Neetel Inside 文芸新都
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私とお酒の日々
2010/04/04/10:47(日)「初めてのときは……」

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 おはようございます。
 千世子です。
 
 昨日はいろんなことがあったので、それを書いていきたいと思います。
 
 
 4月3日土曜日。赤霧酒店が臨時休業でした。
 基本的に年中無休で、どうしても休みにするときは一ヶ月ぐらい前から知らせてくれる赤霧酒店が、臨時休業。
 あまり考えたくはないのですが、赤霧さんか、それとも先代の身に何かあったのでしょうか……でも、先日の居酒屋赤霧では元気そうでしたし……
 
 すごくハイボールの気分(トマトポテトが家で作れた記念)でしたが、こんなことがあれば気分も少しは変わります。
 比較的早い時間……と言っても夕方ですが、ウォーキングをすることにしました。普段は駅と赤霧酒店の往復ぐらいしかしていないので、すれ違う人やちょっとした喧騒が新鮮です。曲がり角を見つけるたびにわくわくしてしまいます。
 
 楽しくなってついつい歩きすぎてしまい、少し疲労(と空腹)を感じてきました。
 どこかでコーヒーを飲もうと考えてると、気がつけば呑み屋街の中にいました。鮭が生まれた川に帰るように、私は自然とお酒のあるところに行くのでしょうか……
 
 ですが、家にはトマトポテトがあるのです。外では呑みません! と、強く考えていたとき……
 
 
 
 海の香り。
 
 いえ、海の幸を炭火で焼いた香り!
 
 
 
 こうばしい潮の香りは、すぐに私を魅了しました。ふらふらぁと、香りの元へと向かいます。
 焼き鳥の香りならよくありますが、潮の香りが流れてくるのはめずらしい……お店を見るだけです! と考えていたとき……
 
 
 魚屋『天吹』(あまぶき。仮名です)
 
 
 表から見れば魚屋さんで、ちょっと中を覗けば、居酒屋になっているようです。
 潮の香りは店頭の網焼きから出ていたようですね。
 
 ふふふ、これはこれは。入るしかありませんよね。
 
「1人、入れますか?」
 
 人差し指をまっすぐ立てて、ちょっと大きめに言いました。聞き返されるのが嫌なので、人数はこうして指で示します。
 案内された席は……カウンターの端、入り口側。
 
 潮の香りがダイレクトにやって来る、かつ、焼き物はできたて10秒でやってくる席! 考えうる限り、ベストポジションです!
 
「日本酒。冷で」
 
 この際おしぼりはいらないので、早くお酒を!
 やってきたのは一口グラスと酒枡。酒枡の中に一口グラスを置いて、そこに日本酒をなみなみと……
 入って、注がれて、グラスのふちまで昇ってきて、それが……零れて……酒枡の中に満ちてきます。
 
 
 表面張力でゆらゆらゆれる水面に、お口から迎えてあげて……口づけ。
 
 チュッ。
 
「ぅん……」
 
 ひどく辛口でした。ちょっと眉をしかめてしまうぐらいの、ちょっとむせちゃいそうなぐらいの、辛口。
 ですがこの辛口は……海の幸のためにある、はずです。現に焼き物の香りが私を包みこみ……!
 
 コキュ、んきゅ、んきゅ。とろろろ(酒枡の中身をグラスに入れる音です)。くきゅくきゅ。
 
「ぅぅ……あう」
 
 指をぬらす日本酒をぺろり。まだ注文もしていないのに呑み干してしまうなんて……
 
「お通しでーす!」
「っ! 冷、おかわりくださいっ」
 
 お通しがあるのにお酒がない! なんてミスを犯したのでしょうか……千世子、一生の不覚っ。
 出されたものはマグロとろろ。ぶつ切りにされたマグロと、ねっとりとしたとろろが食欲をそそります。
 もう我慢できません。ここは豪快に、口に流し込みます。
 
 ジュル、ジュル。あむあむ。ごくん。
 
 思っていたより量が多かったため、いったん口を離しました。
 この口の中のねとねと感が良いですね。唇と器にできた白い橋が、とろろの粘度を教えてくれます。
 
 酒が注がれているときに、焼き物三種盛りを頼みました。今日の三種はカキ、ホタテ、サザエのようです。
 ステキですね……どれもおいしいエキスがたっぷり出ていることでしょうね……
 
 ごくごく。とろろろ。こく、こくり。
 
「うう……」
 
 お通しで呑んでいるわけではないのです。潮の香りだけで空けてしまうだなんて……この店は、私にどれだけ呑ませる気なのでしょうか。
 
「す、すみません……」
「はーい!」
「………冷のおかわり」
「……? すみません、もう一度お願いしまーす!」

 聞きなおされました……うううっ。

「冷のおかわり、ほしいですっ」

 ぜったい、顔赤かったです……注がれているときに「おねーさん好きですね」とまで言われてしまいました。
 それはそれとして! 来ました、やって来ました! カキ、ホタテ、サザエ!

 まずは、この大きなホタテを……

 あむっ。

「んんんっ」

 大きくて熱いっ。口に含んだときの甘いお汁が何とも言えません……!
 半分口に入れて、それを飲み込んでから、もう半分。この色あせない幸福っ!
 お酒、お酒っ。ホタテの食感とよく合いますっ。


 次はカキです。クリーム色の表面にほんのすこーしレモンを絞って……一口で吸い込みます!

 ちゅるんっ。こくんっ。
 
「んむぅ……っ」

 濃厚、あまりにクリーミィっ! 海のミルクが身体に溶け込んで……あふぅ。
 まだ口内に残るミルクとお酒を頂いて……残る味もたまりません!


 そして最後は……サザエのつぼ焼き! まずはお箸を挿して!
 
 ずぶっ、ぐりぐりぐりぐり。
 
「うふふっ……」
 
 サザエをきれいに取り出せるとやけに嬉しいです。この黒い部分に旨みが濃縮されていて……
 
 あむ、もみゅもみゅ、もみゅ。
 
「あつ、あつい……っ」
 
 キモの部分から磯の香りと熱された醤油、そしてサザエ本来の食感。
 お酒を全部呑んで、ごくん。
 
 ……………
 
 あう、よだれが垂れてました……恥ずかしい。
 
 
 
 その後、マグロとろろの残りを食べて、お店を出ました。
 おあいそが早いように見えますが、ここは千世子流。

『ぱっと入って、お酒を2杯、料理を2品頼んで、ぱっと出る』
 
 千世子流『居酒屋での過ごし方(初めてのお店編)』です。本気を出すのは2回目以降、ある程度お店の雰囲気を知ってからです。
 今日はお酒が1杯多く、料理が1品少なかったので(お通しはカウントしません)プラスマイナス0ですね。ですが、この満足感からすると、かなり当たりの居酒屋です。
 
 ひさしぶりにいいところを見つけました。この嬉しさは、赤霧酒店を見つけたとき以来かもしれません。
 次行ったとき、何を頼みましょうか……皆さんも、お気に入りのお店、ありますか?
 
 

       

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