Neetel Inside ニートノベル
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日常生活の取り留めもない会話の収集
男に二言はないと言うけれど無理なものは無理であるという件

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※今回の話は「日常生活の取り留めもない会話」ではありません。申し訳ないです。
 今回、登場する人名や国名や世界観は実際の出来事や団体などと一切関係ありません。
 ……おそらく










六月某日。午前二時十一分。暁国、某大衆酒場にて。
これは、どこの誰だかわからない、ニンジャ魂を心に秘めた熱い男とその友人の会話です。


「疑惑のゴールってあるじゃん」
「なんだよ? それ」
「……」
「なんなんだよ!」
「わからんならいい」
「あっそ」
「……」
「てかさ」
「なんだよ」
「あのシュートは決まっていたよな」
「あ? 何? ワールドカップの話?」
「ああ、そうだ。ワールドカップの話だ」
「ああ、なんだっけ? チャールズ大国とヒットラー帝国の試合だっけ?」
「そうだよ! お前、ワールドカップに興味ねーのか?」
「ねーな」
「まじかよ」
「だって、サッカーよくわからんもん。観てても何が何だかさっぱりわからん」
「わからないってことはないだろう。だってお前……」
「まあ、サッカーっていうスポーツならわかるよ。さすがに」
「おうおう」
「てか、俺、サッカーより野球の方が好きなんだがな」
「は? 何それ? お前」
「いやいや、何それって言われてもな」
「ニンジャブルーが異国の地に赴いて、国の威信をかけた命がけの試合を繰り広げているというのに……。その無関心さ……。同じ暁国民として泣けてくるねぇ……」
「そんな事言われてもなぁ……。試合に負けたからといって、俺がどうこうされるわけじゃねーし」
「……」
「なんだよ?」
「すみませーん!」
「あん?」
「店員さん! 介錯用の暁刀と短刀を一セットください!」
「は? 何それ? お前冗談言うなよ」
「馬鹿野郎! 俺が冗談を言うわけないだろう!」
「いやいやいや~ないわぁ……。って! お店の人! 本気で刀持ってくるんじゃねーよ!」
「お前は必死で戦っている戦士たちの心意気を踏みにじった!」
「おう……。って……え?」
「お前に生きる資格はない! 暁国民として……いいや、ニンジャ男子としてこの国で生きる資格がないと……そう言っているのだ!」
「おいおい……マジかよ!」
「だから、言っただろう! 暁国民の男子に二言はないのだ!」
「この場合は二言があって欲しいものだ」
「つべこべ言うな! 暁男児らしくないぞ!」
「いやいや! つべこべ言う必要があるだろ! この状況は!」
「あ、切腹セットありがとうございます! うわぁ、店員さん! 良い刀扱ってますねぇ! 切れ味良さそう!」
「ちょっ! おま! 刀置いてんのかよ! この店!」
「さてさて、治五郎君……覚悟はいいかな?」
「いやいやいや……いいわけがないねぇ」
「まったく! 命乞いをするなんて……。つくづくお前は非国民であるなぁ……」
「おいおいおい! 刀を鞘に収めろ! いいから! 刀を鞘に収めろ!」
「安心しろ! 痛くしないから……」
「どう考えても痛いだろ!」
「……」
「……おう?」
「覚悟! きえええええええええええええ!」
「うおおおおおおおおおおおおお! マジかあああああああああ!」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……ふう」
「……あれ? 俺生きてる?」
「ああ、生きているとも。しっかりとお前の首と胴体は繋がっているとも!」
「おおおおお」
「まあ座れや……竹馬の友の亡骸を大衆の面前に晒す愚かな男なんてこの国にいるわけがないだろう!」
「……で、ですよね~」
「おうとも! おうとも!」
「佐助! 俺はお前を信じていたよ!」
「おおそうか! ありがとう!」
「……」
「……」
「……」
「俺はな……お前にわかって欲しかっただけなんだよ……」
「何をだ?」
「最初に言っただろうが! チャールズ大国のダンチョウチョ選手のシュートは決まっていたよな! っていう話だ!」
「ああ、そうだったっけか?」
「お前! ガチで叩き切るぞ!」
「まあ、待て! 待て! 俺もその試合は観ていたぞ! そして、そのシュートシーンも観ていた! しかし、あれはボールがゴールネットを揺らしていないじゃないか?」
「いやいや、ゴールラインというものがあってだな……。そのラインをボールが越えればゴールになるのだよ!」
「へー……そうなんだ!」
「ああ! そうだとも! しかっりと覚えておくように!」
「へいへい」
「で?」
「あん?」
「それが、何だって言うの?」
「……かぁ~お前って奴は……!」
「何だよ?」
「もう、いい! 知らない!」
「何だよ、そのガキみて―な拗ね方は……。気持ち悪いな……」
「……」
「……」
「あのさ~」
「あん?」
「ダンバード選手さ~、あのシュートがゴールと認められなかった瞬間どんな気持だったんだろうな?」
「さあなぁ~。俺はダンチョウチョ選手じゃね~から、わからんわ」
「……」
「……」
「きっと、しっかりゴールを決められなかった事をものすごい悔やんでさ……」
「あぁ……」
「期待してくれていたチャールズ大国民に顔向けが出来ないだろうなぁ」
「う~ん……どうなんだろうなぁ」
「あぁ……何だか、泣けてくるぜ……」
「お前、ホントいい奴だな」
「……」
「……」
「よし! 決めた!」
「ん? なんだ、なんだ?」
「俺は今から北アフィリカ共和国に殴り込みに行く!」
「は? 何をしに行くんだ?」
「決まっているだろう! あんなへんてこな誤審をしやがった審判糞野郎に俺様の正義の鉄槌を喰らわせてやるのだ!」
「うは! マジでか!」
「おうおう! 男に二言はないのだ!」
「あ~」
「なんだよ!」
「てかさ」
「あん?」
「お前……北アフィリカ共和国まで行く旅費、持ってなくね?」
「……」
「……」
「……」
「……」
「おう!」
「おう! じゃねーよ!」
「あ~……どうすんべかな……」
「てか、お前さ……。今日の呑み代を払うお金もあんまり持ってなくね?」
「……」
「……」
「あ~、どうすんべかな?」
「いやいや、自分が呑んだ分だけは払おうよ!」
「あ~……治五郎!」
「なんだよ」
「あのさ~」
「なんだよ」
「今回の呑み代なんだけどさ……」
「あん?」
「ちょっと、貸しにしといてくんない?」
「はぁ~? 何、お前ふざけた事言ってるの?」
「頼む! ニンジャとしての一生のお願いだ!」
「知るかよ! そんなの!」
「頼むよ! ここで俺は節約をして、その結果、生じたわずかなお金で北アフィリカ共和国まで旅立つのだ!」
「意味がわからんね……意味が」
「悪しき輩をこの手で成敗するためなのだ! 理解してくれ!」
「知るかっての……勝手に寝言ほざいてろ」
「……くっ」
「……」
「……」
「あ、そうだ!」
「おお! 俺の熱き志を理解してくれたか! 朋友よ!」
「あれだよ! あれ!」
「ん?」
「そこまで言うのなら」
「おおお!」
「泳いで行けよ! アフェリカ大陸まで……」
「……ん?」
「泳いで行けば、金がかからなくてすむじゃん!」
「……ああ」
「いい考えだろ! お前は熱き魂を持ったニンジャなんだろ。それくらいの事、朝飯前だろうに」
「……う~ん」
「なんだ、なんだ? さっきまでの威勢の良さはどこにいった?」
「……う~ん」
「なんだよ!」
「……俺」
「……」
「……泳げないでござる」
「水とんの術使え! 水とんの術!」
「使えるか! ばーろ! 俺、そもそもニンジャじゃねーし!」
「ですよね~」

       

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