Neetel Inside ニートノベル
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魔王ちゃん
魔王ちゃんの一日

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ああ、オレを一括りにしないでくれっ!
ああ、ダレも理解しようとはしてくれない、オマエたちには黒は黒としか見えていないのだろうか?
ああ、なんと愚かなことであろうか、オマエたちは空をみていない、オマエたちが見ているのは所詮は天井なのだ。
ああ、限りがあることを知らないお前たちの限りはどこにある?
限りとはなんだ?
では、オマエがオマエであると、オレがオレであると、黒が黒であると……



――俺たちはなんだ?――



ああ、今日も空が青いな。
そして今日も、否、今日とて授業は面白いものとは思えなかった。
教師の単調なラリホーに態勢のない私を私は恨んだ。
黒が九割九分、八分、七分、六分……、あ、八割をきった。
白が、面倒な私に書き取りという行動を強制してくる鎖が比例する。
昨日はジャンプの発売日、明日の明日は木曜日、休みまで遠い。

眠い……

当たり障りのない毎日と黒の中の白。
ああ、もっとカラフルに、そうカラフルに。
マーカーが引かれていく私のノート、さながら私はお菓子職人で、デコレーションされるケーキ(ノート)。
ちなみにチョコレートが好き。
やっぱり遅くまで起きてるものじゃないな……
ああ、何かが私を呼んでいる。
私が呼ばれている。
でもね、違うの、うんうん、貴方はあってるけれども、貴方が合っていると答えを教えてくれる人は誰もいないの。
答えって何?



――そして、何って何?――

     

粘土とか生理的に受け付けなかった。
1チャンスおじさんの車の中の匂いと張り合える、いや3チャンスくらいか?

「ぐはぁー……」
ひんやりと机の心地、つめたくって、っほ。
「どこのシーエムだよ」
「某ボトルコーヒー」
お昼休みだった。
牛乳の飲む音、今日のジャムパンは微妙だったかな、いちごにしては微妙だ、だがそれが以下略。
「やっぱり食事中に粘土なんて思いだすもんじゃないね?」
「なんの話?」
「ん? なんの話~」
ああ、いつもにも増してひんやりだ、やっぱり去年から入った冷房の力は偉大だ。
欲を言えばあと冷蔵庫がほしい、これで、いま私がチューチューしてる生ぬるい白濁液の微妙さ加減も万事解決というわけだ。
ん、なんだあれ?
「ん、なんだあれ?」
「昨日かっちゃった」
そいつは携帯からぶら下がりながら私を見下していた。
何様だと聞いたら俺様だと答えてきそうななまけもののキーホルダー。
カバンを漁ってみる、がさごそ中はゴミばかり。
「なにやるの?」
「テリー」
私はクリアーなゲームボーイカラーを取り出す。
軽快に流れ出す某ゲームのオープニング。
「このご時世にカラーって」
「古き文化は大切にするものだよ?」
私は必死にドラゴンキッズの卵を割っていた。



ロールプレイングゲームの世界のキャラクターは私の操作一つで生死が決まる。
けれども彼ら、あるいは彼女らはこの小さな箱庭の中で生きているのだ。
彼ら、あるいは彼女らにとってこの箱庭が全てなのだ。
たとえば私がいまこうしてゲームをしているという、現在進行形も、誰かがボタン一つでやらされているかもしれないわけで。
そんな非現実的かつ、ファンタジック、1チャンス黄色い救急車なことは間違えても口走らない、いや3チャンスくらいか?


――私が雑踏で生きていくために――

     

階段を登る私と、私に上られていく階段。
「っと……」
私は大空の下に出た、つもりだ。
ポケットの中からちゅっぱチャップスを取り出す。
これ、コンビニの沢山はいった箱からいつも適当に一本掴んでかってくるのだ。
今日は……、いちごヨーグルト。
お昼とかぶった、運が悪い。
うんん、私は運がよかったためしなどないのだから。
絶対煙草は吸おうとおもうんだ、だって格好いいし。
でもね、犯罪は嫌、だからちゅっぱチャップス。
二番目の数字を短い針がさして、八番目の数字を長い針がさしている。
でも今日はフル授業、いわゆるさぼりに該当するのだ、私は。
口の中に再びあふれるいちごの味、ああ、やっぱり微妙だ、いちごの割りには。
そこに魔王はやってきた。
「今晩は、魔王」
「おはよう、魔王」
私たちは挨拶を交わす。
魔王は一人、なんていうのは誰が決めたんだろう?
ゲームのラスボスを倒したらゲームは終わり? まさか。
ゲームの本当の終わりはプレイヤーが飽きたとき、そうでしょう?
だって、人間に飽きられてしまったゲームは、もうゲームとしての役割は果たせないのだから。
だから、本当の意味での終わりであって、クリアとか、攻略とか、そういうの関係なくて。
それは人間関係でも同じなのだ。

――友人関係――
――恋愛感情――

ああ、くだらない、くだらない、すくなくとも私にとっては。
そう、そんなものはもう、いいや。
「ご機嫌斜めだな、魔王」
「魔王はいつだってご機嫌斜めよ、魔王」
本当に喰えない。
魔王は悪いやつだと決めるのは、魔王ではなくて。
たとえるなら。



――なんで泣いちゃけないの?――

     

子供ってすごいなぁー、と私は思うときがあって。
たとえば純粋に花が楽しそうと、生き物とみることができて。
魔法があって、冒険して、サンタさんがいて。

誰だろう、正義の味方なんかつくったのは。
じゃあ正義ってなあに?
悪を虐めるいじめっこ?
民主主義?
風が私の髪をなびかせ、耳にかかったそれをかきあげる。
ちゅるん……
舐め終わった棒を私と魔王はじっと見つめて、それからその棒は鉄格子をすり抜けて余命を静かに終えた。
ポイ捨てでもわずかな罪悪感を感じてしまう自分にすこしイラっとする。
まだ6月なのに今日は夏日だった。
日陰に移動する私と魔王。
私はペタリとそこに座り込むとお昼と同じようにテリーを取り出した。
私たちはなんで窮屈な檻の中に閉じ込められているのだろうか?
「ねえ、魔王」
「なんでだろうね……?」
ほら、聞えてきた。
私はね……

――時間に縛られていて――
――音に縛られていて――
――文字に縛られていて――

全然、自由なんかじゃなくて……
決めたんだよね、サボるのは体育だけ。
んー、と背伸びをする、お日様パワー充電。
「じゃあね、魔王」
「バイバイ」




――鍵はひらくためじゃなくて、閉めるために――

       

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