登場人物紹介
狩野(かのう):語り手の「僕」。中学三年生男子。
中谷:第一話冒頭で死去。享年十五歳。
日高:狩野らの通う中学校に臨時で雇われた教員。二十代後半独身女性。
橋本:狩野らのいるクラスの元担任。
里崎若菜:狩野のクラスメイトの女生徒。
城島:狩野の叔父。両親のいない狩野の保護者でもある。小説家兼駄目人間。
細山田:狩野の父の友人。「コンビニ細山田」の店長。狩野はそこでアルバイトをしている。
銀次郎:野良犬。黒のラブラドール・レトリバー。
谷繁先輩:顔がいかつい。
ひっそりおまけ(シリアスな本編とは関係ありません。あと意味のわからない人にはごめんなさい)
退屈でだるくてどうしようもない国語の授業中、僕は「作者の伝えたかったことなんて、大抵の場合作者自身もうまく説明出来ないよ」などと心の中で悪態をつきながらいつの間にか眠っていた。
そして悪夢に襲われた。
声にならない悲鳴をあげながら、汗びっしょりで飛び起きた僕にクラス中の視線が刺さった。
「狩野、どうしたんや。あと眠ったらあかんぞ」
矢野先生は呆れながら僕を見ている。
「あ、すいません、いや、酷い夢を見て」
「授業中眠っとった罰や。夢の内容言うてみ。みんなで読解したる」
前の席の中谷が振り返って僕を見てくつくつと笑う。気持ち悪い。
「夢だから意味不明なところもあるんですけど、夢の中で僕はあるプロスポーツの選手になっていて、長年の苦労の末、先輩選手の怪我もあり、ようやくレギュラーの座を射止めます。苦労しながらも一年活躍して、さあ来年は怪我した先輩も戻ってくる。本当の正念場はこれからだ、と思った矢先、同じポジションを守る、海外帰りの超大物がフリーエージェントで入団するんです。しかもその選手は『全イニング出場したい』なんて言い出す始末で」
教室は静まり返っている。忍び笑いも聞こえなくて、これはこれで悪夢の続きのようだ。
「ちょっと意味がわからないですよね、やっぱ夢だし。何が怖かったんだろう」
と、中谷が再び振り返った。真顔に戻って真っ直ぐな目で僕を見る。
「それ、夢じゃないよ」
「え」
「うん、残念ながら夢ちゃうんやそれ。人ごとちゃうねんけど」と矢野先生。
「狩野君! 外野にコンバートという手もあるわ!」突然ドアを開けて入ってきた日高が叫ぶ。
「頑張ってね」里崎が同情の言葉をかけてくれた
「他球団に移籍の道もある」里崎の頭上の回想空間(もやーっとした白い吹き出し)の中で橋本先生が生徒の進路を心配してくれている。
「そんな、みんな嘘だと言ってくれよ!」
しかしみんな黙って首を振るばかりで。
(おわり)
参考
狩野(阪神)中谷(楽天)日高(オリックス)里崎(ロッテ)橋本(横浜)