ここ数年前から地球の生物は劇的な変化をするようになった。
急激な環境変化が新しいウイルスを産み出させた、というのが最大の理由だと言われている。
生物の変化というのは、単純に言えば生物の巨大化、凶暴化である。
たった数センチから数メートルであった動物が、ウイルスによって十数メートルほどの怪物へと変異してしまうのだ。
その生物のことを国連は超個体変異体(ちょうこたいへんいたい)と名付け、各国の軍は武力で次々と倒していった。
それと同時に、人が飼うペットなどには超個体変異体になるのを防ぐためのワクチン投与が義務づけられた。
しかし対策をしても数が減ることはなく、それどころか超個体変異体は種類も数も増えていったのだった。
さらに、ウイルスはワクチンなどに対する抗体を持つようになり、超個体変異体の数は5年前を境に急増した。
度重なる超個体変異体からの攻撃に、世界中の国々はしだいに兵力を衰えさせていった。
このままでは、人間世界は潰えてしまう。
誰しもがそう思っていた3年前、この状況を打破する技術が日本で発生した。
「発生した」というのは、誰かが開発したのでは無く、自然に生まれたということである。
それは「ヒーロー」の誕生である。
どこからともなく現れたヒーローが、特殊な力で怪物を消し去り、そして去っていく――。
アメコミじみた光景が、実際に日本で起こったのである。
と言っても、ヒーローと言っても顔は丸見え、しかも服は明らかにしまむらである。
しかし、しまむらヒーローの登場が世界をびっくりさせたのは言うまでも無い。
数ヵ月後ヒーローは戦死していまい、また暗黒の時代が来るかと思われたが、死の直後2代目が登場。
2代目が大怪我を負った後は、3代目が登場した。
そして今現在、日本や周辺国の平和を守っているのは3代目のヒーロー、「カシミア」である。
しまむらヒーローとはうってかわって、ゴスロリのテンプレートと言えるようなピンクのフリフリドレスを着こなしていて、その格好から一部では「魔法少女カシミア」などと呼ばれている。
そうしてこうして、魔法少女カシミアは今日も、東アジアを中心に世界を守っていたのだった。
場所は変わって、日本の某県神崎町(かんざきちょう)。
ここに、ある兄妹が住んでいた。
兄の名前は広信(ひろのぶ)。そして妹の名前は菜瑠(なる)。
父は海外へ単身赴任、母は数年前に死去していてこの家に居るのは兄妹2人のみである。
この話は、広信が菜瑠の部屋の前で逡巡しているところから始まる。