくれそうだから黙ってようぜ」
ゼンラー「そして、我命有る限りオナキン様守ると誓ったのです」
 なんか女子高生のプリクラみたいな言い回しだな。
ゼンラー「おっと。誤解されては困りますが、そもそも私はただ下半身を見せ付けるだけの、はた迷惑なゲス野郎とは訳が違います。
まずターゲットがどんな露出を見たいか知る為に、年齢、嗜好、視力、家庭環境、性癖、全てを調べ尽くします」
 な、なにいってんの、こいつ?
ゼンラー「常に勃っているチンチンを提供することも重要です。相手に失礼ですからね。
他にも障害物の有無、外灯の光量、月の満ち欠け、パトカーの巡回経路、全て重要なファクターです。そして一ヶ月以上前から計画・・」
ジャック「少しは回復しましたから早くこの、はた迷惑なゲス野郎をブタ箱送りにしましょう」
シゴキ「そうだな。あそこまでいくと、ちょっと無理だし。いきなり露出の講義をされても反応に困るし。
それと戦う前に一つ確認したいんだが、あの露出狂とお前が兄弟っていう設定はないよな?」
ジャック「ありませんよ、そんな設定。私は一人っ子ですし。それにあんなのと、どこか共通点がありますか!? 私?」
シゴキ「いや、能力が似てるから気になっただけだ。よし。んじゃ、いきますかな」

     

ジャック「サポートします。目くらましぐらいにしかなりませんが……およ? ……ない?」
 なにやらジャックは自分の腰の周りをぺたぺた触っている。どうした? チンチン取れたの?
ゼンラー「探し物はこれですか」
ジャック「私のレディスミスが!」
ゼンラー「拳銃なんて使っちゃ駄目ですよ」
 ゼンラーは銃口をジャックに向けながらそう言った。
 ってかニューナンブじゃないんだな。それとも自分の銃に名前付けてんの? ハズカシ。

 ほどなくして、ゼンラーの股間じゃない方の拳銃が火を噴いた。お~、ものすげー音がしてる。あんなにパカスカ撃てるもんなのか。
 こりゃあ、ジャック死んだんじゃね? こっちに撃ってこなくて良かった。
 拳銃が鳴り止んだ。硝煙を上げる拳銃。対峙するは無傷なジャック。なんでじゃ。
ジャック「盗みに特化したテレポーターですか。油断しましたね。しかし、オナニスキー粒子をまとう者に銃器は効きませんよ。あなたなら知っているでしょう?」
ゼンラー「ええ、軽いデモンストレーションです」
シゴキ「……銃が効かない? そいつはいくらなんでも無理があるぞ……」
ジャック「そうですか?」
シゴキ「そうですとも」
ジャック「そうですねえ……水が銃弾を通さないのと似たようなものですよ」
シゴキ「水?」
ジャック「はい。銃を水に向かって撃った場合、銃弾は水に着弾した瞬間に粉々になってしまうんです。口径の小さい銃なら粉々にはならないそうですが、それでも殺傷能力は弱まります。
この前テレビで、プールに対物ライフルぶっ放してるオッサンがいましたが、水柱が上がるだけでプールの中に置いてあるモノは無傷でしたよ」
シゴキ「おお! そのうち粉塵爆弾みたいに使い古されそうな現象だな」
ジャック「さすがに大型ライフルで撃たれれば、かなりの衝撃を受けて無傷ではすまないでしょうが……やはり有効なのは、オナニスキー粒子をまとった武器を使うこと。または面による衝撃を与えることでしょうか。
それよりも」
ゼンラー「もう話は終わりましたか?」
ジャック「もう少し待っていただけ・・っ! よけて!!」
 突然のジャックの大声に驚いたが、体が反応出来なかった。生暖かい風が体を通り抜けていくような感じがした。
 クソ、何か取られたか!? 武器になるようなモノは持って無いが……。携帯はある。財布もある……何だ? まさか心臓抜き取られたりしてないよね?
 ふとゼンラーに目をやると、手に丸いモノが握られている。
 何だ、ありゃあ……あぁっ! それが何か気付いた瞬間、激痛が走る。あれは俺の……
ゼンラー「あなたの睾丸ですよ。見るのは初めてでしょう?」
 お、おれのタマが! 言いようのない痛みが股間を襲う。うずくまり身動きが取れん。
ジャック「シゴキさん! ッ! 一旦、退きます!」
 俺は、めのまえが まっくらに なった。


 体が軽くなり引き伸ばされるような感覚に包まれる。こりゃ、あれだな。テレポートだ。
ジャック「……ふぅ、とりあえず1kmほど離れました。シゴキさん、大丈夫ですか?」
シゴキ「うぅ……俺はあれから何日寝てた?」
ジャック「三十秒です。現実逃避しないで下さい」
シゴキ「冗談だって。それにノリで痛がってみたけど、言うほど痛くないかもしれん。いや、痛いことは痛いよ? でも痛みより怒りが勝ってるっていうか……傷も見えないし」
ジャック「その意気です。なるべくゼンラーは、ここで倒しておきたいですからね。これが終わったら必ず病院に行きましょう」
シゴキ「やっぱりテレポーターは、さっさと始末しておきたいよなあ。ずるいもん」
ジャック「はい。ですが、それは向こうも同じだと思いますよ。なんとか私を倒しておきたいでしょうから……仲間を呼ばれたりすると厄介です。早く行動に移りましょう」
シゴキ「その心配はないと思うぜ。狂信系のキャラだったから、会社に余計な負担はかけまいとして、まずは自分で何とかしようとするはずだ」
ジャック「なるほど……! 今確認しましたが、ゼンラーは私達を探し回っているみたいですね。近付いてくる性欲の強い人もいません。読みが当たりましたね」
シゴキ「感知能力、便利だねえ。と言っても、あんまりチンタラしてたら帰っちゃうかもしれないからな。早くどうやって倒すか考えないと……ジャックはあいつみたいにタマ盗んだり出来ないの?」
ジャック「出来ませんね。スイマセン」
シゴキ「じゃあ、テレポートで後ろに回り込んで、バットで後頭部フルスイングってのは?」
ジャック「テレポートは少しタイムラグがありますし……ましてや相手は同じテレポーター。気付かれる可能性は高いですね」
シゴキ「じゃあ、ビルの屋上から植木鉢やダンベル落とすのは?」
ジャック「動いている標的に当てるのは難しいと思いますよ。それに確実性に欠けますね。出来れば、戦うことなく終わらせたいのですが」
シゴキ「そりゃそうだ。もう一つのタマも取られるわけにはいかんからな」
ジャック「かと言って、覆面して近付くわけにもいけませんし。気付かれないように素早く接近するか、又は遠くから攻撃する手段が必要ですね。それも、ゼンラーが気絶するほどの強烈な一撃を持った」
シゴキ「気付かれずに、遠くから、一撃でか……。おっ! あれなんかいいんじゃないか?」
ジャック「どれで……あ、あれですか!? たしかに人を殺すこともある兵器ですが……本気ですか?」
シゴキ「マジですよ」
 よっしゃ、にっくきゼンラーのタマ取ったらぁ!

       

表紙

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Neetsha