Neetel Inside ニートノベル
表紙

DAYS
2話「世界の姿」

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俺は、突然のことに驚いた。
まさに、「仰天」といってもいい。
なぜだ。
なぜだ。
なぜ!
小芝は確かにこう言った。
「え~、今日から新しい友達が加わる。みんな、仲良くな」
そう、転校生だ。
いや、転入生というべきか。
それはともかくとして、その転入生ってのがまた、
「如月勇希です。よろしく」
なぜに勇希なんだ?
いや待て待て。
こいつは天使とか言ってたが、学校生活には問題ないのか?
それ以前に、あの羽は?
「え~、尾住の横が空いてるな。そこがお前の席だ」
<初対面のように振舞ってください>
急に声が聞こえた。
<驚かないで。脳に直接語りかけてるだけだから>
あぁ、ここでフラグ立つな。
「えっと・・・勇希ちゃん?よろしく」
「よろしくね、尾住くん」
なぜ俺の隣の席なのかはわからないな。
それは作者に尋ねてくれ。
「っていうか・・・・・・」
俺は、ひとつ気になっていた。
俺の前の席が空いている。
そこの席の主は、あいつだ。
月宮華菜。
なぜ今日に限って休んでいるのか。
あいつなら、インフルエンザにかかっても来ると思ったが・・・そりゃ無理か。
絶対学校には着てると思ったのにな。
「こいつ、仮病使ってるな。なぁ?」
その、隣の席。つまり、俺の斜め前の席の主が俺に話しかけてくる。
「いや、さすがにそれはないだろうよ」
俺は、そう思いたかった。
「なにか用事があるとか、そんなんじゃないか?」
「いやしかし恵一よ。こいつに用事が出来るとでも?」
出来ない。
「うっわ即答かよ。かわいそうな華菜」
「とりあえず、今日の放課後に行ってみるかな。勇希ちゃんも来るか?」
突然振られたからか知らないが、戸惑った口調で、
「あ、えあ、はい」
とだけ答えた。

「おう、俺だ」
インターフォンに向かって話しかける。
「俺・・・苗字は?」
「だから、俺だ」
おかしい。
華菜なら、いつもは「私の友達の中に俺氏なんていませんが?」などと
チャラけて言うのに、今日はそれがない。
まぁ、一応ボケたつもりなんだろうが。
「あぁ、恵一か。ちょっとまってて」
どうやら、風邪ではなさそうだ。
「ずいぶんと・・・心配なんですね、恵一さん」
「そりゃぁ、ホラ。一応あいつも部員だし・・・」
「・・・まるで、付き合ってるみたいに見えますよ?」
「んなっ!?」
こいつからは出そうにもない言葉が唐突に飛び出した。
こいつも、昼からなんかおかしい。
みんな、何かあったのか?
「お待たせ・・・・・・アレ?」
なんだ。
「ねぇ、アレ見て・・・アレ何?」
と言い、遠い空を指す。
そこには、とんでもないものが浮いていた。
「・・・・・・・・・はぁ!?」
なんと言えばいいのだろうか。
え~と。
「何だありゃ?」
「ターゲットを捕捉、行動・開始します」
何かを言った後、勇希は翼を開放させた。
「ちょっと待て、ここで広げてもいいのか!?」
そのときに出る白い波動に耐えながら、俺は言う。
「大丈夫です。ここは、元いた世界じゃありません」
・・・・・・・・・?
「時の間(タイミング)です。ここは、時間と時間の隙間に作られた世界・・・」
「タイ・・・なんだって?」
「タイミング、天使の使える術の一つ、神術を使用した時に現れる空間です」
えっと・・・わけがわからないぞ。
「って待て。華菜はどうするんだ?」
そばにいた、華菜をふと見る。
唇が小刻みに震えていた。
「・・・なんか、あの感じ・・・いやだ・・・」
あぁ、俺もそうさ。
あれは、けして円滑に事を進めてくれそうにない。
あきらかな敵意を持っているとみえるが、
そこんとこはどうなんだ?
「はい、あれが、私たちの敵。異者です」
異者・・・か。
まぁ、そんな事は置いておいていいと思う。
できることなら、アイツを早く倒してくれ。
「わかりました。マスター、命令を」
命令?なんだそりゃ。
「私の肩に手を置き、『回路連結』(コードコネクト)と」
・・・とりあえず、試してみるか。
「回路連結!」

     

俺がそう叫んだ瞬間、勇希の体から光が放たれた。
アノ夜に見た光とは何か違う、
大きなパワーを持った光を。
「なっ・・・ッ!」
俺は、勇希が地面を飛び立ったときに出た衝撃波によって、
情けなく吹き飛ばされてしまった。
「ありゃあ・・・なんだ?」
相手側の、背中にはまるで悪魔の翼のようなものがついていることに俺は気づいた。
「・・・勇希も、何か変だ」
勇希の方を見ると、片側の翼だけが赤く変色していた。
「あのときは、あんなじゃなかったのに・・・」
あの夜には、両側とも純白の翼だった。
なぜ、あれほどの変化をとげているのか。
しかも、感じられるオーラがまったく違う。
あの夜の、包み込むようなオーラではなく、
まるで、何者をも弾き飛ばすような、
邪悪なオーラばかりが俺の肌を刺激していた。
「ふふっ・・・勇希、ここで何してんだい?」
異者は、頭の奥にまで響くような声でささやきかけた。
「・・・あの方を、守っておられる。それが何か・・・?」
「あれ、忘れたのかい?お前はすでに、天使じゃないじゃないか」
なんだって?
「確かに、あの夜に私は規律を破りました。しかし、あの方・・・恵一は、私を拒絶しなかった!」
確かに、そうだ。
そんなことは、もうどうでもよくなっていた。
天使だとか、使徒がどうとか、もうかまわなくなっていた。
「この世界で唯一、私を拒絶しなかった人を、
 なぜ見捨てられましょうか!?」
そのセリフを聞いたとき、
あぁ、勇希も苦労してたんだな。と、
心の中で思うことができた。
「ふん、くだらないね!」
「ね!」の部分で、莫大な量の衝撃波が放たれる。
「アッー!」
勇希が、俺の隣にまで吹き飛んできた。
街中で、どうしてこんな破壊活動ができるんだ・・・?
「恵・・・一・・・」
勇希が、細い声で囁く。
「あの・・・異者が、憎い?」
あぁ、あたりまえさ。
そう言ったとき、勇希は俺の肩に手を当てた。
「武装連結(アーマーコネクト)」
そう、勇希が言った瞬間に、
俺の腕に異常が起こった。
「うっ・・・わああ!?」
勇希が消えて、かわりに俺の腕には大剣のようなものがくっついていた。
「うわ、離れない!?」
ブンブンと振り回すが、それは自らが俺を握っているかのように
固くくっついたままだ。
そのうち、横の電柱にぶつかった。
<ちょっと、痛いよ恵一>
「うわあああ!?」
頭に、直接語りかけてくる。
<ほら、峰打ちなんてするから、折れちゃったじゃない>
この大剣のどこが折れているんだろうとか思いながら見ると、
後ろから轟音が響いた。
「なっ!?」
後ろを振り向くと、電柱が倒れている。
さっきぶつけた部分は粉々に吹き飛んでいる。
「うっわ~・・・」
「なにやってんだい、こないなら、殺るよ!」
上から、猛スピードで急降下してくる。
それを、切り払おうと剣を振った、そのときだった。
「ぶげっ!?」
勇希の出したような衝撃波が、剣気となって放たれた。
「うぇwwwっうぇwwwなんじゃこりゃ!?」
「こんのやろう、何しやがる!」
もう一度切り払うと、今度は衝撃波が出ない。
「なんで出ないんだよぶっ!?」
異者の飛び蹴りが、見事なまでに顔面にHITしていた。
<あの衝撃波は、憎しみを糧とするの。
 もっと悔しさ、憎しみが深まれば、あるいは・・・>
戦闘、第二ラウンド開始ってか?

     

相手はますます強くなりそうだ。
さっきから、パワーを溜めつづけている。
<マスター、今がチャンスですよ>
ところで、この状況どうすりゃいいんだ?
<手元のあたりを見てください>
ほい、なんだ?
・・・・・・なんだこりゃ?
<そこにツマミがありますよね?>
あぁ、あるぜ。
<そのツマミをまわしてください>
ほい、回したぜ。って、
「わあああああああ!!?」
体中に、熱いものが流れ込んでくるようだ。
心臓が痛い。
「わあああああ・・・あぁ!?」
背中をさすると、何かがある。
「なんだこりゃ!?」
後ろを振り向いてみると、
<翼・・・ですね>
いやいやいやいや、待て待て待て待て。
こんなときになんだが、これは何なんだよ。
<この翼は、あなたの心。あなたの意思で動かせます>
・・・それで?
<翼型の次元ということは・・・>
ほい、動かしてみようか。
「うわぁっ!?」
<飛べるようになりますね>
言うのが遅い!
「でも、これであっちまで攻められるってことだな」
羽ばたき、急接近する。
「うらぁ!」
上から袈裟斬りをかぶせる。
「あぁ!?」
その切っ先は、相手に当たることはなかった。
そこには、黒い塊があるだけで、奴の姿はない。
「何だ・・・?」
<マスター、後ろですっ!>
「何だぶっ!?」
またもや顔面ヒット。
「イッテェェェェエエェェェェエ!って言いたいところだが、
 ぜんぜん痛くないな。何なんだ?」
前を見ると、白いオーラがある。
「何だこれ?」
また、奴が攻撃を仕掛ける。
「おおおぉぉぉぉおおぉぉおおおお!」
相手側の攻撃が、頬をかすめる。
「っと、あぶねぇ」
<マスター、翼で防いでみてください>
何なんだ。
とりあえず、俺は翼を前にさしだした。
「おるああああああ!」
連続的に蹴りを繰り広げているのだろう。
しかし、この羽は鉄のように硬かった。
そのかわり、
「イデデデデデデッデデデデデデッデデデエエ!?」
俺にダメージが来てるんだが?
そのへんはどうなんだ、勇希。
<大丈夫、直接くらったら死んでるような攻撃です>
な、何だってそんなものを防いでいるんだ、この羽は。
「とりあえず、この調子で遠くまで逃げるぞ!」
俺は、広場を見つけて戦うことにした。
「よし、あそこだ!」
どうやら、こっちとあっちのスピードは同じくらいのようだ。
俺が全速力で逃げれば、追いつかれることはない。
そして、着陸した時に小さなクレーターが地面にできた。
「はぁっ!」
振り返りざまに、奴を切る。
ガキン、と音がして、とめられた。
「この楼牙様の羽を、切れると思うなよ!」
こいつ、楼牙って名前だったのか。
「はぁっ!」
楼牙が、手に持ったガンから何かを打ち出す。衝撃波か?
「おらっ!」
単純に弾くだけだが、それでも結構なパワーがいる。
「何なんだ、これ!?」
律儀にも、楼牙は説明してくれている。
「これは、私の次元だ。ガンタイプ、空気砲六式!これは、
 自分の好きなものを好きな形に変えて発射できる。たとえば・・・」
相手のガンの後ろから、コードが地面に延びる。
「ん?・・・うわっ!?」
大量の土が、岩となって打ち出される。
「どうだ!あはははははははばがっ!?」
楼牙が高笑いをしてくれていたおかげで、蹴りがHITした。
「な、何をするっ!?」
「何って、笑ってたから蹴った」
<・・・プッ>
「何を笑っている、勇希!」
俺は、追撃を試みる。
「笑われるなんて久しぶりだコノヤロー!」
どうでもいいことを叫んで、剣を弾く。
<くらえっ!>
剣が勝手に動き、先から衝撃波が出る。
「な、何っ!?」
レーザー状の衝撃波が、楼牙の腕にHITする。
「こ、この!」
空へと浮かぶが勇希は狙いをはずさない。
「お前、自分で動けるんじゃん」
<いえ、これはあなたの意思です>
「俺の・・・意思?」
それはいいとして、なんか楼牙がヤバいことをしてるぞ。
「こ・・・こんのクソがああああ!」
暗黒のシールドを展開し、衝撃波を弾く。
「なっ!?あの方向は・・・危ない!」
その方向は、俺の家のある方向だった。
俺は、駆け出した。
「間に合えっ!」
あと、1m・・・50cm・・・30cm・・・10cm・・・。
間に合わない。
少しだけ、向こうに通り過ぎてしまった。
「あたるなっ!」
そんなことは知らず、衝撃波は俺の家へと向かっていく。
屋根を、かすった。
「危なっ!でも、よかった・・・って、ぶあっ!?」
そこから、侵食が始まっていた。
「とめないと!」
全速力で、そこの腐った部分を切り落とす。
<消えて!>
そう、勇希が言った瞬間、その切り落とした部分が消え去った。
「・・・ふぅっ」
戦闘のことを思い出し、後ろを振り返ると、楼牙の姿はなかった。
「楼牙・・・また会いそうだな」
<あの、マスター。何か忘れていませんか?>
何を忘れてたっけか?
「あ、華菜!」
俺は、羽をしまうのも忘れて走った。

     

「結局、あの楼牙とかいうのは何だったんだよ」
俺は、勇希にそう尋ねた。
しかし、答えは返ってこない。
「何だったんだよ、あいつらは」
もう一度問いかけるが、勇希は黙りこくっている。
「どうしたんだよ、急に・・・」
思えば、あの戦闘が終わってから勇希の様子が変だ。
俺の両親は無事で、勇希の催眠術(?)で何も覚えていないが、
勇希は、ずっと黙りこくってうつむいている。
「・・・あなたは・・・」
ようやく、話してくれた。
「あなたは、怖くない?」
何が。
「私たちの存在が・・・恐ろしくない?」
何でだ。なぜ、そんなことを気にする必要がある。
「あなたは、私が怖くないの!?」
びっくりするじゃないか、もう少し静かに話してくれ。
「そんなわけないよね、私たちはあなたを傷つけて、
 あなたを日常から引き離そうとしてるんだもんね!」
勇希は、目から涙を流しながら話している。
「そんな私たちを、あなたが恐れないはずない!
 憎まないはずがない!」
・・・・・・。
「なんで、あなたは平気でいられるの!?」
「やっと、丁寧語をやめてくれたな」
「え・・・?」
やっぱり、気づいてなかったのか。
「私が、どんな話し方をしようがあなたには関係ないでしょ!?」
また怒り出した。
「なんで、あなたは私を拒絶しようとしないの!?」
お前は、拒絶してほしいのか?
「っ・・・!」
お前は、俺から離れたいのか?
「そうよ、だってあなたに傷ついてほしくないから!」
だったら、俺の傍にいてくれよ。
「なんで!?」
だって、あいつらは俺を狙ってきたんだぞ。
なら、お前がいなくなった俺は格好の的じゃないか。
「っ・・・」
また黙ったか。
「そうさ、俺に傷ついてほしくなかったら、お前が傍にいること。
 それが大切なんだ。
 お前は、俺を守るためにここに来た。そうだろ?」
・・・・・・・・。
完全に、黙りこくったか。
「それなら、俺を放って出て行くなんて、おかしくないか?」
・・・・・・・・・・・。
「俺は、お前を拒絶したりしない」
・・・・・・・・・・・・・・・・。
「俺はお前が必要だ。だからお前も傍にいてくれ」
「・・・っ!」
急に、勇希が俺に飛びついてきた。
「わぁっ!?」
何なんだ、急に。
「あなたは、初めて私を拒絶しなかった!あなたは、初めて私を求めてくれた!」
それが、どうかしたのか?
「私は、それが嬉しい!」
そうか、とりあえず離れてくれ。
「あっ・・・」
瞬間的に飛びのいた勇希は、その場に座り込んだ。
「私は、これまで誰とも打ち解ける機会なんてなかった。
 誰もが私を拒絶して、離れていったから。でも、あなたは違うの。
 逆に、私を受け止めてくれた」
俺は、そんなに大したことはしてないが。
「してるよ」
いや、そんなに言われても・・・。
だって、お前が離れていったら、誰が俺を守るんだよ。
「・・・そうだね。でもこれからは私が守るよ!」
そうか、それはよかった。で、相談なんだが。
「何?」
俺に、稽古をつけてくれないか?
「・・・なんで?」
だって、今日みたいに俺が役に立たない戦いなんて嫌だしさ。
俺も、もっと強くなりたいんだ。
「いいよ!」
そうか。
「んじゃ、明日の午前4:00にね!」
いや、待て待て待て待て待て。
それはいささか、早過ぎないか?
「ん~・・・それじゃ、8:00で」
OKだ。
「恵一~、ご飯出来たから早く下りてきて~。
 あと、一緒に帰ってきた子の分もあるから。
 こないと、晩御飯抜きだよ~」
やっべ、早くいかないと。
「やばい、です」
とりあえず、お前も来い。
「うん!」
腹を減らした俺達は、全速力で下の階へと向かっていった。

       

表紙

坂口春南 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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Neetsha