Neetel Inside ニートノベル
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シザーマン綱渡りから落下す
3話「何処へ行っても鬱鬱鬱鬱鬱」

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 1

 鍵がかけられたトイレから差し込む光。時が経つにつれ冷たさを増す便器。
その便器に座る俺。左手に握りしめた携帯は、あまりにアイモードに接続し過ぎたので
電池残量はわずかしかない。そろそろ出なければ、そんな思いをこのトイレのドア、
決して厚いとは言えず、加えて白いとは言い難いこのドアがそんな思いを加速させる。
だがしかし行動に移す気は起きない。ここの居心地があまりにも良すぎるからだ。
しかしそれでも時間は気にしてしまう。腕時計の針はちょうど正午を指していた。
もうあと少しすれば昼休みだった。いつもは昼休みになると昼食がとれるので、とても
元気になる俺だったが、今日ばっかりはそうなりそうになかった。
鬱々としているのだ、今日は。だからご飯なんてとてもじゃないけど食べれそうにないし
食べたくもない。食道が食物が来るのを拒否している気がする。
 いい加減でなくてはならなかった。なぜならこのドアを叩く音が聞こえるからだ。
もうすぐ昼休みだったが、どうしても我慢できなかったのだろう。彼に敬意みたいな
ものを表し、俺はようやく便座を立ちドアを開けた。
 彼の顔は焦燥感に満ちていた。

 2

 鞄を背負って何処行こう、何処へ行っても鬱鬱鬱鬱鬱。
 午後の授業をさぼって学校から出てきた俺はちょっぴり後悔していた。
家に帰るのは今日は親が居るから駄目だし、かといって友達は皆授業中だ。
やることがない。しかしぼーっとしているわけにもいかなかった。物思いにふけると
小学校の時のあんなことや、今日あったあんなことを思い出し、余計に鬱鬱とする
可能性がある。それだけは避けたい。でも、どうすればいいのだろうかわからない。
どこに行けばいいのかわからない。もとはと言えばさぼった自分が悪い。だがしかし、
あの教室に今日戻ることはできないだろう。きっと発狂してしまう。
だから俺は行くあてもないのに自転車を全力で走らせた。このいかんともしがたい思いは
自転車で全力疾走すれば消える! そう信じ俺は漕いだ。だがしかしそんなことが
根本的解決に至っているはずもなく、走れば走るほど教室のクラスメイトの笑い声を
思い出す。あとあの日みた教室の男女のことも思い出す。増していく焦燥感。
こういうことをやるのは中二病じみていたり、かなりいたい奴だということの証明だと
いうことは自分でもわかっていた。でもやるべきことが本当にそれしかなかった。
だからやらざるをえなかった。でないと、また学校のことを思い出してしまう。
 気が付けば公園のブランコを俺はじっと見ていた。特に思い出があるわけでもない、
自分の家の近くの公園のブランコだ。多分乗ったことは二、三しかないだろう。
しかし今も特別乗りたいとも思わない。けれどブランコの青色はとてもきれいだった。
じっと、見つめているとなんだか心が穏やかになるような気がした。
 俺は自転車を公園の前に止めた。ブランコに乗った。狂人アピールをしているのかと
自問してしまったが、今の俺には自分が狂人と言える自信があった。いや、少しだけど。
 ブランコに乗ってとる昼食はとても有意義だった。ブランコの上から見える空は
灰色だった。俺は笑った。青春映画とかなら、普通ここは青空なのに、と。
灰色の空は俺にぴったりだと思った。だって、これから先も幾十年経っても報われなさ
そうに見えるからね。俺の人生は。

       

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