Neetel Inside 文芸新都
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パワーつけろよ
1節

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「なんなんだよてめえは、ぶっ殺す」

雨が降る中黒い傘をさして黄色い帽子を被ったまだ小さな僕に向かって知らない
大人の人が往来の中で叫んだ。
僕はとても心臓がぎゅっとしてばくばくとしてまたぎゅっとした。
目はパチパチと音を立てて小刻みに震えてる。
何がなんだかわからない。皮膚はとても熱い。

「おい、なんか喋れこら、お前が、お前が悪いんだろう」

僕にはなにも心当たりがなかった。
だから、喋るにも喋れない。往来の人が皆僕を見ている。
悪いことは僕はなにもしていない。
往来の人がまだ僕を見ている。

「喋れっつってんだよ」

黄色い帽子は吹っ飛ばされた。男が殴ったからだ。
僕の小さな体は宙に浮いた。男が髪の毛を掴んだからだ。
僕のまだ愛くるしい頬は見る間に赤くなっていった。男がひっぱたくからだ。
小さな体は路上に放り出されてびしょぬれになった。男が投げるからだ。

「この糞餓鬼がぁ」

蹴る仕草をとった男を見て僕はびくっ、となってしまった。
涙も溢れた。頬が熱かった。何がなんだかわからなかった。
たぶん僕は悪くないんだろうけど、もしかしたら悪いのかもしれない。
往来の人は僕を見ているけど、見ているだけだ。

「なんとかいえよっ!」
「何してるんだ!!!!」

後ろを向くと、お父さんがいた。
「うちの子に何をしているんだ!!!」と叫びながら知らない大人の人に
飛び掛っていった。お父さんは知らない大人の人をぼこぼこにした。
真っ赤に暴力、雨の日の奇怪な出来事、一生消えない思い出、気づくと思い出す。
往来の人の顔は覚えてないけれど、往来の人たちのことも僕は一生忘れないだろうと思う。
世界はこんなもんなのだと6歳の時に思ってしまった。悲しい。

事が終わって、お父さんと一緒に帰る中、涙はまだ溢れたし頬はまだまだ熱かったけど、お父さんが
いてくれて少しは救われる気持ちだった。今はもういないけれど。
僕が覚えている限りでは一番最初の仕方の無いことがこれだった。
まだまだ夏の暑い日、久々に思い出していた。

       

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