Neetel Inside ニートノベル
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兄オタ!
04 恥ずかしいです・・・こんなとこ、人に見られたら・・・・・・

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 夏休みとは本質的には楽しいものだ。
 しかし、楽しいばかりではない。宿題という名のでかすぎる重石が乗せられるのだ。
「暑い・・・いくら普段から部活で外に出ているとはいえ・・・暑い。」
 本当にそれしか言えなかった。
 本日このクソ暑い炎天下の中えっちらおっちらとチャリを汗のついてほしくない私服で漕いでいるには訳がある。勘のいいやつはもう気づいていると思うが、さっき話した宿題がらみだ。
 夏休みには読書感想文という面倒で、無意味で、俺に嫌われてる宿題がある。俺はそれの題材の本を買うために出かけているのだ。
 家に本がないわけじゃないが、それはほとんど兄オタに所有権があるのだ。
 それを借りれば済むわけなんだが・・・
「なさけない気がする・・・」
 どうだ?いかにも馬鹿な理由だろう?自分で言うのもなんだが、中2ってのはそういうモンなんだよ。何でもかんでも自分でできると思い込む、そのくせ面倒なことは他人任せ、そして他人に恩を着せられるのが大嫌いだ。
 今、俺は自分で自分が恥ずかしい状態だ。よくわからないことを言った。流してくれ。

 そうこう自分の中で語りをしてる間に本屋いついた。
「ここが兄オタの言ってた古本屋か・・・読むからには面白い本を買いたいよな。」
 俺は本など年間3冊も読まないので本屋など当然のように知らない。だから兄オタに教えてもらった。ここでは兄オタに頼ったことはスルーだ。
 店に入るとすぐに階段が待ち受けていた。その上には
『一階:ゲームとCD、二階:漫画と本』
 という看板があった。
「古本屋か?」
 外に出て店の看板を確認した。
『古本市場』
 俺は二階に上がり、本を売っているところへ向かった。
「それにしても兄オタはなんで古本屋に?普通の本屋じゃなくて?古本屋のメリットは?」
 理由はよくわからなかったが、適当な本を選んで買うことにした。
「う~ん・・・」
 俺は5分ぐらいでちゃっちゃと選んで帰りたかったのだが、そうはいかなかった。膨大な本の多さに愕然とした。
「これがいわゆる『選択肢が多すぎて選べない』ってやつか?」
 正直、読書感想文なんて一般人はどんな本でも書けるのかもしれないが、俺はそういうわけではない。俺には文才というものがないのだ。だから書きやすい本でなければかけないのだ。
 去年までは兄オタと親に頼ってた。でも今年は恥ずかしかったので自分で選ぶことにした。
「やべぇ、選べないかも・・・」
 そんな不安を抱えながらも、とりあえず少し読んで決めることにした。
 
 バッテリー・・・俺はテニス部だ、野球部なら読んでたかもな。
 銀河英雄伝・・・タイトルが古臭すぎる、みんなに馬鹿にされるじゃないか。
 ハリー・ポッター・・・みんな書くからモロに比較されちゃって、俺が文章力ないのがバレちゃうじゃないか。
 グインサーガ・・・167巻?作者が死んだから未完?そんなの読めるわけないじゃないですか、色々カオスすぎる。
 ダレン・シャン・・・俺にはヴァンパイヤとか難しいことは無理だ、それこそ兄オタの分野だ。
 ロード・オブ・ザ・リング・・・また難しそうな文章しやがって、もっと簡単にスラスラ読めるやつはないのか?
 佐賀のがばいばあちゃん・・・これは面白くなさそうだ。どうせありきたりないい話なんだろ?
 人は見た目が9割・・・俺の概念とあってるし、面白そうだけど・・・俺こういう論文みたいなのダメなんだ、物語じゃないと・・・
 ゼロの使い魔・・・クソオタクじゃねぇか!兄オタいプレゼントしてやりたいぜ!あ、もう持ってるかもしれないな。
 俺の妹がこんなにかわいいわけがない・・・おい!これもオタクじゃねぇか!どうなってるんだこの古本屋は!
 涼宮ハルヒの憂鬱・・・だ!か!ら!オタクやめろって!

 気づけば俺の目の前は明らかにオタク向けの本がおいてあるコーナーに来ていた。
 即座に、周りで自分のことを見ている人間がいるか確認した。
 右に二人と左に一人居ることを知って顔から火が出るほど恥ずかしかった。
 俺は全力疾走で家に帰った。モチロン本を買わずに・・・

       

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