黒と白の黙示録
第五回(アグヤバニ作)
「はあ……悪魔退治専門の組織、"テスタメント"……ですか?」
「日本語直訳で聖約とか遺言、って意味だな。いや、まぁそんな事はどうでもいい訳だ」
夕暮れの公園、子供達が家に帰る頃。ベンチには異様な二人組みが腰掛ける。
いたって普通の高校生に見えぬ事も無い。だけどどうして、妙な感じが漂うこの二人。
片方の青年が、異様な雰囲気の青年に語りかける。
「……ところでどうして、学ランなんですか?」
「個人的趣味ってヤツだ。アンタが気にする程のコトじゃねえよ」
新手のコスプレだろうか。と、考えてみるが答えは出ない。
これだけ妙な事を言う人なのだから、考える事も行動もおかしいのだろうと頭の中で決め付ける。
そんな青年の考えを知ってか知らずか、全身を黒に包んだ青年が立ち上がる。
「さて、それじゃ本題だ。俺が悪魔退治をしてるのは説明したな?」
決して信じている訳ではない、それよりかは何を言っているのか検討もつかないが青年は頷く。
「お前の学校、つまり蔦谷高で悪魔反応が出たと本部からの連絡を受けて俺はここに来た。相当大きな反応らしいな、数が多いか強大な上級悪魔って事だ。衛星からのスキャンでは大体一年三組から反応が出る事が多いとの事だ」
それは、つまり。
「……ぼくのクラスに、悪魔がいる?」
「可能性は高いな。それか操られているか、だ」
悪魔と一緒に一日の半分を共にしている。その事実に青年は身を震わせる。しかし、そんな事はありえない。世迷言でしかないのだと自分に言い聞かせた。
だが、この妙な青年にはそれを信じさせるだけの何かが――
「まぁ急な話で意味がわかんねえだろ。それでいいんだよ、明日俺がケリをつけてアンタは普通の生活に戻る。それで全て良しだ」
今日はもう帰れ。それだけを告げると青年は去ってしまった。
本当に、妙な事ばかりが起こる。ふつうじゃない、ふつうじゃない。
「……どうして、ふつうじゃないの?」
自問自答しながら、青年は夕日の刺す帰り道を歩いた。
『あの子が例の学校の子ですかー』
「ああ、これだけ接近してもそれらしい感じはしなかったからアイツは大丈夫だろ。とりあえずこれからアイツを一日マークする」
『わっかりましたー。どうせ明日にはメチャクチャやっちゃうから装備の準備だけしておきますねー』
「ああ、もう一つ」
『? なんですか?』
木の上から、先ほど言葉を交わした青年を見つめながら。堕天使と呼ばれる男は至極真面目にこう要求した。
「頼むからなんか食うもん送ってくれ、腹減った。あと徹夜でマークするから残業代な」