ざ………ざ………
夏の海はぎらぎらと眩しかったが、相変わらず人気がない。
ただ、波の音と遠くからの祭囃子だけが湿った空気を震わせている。
「…」
少女は一人で座っていた。
波打ち際に近い、比較的平らな岩の上、ぼんやりと雲を眺めている。
「…」
白いワンピースの裾が陽に透けている。
片手で帽子を押さえ、あどけない目で誰かを待っているようだ。
(今日も…会えないかな…)
(やっぱり…気に、してるよね…)
ざ………ざ………
風が吹いている。
沖では海鳥が騒がしく鳴いている。
「…こんにちは。」
不意に声をかけられ、少女は振り向いた。
「あの…前世ぶり。」
情けない顔をして、男がそこに立っていた。
「うん、おかえり。」
笑顔で応える少女は、何だか、大人びてみえた。