【プロローグ】
ジャイアンの歌のように激しい雨が夏の夜に降り注ぐ。
それはまるで人々の出入りを許さないかのように家々のバリアを形成している。
ついに空が堪え切れず、この日初めての雷鳴を轟かせたとき、
あるマンションの一室に男が帰ってきた。
男は帰るなりすぐにパソコンを起動すると、
新着メッセージが届いていることに気付き、大きく舌打ちをする。
Tシャツの袖から覗く男の腕がパソコンの鈍い光によって照らされる。
―そこには幾重にも重なる傷跡があった。