社長室でPLAYBOYを読んでいると、雑用部部長の大槻が入って来た。
「おう、パシり。どうした」
「面会のお客様です」
「誰?」
「虹色教教祖、レインボウ田中と名乗っていますが・・・」
私は読んでいたPLAYBOYを置き、社長室に通すように言った。
下半身をガムテープでグルグル巻きにした男が這いつくばりながら入って来た。
「はぁ、はぁ・・・疲れた」
「何の御用ですか。ガムテープなら間に合ってますよ」
「違います。これは下等生物の気持ちを知るためにしているんです」
「妙な事をしますな。そんなこと知ってどうするんです」
「地面を這いつくばって生きるムカデ、ゴキブリなどを舐めてませんか」
「舐めてます。いえ、食べてます」
「美味しいですか」
「美味しいです」
「ええい、美味しいとか美味しくないとかそんなことはどうでもいいんです。
そんなグルメの話は美味しんぼで十分です。話がそれましたね。
そういう下等生物と同じ気持ちを味わう事で、
全ての生き物、命を大切にしようという気持ちが生まれるのです」
「ということは貴方はゴキブリと同じということですか」
「ええ、全ての命は平等ですから」
私は殺虫剤を田中の顔にかけた。
「ゴフッ!」
もう一回かけた。
「ゴフゴフッ!な、なにをするんですかいきなり・・・」
「なぜゴキブリと同じなのに死なないんですか」
「私は人間だからです」
「さっきはゴキブリと同じと言ったじゃないですか」
「それは命の価値が、という事です。肉体的には違います」
「そうですか、これは失礼しました。それで、何の御用ですか」
「虹色教を布教するためのお金を寄付して頂きたいのです」
「嫌です」
「拒否したら地獄に行きますよ」
「地獄には何があるんですか」
「地獄にはムカデ、ゴキブリ等をいじめた人間がいます」
「天国には何があるんですか」
「善良な少数の人間と、ムカデとゴキブリ五億匹ほどいます」
「地獄に行きたいので帰ってください」
「糞が!死ね!」
彼は這いつくばりながら帰っていった。