Neetel Inside 文芸新都
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Unlimited Tale
第十九章 禁じられし塔

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第19章 禁じられし塔

数時間前 ガストラング城 玉座の間

「陛下、お呼びですか。」

マークは玉座の男にひざまずいた。男は金の錫杖を持ち、赤い法衣を身にまとい、金の冠を戴いている、年老いた老人であった。そう、この男こそガストラング現皇帝「シュミッド6世」である。

「前代未聞だぞ。この鉄壁の城塞に不法侵入され、さらに逃がしてしまうとは・・・。」

シュミッドはたいそう激昂していた。

「申し訳ございません、かならずや奴を捕まえて見せます。」

マークは頭を垂れた。

「マーク、ここにいましたか。」

後ろの扉が開き、エリックが入って来た。

「陛下、これより『フォービドゥンタワー』へ、王石を捜索に行って参ります。」

エリックはひざまづいて、こう言った。

「うむ、武運を祈っておるぞ。」

シュミッドは髭を触りながら言った。

「そこで、貴公の近衛兵達を私に貸していただきたい。あそこでは自慢の魔術士部隊が役に立ちませんからね。」

エリックはマークの方を向いて言った。

「別に構わないが、俺も行くぞ。ロイド達もそこに向かうに違いないからな。」

「そうだ、あれをもって来てくれ。」

皇帝は何か思い出したかのように、従者に告げた。

「畏まりました。ですが、あれはいろいろと問題が・・・。」

「構わん。マークなら使いこなせるだろう。」

従者は奥の部屋へと姿を消した。

「いったい何を下さるのですか?」

「まあ、待っておれ・・・。」

シュミッドは不敵な笑いを浮かべた。やがて、従者が一振りの剣を持って部屋から出てきた。

「新しい武器だ、取っておけ。」

「ははあ、喜んで頂戴いたします。」

マークは剣を受け取ると、それを眺め回した。金色の柄には悪魔の顔のようなレリーフが彫られ、銀の刀身には古代ラインガルトのルーン文字と思われる文様がびっしりと刻まれている。

「それは、新しく作られた魔剣『ストームブリンガー』でございます。一振りで嵐をも巻き起こすことができるのですが、あまりにも強大な魔力を持つため、自身の身を滅ぼしかねません。くれぐれも慎重に扱うようお願いします。」

従者はそう説明した。

「自らの身をも滅ぼす、文字通り諸刃の剣か。面白い、俺が使いこなしてやる。」

マークはストームブリンガーを腰に収めた。

「行くぞ、エリック!! 近衛兵たちに出撃の準備をさせる。」

エリックとマーク率いる近衛部隊は一路フォービドゥンタワーへと向かった。


フォービドゥンタワー

ロイドたち一行はフォービドゥンタワーのふもとに着いていた。

「ここがフォービドゥンタワーか。」

ロイドは上を見上げた。塔は天にも届くかのごとく聳え立っている。これほどの巨大な建造物を見るのは始めてであった。

「う~ん・・・。」

ワトソンは塔の外壁を軽く叩いたり、じっと凝視したりしている。

「とても特殊な材質でできているね。こんな金属ビュリックでも見たことないよ。」

謎は深まるばかりであった。この塔はいったい誰が何のために建てたのであろうか?

「ねえ、塔の入り口に誰かいるわよ。」

ユリアが人影に気付いた。

「何、まさか帝国兵か?」

ロイドは人影の方に目をやった。金の長髪に緑のチュニックとズボンを着ている若い男であった。
どうやら、帝国兵ではないようだ。

「どうかしましたか?」

ロイドは男に声をかけた。

「ええ、この塔の最上階に用があるのですが、私一人の力ではどうしようもなくて・・・。」

男は顎に手をあてて俯いた。

「あなた方もこの塔に用が?」

男はロイドのほうを見て言った。

「ああ、そうだ。」

「ならば、私も同行させてくれないでしょうか?これだけのパーティがあれば心強い。」

男はロイドに頼み込んだ。

「ああ、是非一緒に行こう。」

「ありがとうございます。申し遅れました、私は『ウォーリス・クレイン』といいます。ラインガルトの神話を研究している、アカデミーの学者です。」

ウォーリスは手を差し出した

「俺は『ロイド・アルナス』。ここだけの話だが・・・・、エルロードの王宮騎士だ。」

ロイドはがっちりと握手を交わした。

「大丈夫ですよ。私はエルロードが敵国だからといって、とやかく言うつもりはありません。」

ウォーリスは微笑んだ。

「そういえば、少し前に多数の帝国兵が塔の中に入って行きましたよ。気をつけてください。」

「分かった、忠告感謝する。」

新たな仲間を加えた、ロイドたち一行は塔の中へと入っていった・・・。

フォービドゥンタワー下層

下層は天井まで完全に吹き抜けになっており、壁に沿うように螺旋階段が延々と続いていた。それを支えるのは中心の大きな柱一本だけであった。周りの壁は全て白色で光を反射してかすかに輝いている。

「高すぎて天井が見えない・・・。これで下層だというのだから、いったいこの塔はどのぐらい高いんだ?」

ロイドは天井を見上げて呟いた。

「それにしても、これだけの塔をこの支柱一本だけで支えてるのかな? 物理学的にありえないよ。」

ワトソンは柱を軽く叩いて言った。

「この塔はラインガルトの神話にも登場しており、古代人が建てたものと言われています。この他にも、神話には古代人の優れた技術の話がたくさん出てきます。きっと古の時代には我々の計り知れないような高度な文明があったのでしょう。」

ウォーリスはそう説明した。

「おい、こっちに来いよ。面白いものがあるぜ。」

ラッドが叫んだ。ラッドの方に行ってみると、床に巨大な絵が書かれていた。

「珍しい、これは神界図ですね。」

ウォーリスが感嘆の声を上げた。

「しんかいず・・・・?」

ラッドはウォーリスの言葉を反芻した。

「古代人が神のいる世界を空想して描いた絵です。一説にはこの塔は神と交信するためのものと言われていますが、もしかしたら本当かもしれませんね。」

「神との交信か・・・・。古代人は随分と畏れ多いことを考えていたんだな。」

ロイドは静かに言った。

「おい、早く来いよ。置いて行っちまうぞ。」

マルスはすでに階段を上り始めていた。

「せっかちな奴だな。分かった今行く。」

一行は螺旋階段を上り始めた。

しばらく階段を登ると、上に何か丸い物体が浮遊していた。よく見ると、全身鉄製でできており、赤いレンズのようなものがついている。何かの機械のようであった。

「なんだこれ?」

マルスは球体を拳で小突いた。

「シンニュウシャヲハッケン。」

すると球体は赤いレンズをこちらに向けて、しゃべり始めた。

「うわっ、しゃべった!!」

マルスは驚いてその場に尻餅をついた。

「これは・・・、全自動式の機械なのか!! ビュリックでやっと試作段階だっていうのに、なんでこんな物があるんだ?」

ワトソンは驚嘆した。

「古代文明の遺された兵器、『ガーディアン』ですよ。」

ウォーリスは冷静に説明した。

「タダチニハイジョセヨ、ターゲットノセイシハトワナイ。」

すると、ガーディアンは警報を鳴らし始めた。

「あれはおそらくガーディアンの監視装置ですね。少々やっかいなことになりましたね・・・。」

ウォーリスは顎に手を当ててうつむいた。

「見て、壁に穴が開いたわ!!」

ユリアが指さした。見ると、壁の所々に穴が開き始めた。そこから、今度は人型の機械がぞろぞろと出てきた。

「ただでは通してくれそうにないな。あれもガーディアンなのか?」

ロイドは背中の大剣を引き抜いた。

「おそらく、ガーディアンの戦闘兵でしょう。」

ウォーリスは腰から細身の剣、「レイピア」を引き抜いた。

「ウォーリス、戦えるのか?」

「ええ、実戦の経験はありませんがね。これでもマクレスの剣術大会の優勝者ですから。自分の身ぐらいは護れますよ。」

「そうか、それは心強い。」

ロイドは剣を構えてガーディアンに向かっていった。

「シンニュウシャハハイジョスル」

ガーディアンは右手が刃物になっており、それを振りかざしてきた。

「所詮は機械だ、その程度の太刀筋など止まって見える!!」

ロイドは大剣で刃を受け流すと、返す剣を振り下ろした。鈍い金属音とともに手に痺れが伝わった。

「さすがに、鉄製だと硬いな・・・。」

ロイドは痺れた右手を振り払った。

「それなら、魔法よ。機械ならあたしの雷の精霊魔法が効くはずだわ。」

ユリアは詠唱を始めた。

「いけません、魔法は!!」

ウォーリスが止めようとしたその時

「食らいなさい、サンダーボル・・・、きゃあ!!」

魔法を放とうとした瞬間、ユリアは全身に稲妻のような衝撃を受け、その場に倒れた。

「痛たた、今の何?」

「この塔は魔法を封印する特殊な結界が張られているのです。結界を解除しないかぎり、魔力が反発してあのようなことになります。」

ウォーリスは説明した。

「なるほど、帝国兵が言っていたのはこのことだったのか。」

ロイドはあの帝国兵の言葉を思い出した。

「魔法が使えれば、私ももう少しお役に立てるのですが。」

ウォーリスはガーディアンの刃をレイピアで受け止めた。

「このような状況では、剣で戦うしかありませんね。」

驚いたことに、レイピアでガーディアンの胸の辺りを突くと、ガーディアンは全く動かなくなった。

「ガーディアンの装甲を破壊するのは困難です。奴らは胸に動力となる核(コア)を持っており、それを破壊すれば機能が停止してしまいます。」

「なるほど、弱点は胸部か。」

ロイドは大剣でガーディアンの胸部をなぎ払った。すると、いとも簡単にガーディアンの機能は停止した。

一方、ワトソンは左手に銃のような物をつけたガーディアンと戦っていた。ガーディアンは銃から赤い光のようなものを放つと、それは壁を焦がした。

「レーザー光線か。光学兵器なんてビュリックでも研究中なのに・・・。いったい古代文明にはどれほどの技術があったって言うんだ?」

ワトソンはドレッドノートを取り出すと、そこに硫酸弾を込めた。

「金属ならこいつが効くはずだ、アシッドブレット!!」

発射された弾丸は着弾と同時に、硫酸が飛び散りガーディアンの装甲を溶かした。

「ふう、なんとかガーディアンは片付いたな。」

ロイドは大剣を納めた。

「こっちも何とか倒したぜ。」

マルスは拳の関節を鳴らした。見ると、ガーディアンがバラバラに解体されていた。

「まさか、お前素手で破壊したのか?」

ロイドは驚きのあまり目を丸くした。

「おうよ、俺の拳は鉄をも砕くぜ。」

素手で鉄をも砕くとは、この男は本当に人間なのだろうか?

「それでは先に進みましょうか。これほどの厳重な警備がされているのです、きっと頂上には凄い物があるに違いありません。」

ウォーリスは期待に胸を膨らませていた。恐れを知らぬ、この探究心は学者の性なのだろう。

「ああ、だがこの先に何があるかは想像もつかない。慎重に進むぞ。」

ロイドたち一行は、失われた古代文明の力に圧倒されながらも、再び螺旋階段を上り始めた。
一歩一歩、階段の一つ一つを踏みしめるようにして・・・・。

                                            第19章  完                

       

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