Neetel Inside ニートノベル
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激萌装甲 ブルマイダー
第三話 孤独のブルマ

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 翌日。
「んっんん~♪ アタリが来たならばぁ~渾身の力で引っ張れ~おっと、地球は釣るんじゃねえぞ! だって地球はみんなのものなんだから~♪」
 柊が陽気に歌を歌いながら海辺で竿を垂らしていた。
「にくいあんちくしょう~餌だけ取ってすいすいと泳ぐ糞魚~♪ ……ん? おおっ! 来た来た来た来た!!」
 竿がしなる。柊は歓喜の声を上げて、竿を握り思いっきり引っ張る。
 が、竿を引っ張る力の方が強く、引っ張られそうになる。
「――っとぉ!? 結構大物だぞ! やった! ひょっとしたらマグロか!? 朱里の目の前で大トロを食べてやる! やっほぉい!」
 足を踏ん張り、渾身の力をこめて思いっきり引き上げる。
「こんのぉ……! 長崎の釣り姫と呼ばれたあたしを……なめるんじゃねぇぇぇぇぇ!!!」
 叫び声と同時に、海面が盛り上がり、中から何かが飛び出してきた。
「よっしゃぁぁぁ!――――ふべらっ!」
 その飛び出してきたものは勢いを衰える事を知らず、柊に直撃してしまった。
 ふらふらと起き上がり、釣り上げた物体を鷲づかみにする。
「ゴホゴホッ! じ、上等じゃねぇか。三枚に下ろしてポン酢で〆てやる……って、こいつは……」

 私は一美ちゃんを連れて柊さんの部屋にいる。
 昨日の星の出来事を話すためだ。前もって電話で伝えておいたが、詳しい話は部屋で話したいと言ってきた。
 ひょっとしたらブルマイダーの出番になるかもしれない。
 ……あの怪人もう二度と出てきませんように。あんなの相手するのはごりごりなんです。
「柊さん、どこに行っちゃったんだろう。ねえねえ、一美ちゃん、柊さんとは会うの初めてだったよね?」
「……ううん。知っているよ」
「えっ! 本当? どんな関係だったの?」
「……秘密な関係」
 一美ちゃんがぼそりと呟く。
「ええええっ! えっ……え? 柊さんとそ、そんな関係だったの!?」
「……(コクリ)……いつも、あそこの机の上で座らされて、足を開かれて……太ももを撫でられ、段々と股のほうへ……ああ、これ以上は言えない」
「うわわわっ! きゃーきゃー! あ、あうあうあう……!」
「(……面白い)」
 真っ赤になって慌てふためいていると、突然扉が開いて、クーラーボックスと何かを抱えた柊さんが入ってくる。
「おーす! 腹空かして待ってたか餓鬼共ぉ!」
「ただいまですっ! 柊さん、釣りに行っていたんですか?」
「ああ、大漁だったぜぇ。ん? おいおい、一美がいるじゃねえか。珍しいなぁ? おい」
 陽気な笑みを浮かべ、一美ちゃんの肩をバンバンと叩く。
 一美はちょっと鬱陶しそうにして、しっしっと肩を払う仕草をした。
「……久しぶりです。柊さん」
「そうだ、せっかくだからお前も魚食えよ。朱里ん家で、あったかい鍋でもぱーっとやってさ」
「わぁ!いいですね。それで何が釣れましたか?」
 柊さんが、クーラーボックスと何かを地面に置いて、クーラーボックスを開いて見せる。
「まずは、アコウダイだろーそして、サンマだろーショウジョだろースズキだろーヒラスズキもあるぞ」
 ……え?
 今何かとんでもない単語を耳にしたような……
「……柊さん、このショウジョというのも食べるんですか?……焼けにくそうですよ」
 一美ちゃんが、クーラーボックスの隣にある何かを指差す。
 それはずぶ濡れになった少女。ドレスを着ていて、今はぐったりと気絶しているようだ。ぐるぐると目を回していた。
 ……えっとぉ、これ魚なのかな? 私にはどう見ても人に見えるんだけれどなぁ。
 あははっ、いけないいけない。最近疲れているのかな? よーし、目を擦ってみよう。ゴシゴシ……
「いたたた!! ま、まつ毛が目に、目にー!」
「朱里ぃ、何やってんだよ」
 うう、涙が止まらない。
 溢れる涙をこらえて、もう一度少女を見る。
 少女。
 ……ショウジョ……し、少女ぉぉぉぉぉ!?
「ち、ちょっとぉぉぉぉぉぉ! 柊さん、正義の味方なのに人を誘拐しちゃったよぉぉぉ!!」
「誘拐じゃねえ! 釣ってきただけだ!」
「……えっと……とりあえず、お風呂に入れてくるね。……んしょ」
「人が釣れる海ってどこの海なんですか! ほら、リリースしてきなさい! 警察に!」
「やだ! 釣った獲物はあたしのもんだ! 釣り師として食べる義務があるんだよ!」
「……服を脱がせて……シャワーを浴びせて……綺麗なお尻……もみもみ……あ、ピクッって動いた」
「釣り師としての義務より、人間としての義務を全うしてくださいよ! というか、どうやって食べるんですかぁ!」
「ああ! うるさいうるさい! あたしが正義だ! 正義は何しても許されるんだよ! 五人の戦隊で一人の怪人をフルボッコしても許されるんだよ!」
「……ちょっと顔を持ち上げるね……え? ……ま、マイア……? 何でこんなところに……」
「うわぁぁぁぁん! 独裁者がここにいるよぉぉぉぉぉ!!」
「朱里……忘れるな。正義とは本来、独り善がりな意思なんだよ」
「……もしかして……今頃になって私を……でも……」
「何気に格好いいセリフをほざかないでください!」
「うるせぇ! とにかく、あたしゃ、この子を……れ? お、おいショウジョはどこに行った?」
「……ただいま」
 いつの間にか、一美ちゃんが少女にタオルを包ませて、抱きかかえていた。


 アルデバランの内部、怪人同時が目の前にあるモニターを見つめながら呟いていた。
「どうだ? ブルマイオーの腕輪のありかは見つかったか?」
「いや、まだ見つからない。もう少し待て……そうそう、前に偵察として先に送り込んだ我が同胞がついさっき反応を見せなくなった」
「……例のブルマイダーとやらか? ふん、所詮、ブルマイオーの模造品だ」
「いや、それがなかなか侮れない。ブルマイダーの腕輪を製作した人物は我らの文明レベルを超える頭脳を持っている」
「……地球という辺境の地にか。これは思ったよりやっかいなことになりそうだな」
「そうだな。任務を遂行するのが困難になりそうだ」
「そうとも限らない。ブルマイダーにやられた同胞の一部を採取することに成功した」
 そう言って、へし折れた刃を見せる。
「今から、ブルマイダーについてのデータを分析し、それを踏まえた上で更なる改良を加えたクローンを作る」
「ブルマイダーの対策ということか」
「ああ、そしてエレクトラの抹殺と激萌装甲宝具の一つであるブルマイオーの腕輪の奪還にも」

私と柊さんが並んでソファーに座り、木製の机をはさんで向こう側に、一美ちゃんが少女に膝枕しつつソファーに座っている。
 少女はすでに服を着ていた。乾燥機でもつかったのだろうか。
 柊さんは足を組みながら机の上に乗せて、サングラスを手で押し上げながら不機嫌そうにレモンガムをくっちゃくっちゃと噛んでいた。なにこの人。
 あ、こっち睨んできた。本当になにこの人。
「……んぅ……んん……」
 少女が眠そうに声を出しながらもぞもぞと顔を動かす。
「あ……そろそろ起きるみたい……マイア起きて」
「マイア? 一美ちゃん、その子を知っているの?」
「……うん。マイアは私の妹なの。……あ、起きた」
「んぅ……あれ、ここはどこですの……あっ! お姉さまー!」
 マイアが目を擦りながら起き上がるとすぐに一美ちゃんを見つけ、抱きついた。
「お姉さまー! お姉さまぁぁぁ! お会いしたかったんですのよー!」
 嬉しそうに一美ちゃんの頬に顔をこすり付ける。
「……マイア……久しぶり。起きて直ぐで悪いけれど……説明してくれる?」
「あああああ! そうでしたわ! 姉さま、大変なんですのよー! えっと、女王の任期が切れて、それで、次期女王に継承にメロペ姉さまが……えっとえっと!」
「……落ち着いて。深呼吸をして……ほら、ひっひっふー ひっひっふー」
「ひ、ひっひっふー ひっひっふー」
「一美ちゃん、それ、なんか違うような気がするんだけれど」
「あー要するにだ、一美を抹殺しにお前の軍隊がやってきたってことだろ? いや、そのメロペという奴の軍隊か」
 さっきまで不機嫌そうにしていた柊さんが突然、髪をかき上げながら口を開いた。
「え……あ、あなたは誰ですの?」
「あたしか? あたしは柊。こいつらの保護者みたいなもんだ」
「柊さん……ようやく私も気づきました。……すみません。私のせいです」
「あの……私、まったく話についていけないんですけれど」
 私はおそるおそる手を上げる。
「柊さま……お姉さまがこの星の人間じゃないことを知っているんですの?」
「あ、あのぉ……もしもーし?」
「ああ。そもそも、地球に来た一美を拾ったのはあたしだからな」
「もしもしぃー……私ー私だよー」
「……柊さんには感謝しています」
「うわぁぁん! 孤独だよぉぉぉぉぉ!!」

       

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