Neetel Inside 文芸新都
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和泉新斗物語
第十九話「聖なる夜に」

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今日は十二月二十四日、クリスマスイヴ。
時が経つのは、本当に早いものである。
ついこの間まで紅葉が綺麗だなんて思っていたのだが。
あっと言うまに冬が訪れ、冬休みになり、ついにはクリスマスを迎えた。
そして今日はいつもの四人で、クリスマスパーティをしようという流れになったのだ。
本当はクリスマスぐらい、一人寂しくても良いから平和に過ごしたいものなのだが。
春日や明の強引な誘い、それと神無さんの何だか切実な誘いを断ることは出来なかった。
結局、今僕はいつもの皆と一緒に僕の生まれ故郷である別府街へとやって来ている。
何故わざわざ都会へ出てきたか、なんて理由は皆お察しの通りだ。
超が付くほど田舎の新都町には、娯楽施設のようなものは何も無い。
やっぱりパーティと言うのだから、たまには若者らしくカラオケをしたり、皆でおいしい物を食べたりしたい。
そういう流れから、長い時間電車に揺られて来た訳である。
いや、もちろん本音を言えばコタツで丸くなっていたいのだけれども。

「こなぁぁぁ~ゆきぃぃぃ~こぉこぉろまぁでぇ~しぃろくぅ~」

耳を塞ぎたくなるような春日の下手糞な歌が大音量で響き渡る。
僕はカラオケは結構好きで、都会に住んでいる時には頻繁に通っていた。
だが、こんなにも下手糞な歌声を聴いたのは、この世に生を受けてから初めてである。
もはや殺人音波とでも呼ぼうか。
推定四畳半ぐらいのせまっくるしいカラオケルームのソファーで、僕は耳を塞いで俯いていた。

「い、和泉君、具合悪そうですけど大丈夫ですか??」

僕の顔を覗き込むように、優しい神無さんが気遣ってくれているようである。

「いや、別に大丈夫なんだけどね・・。」

体は至って健康。
ただ春日の歌声に苦しめられているだけだ。
しかも、こんなに下手糞なのに妙に満足げに歌っているのがうっとおしい。
いちいち立って歌うのは腹が立つし、サビに入ると、ちょっと目を閉じながら歌っている顔はなんとも子憎たらしい・・。

「藍ちゃん、そんなに心配しなくても良いわよ。どうせ悪い物でも食べたんだから。」

優しい神無さんとは正反対に、今日も見た目だけ可愛い明はさらっとひどい事を言ってみせた。
つか、どうせ悪い物でも食べたんでしょ、なんて数年前の漫画の決まり文句みたいな事を言わないで欲しい。
リアルでこんな発言を聞いたのも、この世に生を受けてから初めてだ。

「悪い物なんて食べてないよ、ちょっと気分が悪かっただけだから。もう大丈夫だけどね。」
「ふ~ん、あっそ。別にあたしは心配なんかしてないから、いちいち説明してくれなくて結構よ?」
「・・さいでっか。」

最近気がついたのだが、明はツンデレなんかじゃなく、ツンじゃないだろうか。
こいつがデレたところを一度も見たことないし、想像することすら出来ない。
もしくは性格が悪いだけなのかもしれないが・・。

「どっこらしょっと~。」

僕らが適当に雑談していると、いつの間にか歌い終えた春日は満足げにソファーに腰を下ろした。
そしてそのまま机に置かれていた飲食物などのメニューを手に取ると、笑顔で言った。

「なぁ、クリスマスなんだし酒飲もうぜ!」

先に言っておくが、僕は決して優等生ぶるつもりは無い。
そして酒が飲めない訳でもなければ、嫌いな訳でもない。
でも何故だろう、どうしても今ここで酒を飲もうと言う案に賛成することが出来ない。
いや、むしろ猛反対したいって感じである。
このメンバーで酒を飲むと、面倒な事が起こる予感がしてならないからだ。

「僕はアルコールは反対だな。皆未成年なんだし、学校にバレたら停学処分ぐらいにはなるよ。」
「はぁ?お前何言ってんだよ、こんな遠い街で酒飲んで学校にバレる訳無いじゃねえか!」

まぁその通りだ。
春日もちゃんと物事を考えて生きているんだな、と初めて気づいた。

「う~ん、でも、あんまりアルコールは乗り気じゃないなぁ。」
「和泉、ビビってんのか?酒でも入れないとテンション上がんねーだろ!」
「じゃ、春日は勝手に飲めば?悪いけど僕は遠慮しとくから。」
「・・お前本当にノリ悪いなぁ、俺だけテンション上げても意味ないっつーの。」

またもやその通りだ。
一人だけ酔っ払っても楽しくもなんとも無いだろう。
当然、酔っ払いを見ているだけの僕はもっとつまらなくなるのだが。

「神無、お前どうする?折角クリスマスなんだし飲むよな~??」
「そ、そうですね~、シャンパンぐらいなら・・。」
「馬鹿、そんなんじゃ酔えないっつーの!」

えぇ、神無さん飲んじゃうの。
すっごく弱そうな気がするのは、僕の勝手なイメージだろうか。
でも、こういう人の方が意外と酒豪だったりするのかもしれない。

「桜井、お前はどうする?」
「・・・・。」
「おい、桜井!?」
「・・な、何?」
「聞いてなかったのかよ、お前は酒どうするかって聞いてんだ。」
「お、お酒ね。う~ん、どうしようかな・・あはは・・。」

僕の目は、明の微かな動揺を見逃すことは無かった。
そして、いつものお返しに少し苛めてやろうなんて思ってしまったのだ。

「明さ、実はすっごく弱いんじゃない?」
「な、何ですって!?」
「いつもハキハキしてる明が飲むか飲まないか悩むなんて怪しいよ、笑って誤魔化そうともしてたしね。」
「あ・・あはは、このあたしが弱い訳ないじゃない!?ほ、本当に弱くなんてないんだからね!?」

顔を真っ赤にして反論するところが、実に解りやすい。

「そっか、弱くないんだ。」
「と、当然よ!むしろ逆よ、すっごく強いんだから!」
「本当にそう?全然強そうには見えないんだけど。」
「人を見た目で判断するのはいけない事よ!焼酎ロックだろうがバーボンだろうが余裕なんだから!」

酒に弱いとバレるのは、そんなに恥ずかしい事なのだろうか?
飲める飲めないは体質だろうし、ここまで必死に否定する程の事じゃないと思うのだが。
まぁ、負けず嫌いの明特有なんだろうけど。

「じゃあ、飲めばいいんじゃない?」
「・・えっ?」
「いや、酒強いんでしょ?じゃあ飲みなよ、せっかくのクリスマスパーティなんだしさ。」
「か、構わないけど・・あ、あたし本当に強いわよ?飲み続けても知らないわよ!?」
「全然良いよ、僕は飲まないから。三人とも酔っ払っても介抱は僕がするから。」
「・・くっ。」

ものすごい優越感に見舞われる。
あぁ、いつも上から物を言っていた明を見下ろすのは実に快感だ。
新たな属性に目覚めてしまいそうである。

「わ、わかったわよ!飲めば良いんでしょ、飲めば!」
「うん、そうだね。」
「ど、どうなっても知らないんだからね!」

それだけ言うと、明は不機嫌そうに腕を組んだ。
本当に明は酒に弱いのだろう。

「よし、じゃあ適当に注文するぜ。和泉は飲まないんだよな?」
「うん、僕はいいや。」

壁に掛かった注文用の電話を取ると、シャンパンやビールなど数点を適当に注文した。
そして注文の品が届くと、春日は勢いよくシャンパンを開けた。

「クリスマス、おめでとー!」

などと意味不明なセリフを口走りながら。

「春日、クリスマスにおめでとうなんて言わないだろ。」
「あぁん?別に良いんだよ、そんなのはどうでも。そんなことよりシャンパン飲もうぜ!」

別に良いなら、そんな意味不明なセリフは言わないで欲しい。
春日は三人分のシャンパンをグラスに注ぎ、それぞれに差し出した。

「あ、ありがとうございます。」
「・・仕方無いわね、飲むわよ。」

神無さんは普通に飲もうとしているが、明はかなり嫌そうな顔をしている。
それでも強いフリをするなんて、本当に素直じゃない性格なんだな。

「あ、このシャンパン美味しいですね~。」
「だよな~!俺もびっくりしたぜ!桜井もそう思うだろ?」
「・・うん、美味しいわよ・・。」

眉間にシワを寄せながら、美味しいなんて言われてもまるで説得力は無い。

「そういえばよ~、朽木の奴、今日夕凪と二人でデートしてるらしいぜ。」
「ぶっ!」

思いもよらない春日の発言に、一人だけウーロン茶を飲んでいた僕は思わず噴出してしまった。

「え、あの二人って付き合ってるの?」
「いや、付き合ってる訳じゃないみたいだけどな。朽木が夕凪に惚れてるのはわかるだろ?」
「うん、そりゃあ朽木君を見てればわかるからね。」
「今日あたり告白するんじゃねーの?どうせ負け戦だと思うけどな。」

春日は負け戦と思っているようだが、僕にはそうは思えない。
朽木は明らかなオタクでルックスもひどいが、夕凪さんはそういうものを嫌うようには見えない。
確かに、夕凪さんは朽木には勿体無い程可愛いが、彼女もオタクだし。
実際は結構お似合いなカップルだと思うのだが。

「意外と朽木君の告白は成功するかもしれないよ?夕凪さんも朽木君と仲良いんだから。」
「え~、でも朽木だぜ?俺が女なら絶対嫌だわ!」

僕が女なら、春日も絶対に嫌だ。

「桜井は女としてどう思う?朽木と付き合えるか~?」
「朽木君?あれは無理よ。」
「神無は?」
「え・・わ、私ですか?そ、そうですね・・。」

思いっきり困った顔をして俯いている。
神無さん、正直に無理だって言って良いんだよ。

「わ、私は別に付き合えると思いますけど・・。」
「はぁ!?藍ちゃん本気で言ってるの?あの朽木君よ!?」
「あの朽木君って・・、桜井さん言い方がひどいですよ・・。」
「だってキモイじゃない!不細工じゃない!いい所無いじゃない!」

この明にそこまで言われる朽木に少しだけ、同情を感じてしまった。
元気出せ、朽木。
きっと来世じゃお前は誰もが認めるイケメンさ。

「・・た、確かに格好良くは無いかもしれませんけど、良い人だし・・。」
「性格が良けりゃ見た目がどうでも良いの?藍ちゃんすごいわ・・。」
「わ、私は一緒に居て楽しければそれで良いですから・・。」

神無さん、君は本当に良い子なんだね・・。

「へぇ~、女は男を見た目で選ばないってのは本当なのかねぇ~。俺も彼女欲しいなぁ・・。」
「春日には相坂さんが居るじゃないか。」
「何言ってんだよ、真波はただの幼馴染なだけで、そういうんじゃねーの。」
「本当かな?別にどうでも良いけどさ・・。」

流石はクリスマス、誰が好きとか恋人が欲しいとか恋愛話だ。
僕には実に苦手な話で盛り上がる皆は、やっぱり田舎者でも今時の高校生だと思った。
いやいや、僕も今時の高校生であることに違いは無いが。

「あ、思い出した!この間栗原先生がデートしてるとこ目撃したわよ!」
「え、本当に?」
「本当よ、バッチリこのカメラに収めたんだから!今度見せてあげても良いわよ~!」
「ちょ、ちょっと楽しみです・・。」
「そういえば学園長もよ、昨日女連れて歩いてるとこ見たぜ!」

アルコールの力もあってか、ますます恋愛話はヒートアップだ。
正直こんな話は楽しめないので止めて欲しいが、皆は楽しそうに語っている。
僕は適当に相槌を打ちつつ、適当に歌を歌って時間を潰していた。
そして気がついた頃には、すっかり皆は出来上がってしまっていた。

「いいぞぉ~、いずみぃ、もっとうたえぇ~!」

ろくに回っていない舌で、歌を歌えとうるさい春日。

「すーすー・・うぅ・・」

ものすごく辛そうな寝顔で眠る明。
明の前には、シャンパンを飲んだグラスがひとつあるだけ。
・・明、本当に弱かったんだね。

「あ、桜井さんが風引いちゃうといけないから、エアコン少し強くしますね。」

思いっきりいつも通りの神無さん。
シャンパンを飲んだグラス以外にも、彼女の前には空になったビールや焼酎がいくつもあった。

「・・ねぇ、神無さんお酒強いんだね。」
「え・・あ、はい・・。実はお恥ずかしいんですけど、よく寝る前に飲んだりするんですよ・・。」

あぁ、晩酌ですか。
これはもはやギャップとかそんなレベルでは無い。

「い、和泉君、そんなことより・・。」
「ん?どうしたの?」
「そろそろ帰らなくて大丈夫なんですか?もう日が暮れて来てますけど。」
「げ、本当だ。電車無くなるとまずいもんね。」

早い時間に終電となってしまう新都町へ帰るには、そろそろ出なければならない時間になっていた。

「そろそろ帰ろうか?」
「え、はい。でも、二人共まだお酒残ってるみたいですけど・・。」
「はぁ、だから嫌だったんだよね。」

酔っ払い二人の面倒を見ながら帰らなくちゃならないとは。
クリスマスなのに、ロマンチックも糞もあったもんじゃない。

「春日、そろそろ帰るから仕度してくれ。」
「あぁ~?お~、かえろぉぜぇ~。」

春日はフラフラな足取りで立ち上がると、せっせと上着を羽織り鞄を手に取った。
どうしてこいつは、酔っ払っている時の方が素直なんだろう。

「桜井さんはどうします・・?」
「う~ん、起きそうにないからなぁ。ここに置いておく訳にはいかないし・・。」
「で、ですよね・・。」
「仕方無い、僕がおぶって行くよ。神無さんは春日を支えてやってくれない?あいつかなりフラフラだから。」
「あ、はい。わかりました。」

僕は未だに苦しそうに眠る明を背負うと、荷物を手に取りカラオケを後にした。
どうも神無さんが春日を支える姿は危なっかしいものだったが、何とか無事に電車へ乗り、新都町に帰ってくることが出来た。


「うわ~、もうすっかり夜になっちゃったな。」
「そ、そうですね・・。」
「うぅーん、さむいんだよぉ~、このやろぉぉ~!」
「・・すーすー・・・うぇっ・・。」

何とか新都町には帰ってきたが、二人の良いが覚める気配は全く無い。
僕としては、この場で解散して自宅に帰りたいのだがそうも行かないだろう。
介抱する、とカラオケで言ってしまった以上、最後まで面倒を見てやらなくては。

「さて、どうしようかな・・。」
「和泉君、桜井さんの家はわかりますか?」
「一応わかるよ、だいたいだけどね。」
「じゃあ、桜井さんをそのまま送って行ってあげてもらえませんか?」
「それは別に良いけど・・、春日はどうするの?」
「春日君の家は近いですから、このまま私が支えて帰ろうと思うんですけど・・。」

まぁ、神無さんが明を背負うことは出来ないし。
春日はひどく酔っ払っているが、何とか歩ける様だから、確かにそれが一番手っ取り早いのだろう。

「神無さんは大丈夫?春日の家まで支えるの辛いでしょ?」
「・・あ、大丈夫ですよ。私こう見えても、意外と体力はあるんです・・。」

本当かよ。
本当なら君はギャップだらけだよ。

「そっか、じゃあ春日のことお願いするよ。」
「はい、任せて下さい。」
「じゃあ、僕は明を送って行くから。気をつけてね。」
「あ、はい・・おやすみなさい。」
「うん、おやすみ。」

僕は神無さんに背を向け、明の家の方角へと足を向けた。
ものすごく寒いので、早歩きでもして早く帰りたいものだ。
明の家は僕の家と同じ方角だが、ここからだと僕の家より遥かに遠い。
どうしてクリスマスにこんな事をしなくちゃならないのか・・。

「・・ねぇ、ここどこ?」

歩き出して数分後、目が覚めたのか明が口を開いた。

「どこって、明の家に向かってる途中だよ。」
「・・夜になってるじゃない・・。」
「・・まだ酔ってるの?明が長い間眠ってただけだよ。」

恋人が肩を寄せ合うクリスマスイヴ。
あの朽木でさえ、好きな女の子とデートしているって言うのに。
どうして僕は酔っ払いを背負って田んぼ道をとぼとぼ歩いているのだろう。

「・・ねぇ。」
「もう、何だよ?」
「・・あたしが酔ってるからって、変なことしたら許さないわよ。」
「変なことって何だよ・・?」
「・・体触ったりしたら、許さないんだからね。」
「触るかよ。」

こいつは酔っ払っていても可愛げが全く無い。
明の体を触る時間があるなら、早く帰ってコタツで温まるね。
いや、まぁ背中にある胸の感触だけはありがたいけれども。

「・・ねぇ。」
「全く、今度は何だよ?」
「・・どうして藍ちゃんの告白、断ったの?」
「別に・・。」
「・・他に好きな人でも居るの?」
「そういう訳じゃないけど、神無さんは友達だから。」
「・・ふ~ん、別に興味無かったんだけどね。」
「じゃあ聞くなよ・・。」

人におぶられながらの憎まれ口だ。
黙っていれば可愛いのに、実に勿体無い。
今すぐここに置き去りにしてやろうかと思ったが、凍死されると困るので止めた。

「・・ねぇ。」
「あーもう!何だよ今度は!?大人しく寝てろよ!」

今日がクリスマスだということと、寒さでイライラしていたことが重なって、思わず強い口調で言ってしまった。
明は、どうせまた下らない事を話してくるのだろう。
本気で腹が立つ、畜生。

「・・ありがと。」
「え?今何て言った?」
「・・ありがと、って言ったの。」
「何で?」
「・・送ってくれてるから、お礼してあげたんじゃない。」
「・・良いよ、別に。」

ちょっと意外だった。
まさかあの明が素直にお礼を言ってくるとは思ってなかったから。
不覚にもドキっとしてしまったのだが、今のがツンデレのデレなのだろうか・・?

「・・ねぇ。」
「いい加減しつこいな、今度は何が言いたいんだよ?」
「・・雪。」
「は?」
「・・雪、降ってきた。」

上を見上げると、確かに雪が降ってきていた。
どうりで寒い訳だと納得できた。

「本当だ、寒いと思ってたよ。」
「・・今日クリスマスよ?」
「だから何?」
「・・ホワイトクリスマスなんて、ロマンチックで良いじゃない。」

そうなのだろうか?
明を背中におぶって歩く田んぼ道、そこに降り出した雪。
これはロマンチックなのか?
僕は酔っ払いの介抱をさせられているという認識しか無いのだが。
とりあえず寒い、ついでに雪がうざい。
ロマンチックな気分なんて全く無いのだが、どうやら明はそうでは無いようだ。
何だかんだ言っても、やっぱり女の子なんだと思った。

「・・和泉君、来年もよろしくね。」
「急だな。」
「・・何となくね。」
「はいはい、こちらこそよろしく。」

うっすらと雪が積もりだした夜の田んぼ道。
明を背負ったまま、僕は歩く足を速めた。
僕に掴まる明の腕が、少し強くなった気がした。

       

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Neetsha