ある日の日
初めの日
俺の名前は、長月 史樹、どこでもいるようなごく普通の中学3年生。
夏休みを利用して田舎の祖母の家に、来ている。
祖母の家からは、海が見える。
「史樹、せっかく海が目の前にあるんだから泳いで来なさいよ。」
「昨日行ったのに?」こっちに、来てから2日目。
「私、行きたい!!!」
「お前なぁ~」俺には、一つ下の妹がいる・・・名前は、美夏。
俺と美夏は、実の兄妹ではない。でも、美夏は俺のことを実の兄のように接しくれる。
俺は、美夏に強引に連れられて海に来てしまった・・・
「俺は、座ってるからお前は自由に泳いで来い」
二日連続はさすがに、泳ぐ気になれなかった俺は、地面に座った。
史樹の言葉に、美夏は海へと走って行った。
夏。そして、海=人がいっぱいいるのが普通だがここは、全然人がいなかった。
「暇だから少し寝ようかなぁ~」
そう言って、俺は大きく手を広げて地面に寝転んだ・・・
「やっと見つけた・・・」
「ねぇ~兄さん。起きてねぇ~」
俺は、美夏の声で起きた。いつの間にかあたりは、日が暮れ始めようとしていた。
「もう、私のことをスルーして一人で寝るなんて」
「悪いつい・・・」
「さっ、帰ろう!兄さん。」
史樹が立ち上がると、美夏は史樹の腕を自分の腕と絡めてきた。
「おいおいおい、何腕組むんだよ。」
「いいじゃん。」
二人は、仲良く腕を組んで家へと帰って行った・・・
その光景を、一人見ていた・・・遠くから・・・二人を・・・
「ご主人さま・・・」
「ねぇ~お母さん。兄さん何もしないで一人で寝てて、私のことほったらがしにしてたんだよ。」
家に着くなり美夏は、海でのことを話をしていた。
いつしか外は、夜になり夕食の時間。
食卓には、史樹、美夏、母、祖母の四人。父親は、史樹が中学1年の時に交通事故で他界している。
いつもは、3人だが今は祖母がいるから四人・・・いつも、より少し暖かい食卓。
「史樹や、どうだこっちは。」
「え?・・・そうだね。まぁ、静かでのんびりできるから好きだね。」
「兄さん。それ、去年も言ってたよ。」
そんな、どこでもあるような話をしているさなかその、光景を見ている人物がいた・・・
「ご主人様・・・必ずお傍に・・・ 」
夜。みんなが寝ている・・・家の中は、不気味に静かになっている。
外は、スズ虫が鳴いている。
二階で史樹が、寝息を立てて寝ている。
ギシッ ギシッ ギシッ
グッスリ寝ていた史樹は、突然起きた。
「あれ・・・なんで起きたんだ?」
史樹は、目を擦りながら呟いた。
ギシッ ギシッ ギシッ
「ん?誰か階段を上がっている?」
階段を上がってくる音に、史樹は気になったがそれが誰なのか見に行くほど気にはしなかった。
どうせ、美夏だろうと思ったからである。
しかし。階段を上りきり足音聞こえ、その足音が史樹の部屋の前で止まった・・・
「あれ?部屋の前で止まった。」
コンッ コンッ コンッ
ドアを規則正しいノック。
「美夏?ふざけてるのか?」
ドアをノックする人物に俺は、美夏だと断言した。
ドアが開く・・・
「美夏?お前今何時だと・・・思って・・・るん・・・だ・・・よ・・・」
俺は、口が開いたままだった。
何故なら部屋に入ってきたのは、美夏ではなかった。
部屋に入ってきたのは、髪は長く、服は白いワンピース、足は細く、首には小さい鈴が首輪についていて、背は普通ぐらいのとても綺麗でいて可愛い女の人が
史樹の目の前に現れた。
「こんなに、夜遅く申し訳ありません。」
その女の人は、史樹の目の前に正座をし史樹の目を見て言った。
我に戻る史樹。
「あの~え~と誰?そんで、もってその頭とお尻から出てるのは何?趣味?」
史樹は、尋ねる。何故ならその女の人の頭からネコミミとお尻から尻尾らしいモノが出てるからである。
「お忘れですか、ご主人様。」
「え?」
史樹は、首を傾げる。
「ご主人様が、学校の帰り道に電柱の横に捨て猫が入った箱のこと覚えていますか?」
「うん。そのあと、家に持って帰ってしばらく家で、飼うことになったけどいつのまにか、いなくなった猫のこと」
それは、史樹が中学1年の時の話。
「あれ?待てよなんで君が、猫を拾ったこと知ってるんだ?」
史樹が驚いて聞く。
「ご主人様。覚えていますか?この首輪の鈴?」
そう言って、その人は鈴に手を添える。
「え?鈴?」
史樹は、鈴を見る。
「この鈴の裏には。」
鈴を裏にすると名前が書いていた。
裏には、カタカナでユミと書いていた。
「ご主人様。その猫の名前は、何ですか?」
「・・・ユミだけど・・・ん?ちょつと待てよまさか・・・・」
「はい!あの時、あなたに助けてもらったユミです。」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
いつのまにか朝になっていた。
「なんだ夢かぁスゲェー変な夢・・・」
顔に手を当てる。溜息をつく。
「普通ありえねぇ~飼ってた猫が擬人化して出てくるなんて。」
夢であろうことを口にだしていると一階から母が。
「史樹~友達きてるわよ~」
「え?こんな朝に友達?てかこっちに、友達なんか。」
俺は、一階に下りることにした。
一階に下りると母が史樹のところに来た。
「ちょっと、あんな可愛い子いつ友達になったのよ」
「え?」
母が、史樹に耳打ちする。
「友達、外で待ってるから早く行きなさいよ。」
そう言って、すこし笑いながら母は去って行った。
「なんで、あんなに機嫌よさそうなんだ?」
首を傾げた。
「ところで、いったい誰なんだ?」
史樹は、玄関に手を掛け横に引く。
外は、まだすこし暗かった。けど、日差しが出てきた。
「おはようございます。ご主人様」
史樹の前に、一人の女性が立っていた。その女性は、昨日史樹の部屋に来た人だった。
「え?君は・・・ユミ?」
「はい。ご主人様」
驚く史樹。
「もしかして・・・夢・・・じゃなかった?」
「はい。夢ではないです。」
史樹の心の中では。
――ありえねぇ~こんなことあるのか~~
史樹は、まだ信じてない。そこで史樹は、聞いてみた。
「君が本当にユミか確認してもいい?」
「はい。いいですよ。」
「君がもしユミなら最初に君にミルクをあげたのは誰?」
その答えは、すぐに返答が来た。
「美夏ちゃんです」
彼女の答えは当たっていた。
「・・・しょうがない。信じよう」
史樹は、渋々彼女がユミと信じることにした。
「なんで、人の姿になれるんだ?」
「その・・・ご主人様の家から出たあの日私は、桜の木の下で人間になって恩返しをしたいと願ったら体が光って、人間になったんです。」
ユミは、自分に起きたことを史樹に説明した。
「ちなみに、何しに来たの?」
「はい、助けていただいたので恩返しをするために、ご主人様のお傍に居させてくれますか?」
「そんなこと言われてもなぁ~お母さんとか美夏になんて言えば・・・」
すると、ユミは一歩前に出て史樹の手を取って
「大丈夫です。ご家族の人には猫の姿になります。」
「でも、お母さん見られてるけど大丈夫?」
「はい。ですからお傍に居させてくれますか?」
すこし、史樹は悩んだがしかたなく
「・・・わかった」
「ありがとうございます。私のご主人様。」
ユミは、目をキラキラさせながら史樹の顔を見て言った。
「ところで、さっきお母さんと会った時に耳とか尻尾どうしたの?」
「耳と尻尾は、自由に出し入れできるんです」
「そうか、ならいいんだが」
まだ、史樹の顔を見ているユミ。すると、ユミは。
「今日は、これで失礼いたします」
そう、言ってユミはどこかへ行ってしまった・・・
「俺、明日ここ発つんだけどなぁ~」
二学期初日。
始業式が終わり、教室で友達と夏休みの話していると担任が教室に入ってきた。
「お~い。みんな座れ!」
その一言で、みんな座る。
「今日は、転校生を紹介する」
ざわめく教室。
ガラ、ガラ
扉が開き黒板の前に立つ女の子。
「うん?どこかで見たかな?」
史樹は、入ってきた女の子の顔を見て首を傾げた。
「え~今日からこのクラスの一員になった、山中春美です。よろしく。」
女の子が挨拶し、クラスから拍手が巻き起こる。が、史樹だけが春美を驚いたような顔で見ていた。
春美は、誰かを探すようにクラスを見る。
そして、一人の男子を指をさした。
「史樹み~つけた!!!」
黒板の前で大声で史樹をさし、その言葉にクラスの皆の視線が史樹に集まる。
「なんで、春が!!!」
席を立ち上がって史樹も春美に、指をさして言う。
「それは、史樹に会いに来たのに決ってるじゃん」
そう、春美が言った。
色々あった二学期初日
春美の席は、史樹の隣りになった。ホームルームが終わると春美の周りには、女子が集まる。
その場から離れると史樹のところに、男子数人集まり色々聞いてきた。
史樹と春美は、幼馴染だったが小学校6年の時に春美は、引っ越ししてしまいそれから二人は、会ったことがなかった。
今日は、午前だけだったためすぐに学校は終わった。
放課後。史樹は、下駄箱で靴を履き換えて出ようとしたところに後ろから。
「史樹~一緒に帰ろう。」
後ろを振り返ると春美がいた。
「べ、べつにいいけど」
すこし、照れくさそうに言った。
学校の門まで少し距離がある。
「懐かしいな~史樹と一緒に歩いて帰るのなんて」
「そうだな。昔は、いっつも二人で帰ってたからな」
並んで、歩く二人・・・
「ねぇねぇ聞いてもいい?」
制服をちょっと摘まんで春美が、聞いてきた。
「何?」
「彼女できた?」
「できない」
首を横に振る。
「そうなんだ」
春美は、すこし嬉しそうな顔をした。
やっと、門が見えてきた時に史樹が気になったように目を細める。
何故かと言うと、門の端に白い猫がいたからだった。
史樹は、もしかしてと思い門のところのいる猫のところに走り出した。
そして、猫の前でしゃがみ込み・・・
「もしかして・・・ユミ?」
その猫にユミって言ってみると。
「ニャー」
返事が返ってきた。首輪に付いている鈴の裏を見ると[ユミ]とかいてあった。
「なんで、猫の姿?」
そう、言っていると春美が息を切らせながらやって来た。
「どうしたの、急に走りだしたりして」
「いや~猫がいたからつい」
「え?猫?」
春美は、覗き込むように。
「あ!ホントだ、そう言えば史樹は昔から猫すきだったよね~」
猫を見た。
「よし!帰ろう!」
史樹は、せかすように春美を引っ張る。
「え?・・・うん!」
再び歩き出す二人・・・その前をすこし距離をあけてユミが歩く。
「そう言えば、春の家どこ?」
「史樹の家の前、部屋は二階だよ」
「え?!マジで!!」
驚く史樹。確かに家の前は空き家だった。その家に春美が住むなんて。
「しかも、一人ぐらしなんだよ~」
「すげぇ~」
そんなやり取りをしていると、二人は家に着いた。
「じゃぁ!」
「おう!」
春美は、家へと入って行った。
後ろを振り向くとユミが人の姿で立っていた。
「うぉ!ビックリした~」
ユミは、下を向いていた。
「今の人誰ですか?」
「え?あぁ~彼女は、山中春美。今日転校してきた昔の幼馴染なんだよ」
すると、ユミは顔を上げて史樹を見詰め・・・
「ご主人様は、春美様が好きなんですか?」
「え?何急に、まぁ好きだなぁ一緒にいて楽しいし」
「・・・異性としてですか?」
「異性としては・・・見てないな、友達として好きなだけ」
その言葉が、嬉しかったのかユミは笑った。
「そうですかそれなら良かったです」
「?・・・てか、よく俺の学校分かったな」
「はい。前からここに通ってることは、知ってましたから」
「へぇ~」
史樹は、関心するような顔をした。
「じゃぁ俺家に入るから」
「はい。」
史樹は、ユミに手を振って家に入って行った・・・
「誰もご主人様を渡さない」
次の日。今日も午前だけの授業。
放課後。
「史樹~一緒に帰ろう」
「もちろん。いいゼ」
二人で歩く。
「今日は、猫いるかな?」
「多分いるんじゃない」
「史樹、あの猫と知り合い?」
「何か懐かれてるんだよ」
史樹は、絶対今日もユミが来ていると思っていた。
しかし、違ってていた。
門の所に居たのは、人間の姿をしていたユミだった。
「お疲れ様です。ご主人様」
軽くお辞儀するユミ。誰なのか分からないで史樹の顔を見る春美。驚く史樹。
「史樹?この人知り合い?」
「え?まっまぁそう」
うまく説明ができないで史樹。
「へぇ~そうなんだ。史樹の知り合いにこんな綺麗な人がいるなんて」
春美は、まじまじとユミを見た後に。
「初めまして、山中春美です」
名前を言って手をユミに出す。
「ユミと申します」
ユミも手を出し握手をする。
三人で歩きだす。
「ユミさん何歳ですか?」
ユミは、史樹の顔を見た後に。
「15です」
「えっ!うそ!全然見えない。だとしたら同い年じゃん」
「そうですね」
そのあと、会話が途切れるが、春美がユミに質問する。
「なんで、史樹のことご主人様なんて言うの?」
「それは、ご主人様が私の命の恩人だからです」
「史樹が命の恩人ねぇ~」
史樹の顔を見る春美。
「なんだよ」
「史樹にもいいところがあるんだなぁ~って思っただけ」
にやけながら春美は、史樹に言った。
「なぁ~ユミ」
史樹がユミに聞く。
「はい。」
「ご主人様ってやめてくれない?」
「そうですか・・・なら史樹様にします。」
「それならいいけど」
そんな、会話をしていると家へと着いた。
「それじゃ二人とも明日な」
そう言って手を振って家へと行く史樹に、春美が史樹を呼び。
「ねぇ史樹」
その声に振り向く史樹。