Neetel Inside 文芸新都
表紙

ひねくれ新太の惰性なる日々
第三話 恐るべき襲撃者

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 朝のホームルーム。いつもと何も変わらない日常。新太はうつらうつらしながら、担任山中の話を聞いていた。
 が、しかし突然そんな決まりきった流れ作業を分断する人間が現れた。変質者だ。
 変質者は目出し帽を被り、包丁を持っていた。そして叫び声をあげて教室に入ってきた。
「おまえら、皆殺しにしてやる」
 包丁で生徒を追い回す変質者。一人、また一人と生徒が刺されていく。その度に鮮血が流れる。崩れ去った日常。
 やがて逃げ回っていた新太にも包丁は迫ってきた。とても避けきれない……。
 だが、これらのことは全て新太の妄想に過ぎなかった。
 
 山中はぼんやりとしている新太に、気づいて注意した。
「おい、真島。先生の話をちゃんと聞いていたか」
 新太は驚いて答えた。
「はっ。はい」
「じゃあ、なんて先生が言ってたか、言えるか」
 新太は何も聞いていなかったので黙り込んでしまった。
「嘘はいけないぞ。真島。春休み気分じゃいけない。もう三年生だ。今年は受験があるんだからな」
 新太はまだうわの空だったが、一応うなずいた。山中はその様子を見ると、もうそれ以上叱りはしなかった。そういう性格の持ち主なのである。が、山中は溜息をつき、悲しそうな顔をした。
 一方の新太は少しばかりの不満を感じていた。自分の考えを中断されてしまった事への不満だ。そして彼はまた、それを始めた。

 まったく、つまらない。満ち足りない。新太は以前からそんな感情を抱いていたが、最近はそんな傾向がさらに強くなっていた。何故かは分からないが。
 
 学期の始まりという事もあって一日はバタバタと過ぎた。
 新太は学校が終わってもすぐには帰らなかった。しばらく、木島などと無駄話をしていた。だが、それにも飽きて家へと帰った。
 だいたいやりたくてしたわけでもなかった。ただ、暇だからしていただけの事だった。

 家に帰るとすぐにパソコンの電源を付けた。これが、彼の習慣となっているのだ。随分前から。
 そしていつものようにネットサーフィンを始めた。彼はいろいろなサイトを訪ねた。本当にいろいろなサイトを。
 いつのまにか普段は行かない危ないサイトへ彼は行ってしまっていた。合法スレスレのようなサイトだ。犯罪の方法を研究するサイトだ。
 そのサイトにバナー広告があった。黒い文字でただこう書かれてあった。

 アルバイト募集。高給。経験不要。年齢を問いません。簡単な仕事です。

 新太はいかにも胡散臭いと思った。が、その内容に惹かれた。とりあえず見るぐらいの価値はあるかなと思った。そしてクリックした。
 クリックした後のページにはメールアドレスが書いてあった。ここにメールしろということなのだろうか。
 新太は捨てアドを取った。メールアドレスはもう持っているが、それは使いたくなかった。得体の知れない連中にメールアドレスさえも明かしたくなかったのだ。それに彼は働く気など毛頭なかった。
 働きたいというメールをすると恐ろしく速く返答が来た。メールの内容はこうだ。

 あなたの氏名、年齢、経歴を書いて送ってください。我々が調査して採用するかどうかを決めます。

 そのメールを見て新太はこれは詐欺ではないかと思った。個人情報を得るためにこんな事をするのではないかと思ったのだ。
 だから彼はこうメールをした。
 
 実際に会って面接したりしないのですか。

 またも不自然なほど速く返答が来た。その後もメールでやり取りを重ねた。そして結局面接をすることとなった。場所は東京のとある公園。家から電車で一時間ほどだろうか。日時は今週の日曜の昼三時だ。最初、むこうは夜がいいと言ったが新太は昼がいいと言った。なぜなら親がいるから夜には外出できないのだ。そしたらむこうはあっさりと情報したのだ。その他にも新太のいい分はかなり通った。
 彼はこれをありがたく思う一方、それほどなり手が少ない仕事なのかと思った。これほどの好条件でなり手が少ないとは……。やはり、危険な仕事なのだろうと彼は思った。
 さきほどまで毛頭働く気がなかった新太がなぜ面接までする事にしたか。その理由は金銭的な理由ではない。なにやら彼は感じたのだ。是非ともこの仕事をやらなければならない。この異様な仕事に彼の心は引き寄せられてしまったのだ。その強さは彼自身が驚愕するほどだった。自分でも何故こんなにもやりたいのだろう。ついさっきまでは興味本位だったのに。と思っているのだ。
 彼はうきうきした気分でいっぱいだった。こんな気分になったのは一体いつ以来だろうか。と思った。それは遠い昔の頃としか思い出せなかった。それほど久しぶりの感覚を彼は感じたのだ。体にやる気が満ち満ちていた。
 
 

 

       

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