各自席に座ると、初めのフェイズ、宣言<コール>を行う。
コールとは言わばカードに書かれた役を皆に見せる工程の事でこれにより神と人とを分けるのである。
振り分けられた結果、第一ゲームの神はラングと言う若者と、ドシャと言う中年親父に決まった。
このゲームの本質は至って簡単だと、ナイトウはそう認識していた。
面接官はゲーム上の親みたいなもので進行役と兼任してどのような質問をして回答者の舌を封じるかを画策し、平民は神の質問にいかにして自分を売り込むか。用は神が発言する無理難題に平民は智恵を絞って応対するという型のゲームであり、平たく言うと竹取物語みたいなものだと解釈していた。
「神と平民、ねぇ……ははっ」
ナイトウは自分の手に持つ平民カードを眺めて呟いた。
どこにいっても付きまとう格差を、不均衡を、不平等を感じて静かに笑った。
(……ふざけるなよ!)
グシャ、とナイトウは持っているカードを握り潰した。
(何が神と平民だ……! 神なんぞ所詮は人間作り出した虚像……辛い現状が続く茨の道がいずれ未来を、将来を、極楽へと続く果てしない順路だと、そう思い込む事によった末にできた幻影。死を恐れた人間がその恐怖を忘れるが為に縋る拙い糸、連綿と天国へと繋がる蜘蛛の糸を夢見て、いつまでも綺麗な空を見上げれるようにと生まれた虚構……! 言わば神は……)
ナイトウは俯き気味に顔を伏せると、ギリリと音がでるほど歯を食いしばる。
(神は、人間の心情と抱き合わせで生まれた、言わばコインの表裏。同じ物質じゃねぇか……!)
いつから世界はこんな風になったのだろうか。
別に神の存在を否定しているわけでない、ないのだがこの世界は余りにも下らない。創造主である神が居て、被造物である人間がいるのならば人は神の下に平等であるべきなのではないのか? それなのになぜ人は天を目指す? なぜ権力を欲する? 富を独占せんとする?
――なぜ、平気で人を殺す?
どこに行っても存在する宗教の中で、神ではなく権力者によって人生を捻じ曲げられる民の人生を考えると反吐が出た。それはこの面接ゲームも同様であり、試験とはいえ『同じ人間』の中から『神と民』を選出するこの内容にナイトウは憤りを感じていた。
「さーて。ではコールのフェイズを終了しましたので、メインフェイズへと移行しますねー」
怒りでたたらを踏むナイトウの心情をラルロの声が無縁、無関係とばかりに明るく透き通る。
(やってやるよ……)
ナイトウは意を決したかの如く、顔を上げると『神』である『人間』の二人を見据えた。
このゲーム、絶対に勝つ! ナイトウは静かにその心の内に闘志を燃やす。覚悟も準備も全てオーケー。後は殺るだけ、と一人握りこぶしを作り不適に口の端を吊り上げた。
そんなナイトウを一瞥するとラルロは微笑んだ。
「おっとぉ、その前にっと」
彼女はその場でくるっと一回転すると、その微笑んだ先にいるナイトウに対して声高々に一言を告げた。
「そのカード、以降も使うのに破損させちゃったので、ナイトウさんはマイナス10pからスタートさせていただきまーす!」
「え」
ナイトウの出だしは最悪だった。