最後のきらめきみたいなもの
最後
1
深夜のパソコンのディスプレイに映る私の顔は暗かった。
目からは絶望がにじみでていて気味が悪く、黒いディスプレイに映る私の肌は
余計に白くみえた。
ふと、手首を触ってみるとそこには……。
――リストカットの跡などなかった。
――それどころか、私にリストカットをした記憶さえもない。
――そう、私はリストカットなどはせず、ただただ、妄想にとりつかれていたのだ。
そう考えると、私のリストカットは妄想で、ということは昨日みたことも、
したことも昨日のハヤシライスもすべて妄想で……。
――現実と妄想の区別がつかないと感じた私は、ベッドの上に寝転がり、
乱れた呼吸を整えるようにカフカの「変身」を読んだ。
――しかし私には――そんな私が恐ろしくたまらなかった――かつては妄想、
だけど今は違う――ならば今みている世界は何なのか――疑問は尽きず――。
翌日の月曜日、私は学校にいった。その姿はまるで「海月」のようにふらふら
ひゅらひゅらとしていたと思う。
その日の放課後、親友に恋人ができたと聞いた私は教室で人知れず劣等感に
打ちひしがれた。しばらく悩んだ後、教室の窓からグラウンドを見ようとしたとき、
居るはずもない海月がこう私に語りかけた。
「そんなに気に病まなくてもいいよ。どうせ君は死ぬんだから。
だったら今死のうじゃないか。死なんて早いか遅いかの差だろう?」
ゆらりゆらりと漂う海月のように
海を彷徨ううつ伏せの私がきっと明日現れるだろう。
(終わり)