Neetel Inside 文芸新都
表紙

黄昏
第五話 『彼女の想い』

見開き   最大化      

第五話 彼女の想い




葉子は未だに忘れられていなかった。あの日の出来事を。

『彼は今どこで何をしている人なんだろう?』

毎日その事で頭がいっぱいで、あの事件後に何度か警察に話を聞かれたが、ほとんどぼけっとしてしまい、
警察側の人に何度も「なんでしたっけ?」と聞き返すハメになった。

彼に会いたい。


暑い日だ。いつからこのデパートは地獄になったのだろう。それでもやってくる客の気が知れなかった。

このデパートという場所は彼ら、客にとってどのような存在であるのだろう。

欲しい者を手に入れる場所?食事をする場所?出逢いを求める場所?
それは葉子にはとても理解し難かったが、少なくとも彼女とは違う事は確かだった。

「次は2階紳士服売り場になります。こちらでは紳士服の他にも・・・」

マニュアルに書いてある事をただひたすら読み上げる事が彼女の仕事。
ノドが乾いてもなかなか水を飲む隙は出来ない。次から次へと客が攻めて来る。

エレベーターが機械音とともに下降を始める。エレベーターは無人であった。

その時、葉子は喉に激しい痛みを覚え、空を仰いだ。エレベーターが到着予定の階がオレンジ色で表示されている。
『1階だ』そう思った時ドアが開くと同時に何人かの叫び声が聞こえた。

ドアが開き、一人の男が走り込んできた。
男は前方、すなわちエレベーターの外から向かって来る、何かに怯えていた。

男の目はハッと見開かれ、口がプルプルと震えていて、唇が紫色を帯びていた。
葉子は一瞬、こんな光景をどこかで見た事があるなと思った。

そうだ、映画館でたった一度ホラー映画を見た時に、こんな描写があった。
その映画という架空世界での描写が今実際に彼女の目の前で起こっている。
しかし不思議と彼女は恐怖や不安といった感情を全く抱かなかった。

むしろ、何かの確信を得ていた。


「彼だわ」


小さくつぶやいた時、エレベーターにさらに一人の男が乗り込んできた。寺田だった。
葉子は思わず叫んだ。


「うほ」


寺田のポコチンはしぼんでいた。
寺田はドアの方を向いてエレベーターに乗り込み、ドアが閉まるのを待った。

「間もなくドアが閉まります」

ドアがしまる音がして、ドアが閉まる直前、寺田の手は神の手と化した。
すごいスピードでチンコをしごいた。一瞬で巨大化し、エレベーターのドアに挟まった。
寺田はすかさず、このデパートの最上階である5階の指定ボタンを押した。
エレベーターは彼のチンコを挟んだまま上昇を開始した。

「あっ」

葉子が小さく叫んだ。

ガッチョン!!

寺田のチンコは、1階の天井と、上昇するエレベーターの間に挟まった。

ガガガガガ・・・・

轟音とともに、寺田の叫び声が聞こえた。

「ぬぉおおおおおお!!!!」

ギギギギギ・・・

エレベーターが降下を始めた。
寺田のチンコはエレベーターの上昇機構に勝利したのだ。

そして寺田はかすかに、しかし確かに感じていた。
寺田と葉子が同時に叫んだ。


「うほ」


2人の思考がリンクし、寺田と葉子は射精した。
エレベーターの中で恐怖のあまり気絶していた男も射精した。


       

表紙

珪素 先生に励ましのお便りを送ろう!!

〒みんなの感想を読む

Tweet

Neetsha