Neetel Inside ニートノベル
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禁術師
世界観

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 一昔前にこの世界で起きた、すべての国を巻き込んだ大戦争、『神魔戦争』。
 この戦争については、記録はおろか記憶すら、誰にも残っていないという謎の多い伝説のような話だ。ただ一つ、その戦争があったということだけが民間でも伝わっている。どうしてそのようなことが起こり得るのかは未だに研究されている最中で、詳しい事はまだ分かっていない。
 けれど、その戦争こそが今のこの世界を形作っているといえる。
 その戦争を境に作られた宗教、『パラレル』。一般的に『パラ教』と呼ばれていて、世界で最も信者の多い宗教だ。そしてこの宗教が、その戦争を境に作られたということがその経典に載っているという。その経典によれば、『神魔戦争』とは神と魔王の争いであって、その戦いが長く続き、その末に神が魔王に勝利し、そして世界を魔の手から救った、ということらしい。もちろんその話における神というのがその宗教における神であるのは言うまでもない。
 一般的にはこの宗教の話が『神魔戦争』の真実であるという説が強い。しかしそれを裏付けるものは何一つとしてないというのもまた一つのの事実である。
 そして今の世界は大きく分けて3つの国に分けれれる。
 一つは『パラ教』を信仰する国。その宗教を推奨し、そして多くの人がその神を信じる。『神魔戦争』でおける、神の立場ともいえる国だ。こういう国が世界の割合では一番高い。
 一つは『パラ教』をあまり認めない国。その宗教を推奨することはせず、信じる人は少ない。『神魔戦争』における、魔王の立場ともいえる国だ。とはいっても、もちろん魔王という存在をを承認しているわけでもない。魔王とはいつの時代においても『敵』であり、『敵』であるこそ魔王といえる。あくまで魔王というのは『敵』の代名詞でしかなく、大衆の敵であれば、それは魔王といえる。つまり魔王というのはただの比喩である、ということだ。
 一つはそのどちらにも含まれない国。他の宗教を推奨している国もあれば、自由に信仰している国もあるなどそれぞれだ。
 近年は『パラ教』派が力をつけてきていて、近々そのことで戦争が起きるのではないかと噂が立っている。しかし周りの国が、『パラ教』派が力をつけていることを疎ましく思っているわけではない。むしろ逆で、『パラ教』の悲願が世界の統一なのだ。この宗教の理想こそが世界統一による永劫の平和で、だからこそ戦争が起きるだろうと言われている。
 真偽は不明だが、いくつかの『パラ教』派の国では戦争の準備が行われているのではないかとも噂されている。世界統一こそが、この世界の平和に繋がると信じて――。

     

 ――魔法というのは、大きく分けて二種類に分けられる。
 一つは『一般魔法』、もう一つは『司る力の魔法』だ。
 前者は、訓練さえすれば多くの人が使えるようになるものだ(もちろん魔力の量によって強さだとかは変わる)。魔力球による魔法攻撃はもちろんのこと、その他にも治癒魔法だとか転移系魔法だとか、召喚魔法だとか、とにかく色々なものに派生されているのがこれだ。メイラ=シュライナの言う、“普通の魔法が使えない”というのはまさにこれなのだが、それでも別に全てが全て使えないのではない。なぜなら、後者の『司る力の魔法』を扱える魔法使いは、最も初歩である魔力球による攻撃などは既にマスターしているのが前提であるからだ。だから、彼女の言う言葉の真意とは、相性などが関係してくる治癒魔法だとか、そういうことに限られているものだ。一般魔法の説明はこれぐらいで十分だ。
 後者の、『司る力の魔法』(一般に魔法と区別して、『司力(かさがら)』と呼ばれる)。こちらは、人それぞれで扱える魔法の属性が変わる(一般魔法とはまた別物であり、その属性というのは生まれた時から決まっている)。こちらの魔法の特徴は、何と言っても“物理的なダメージがある”ということだろう。
 一般魔法というのは、あくまで魔力を直接ぶつけたりだとかして相手の魔力にダメージを与え、それによって相手を昏倒させたりするのが目的の攻撃方法だ。いくら強い攻撃を放ったところで、一般魔法で相手を殺すということはない。それに対して魔術は、魔力を実際にある物質や、ある性質だとかに変質させて攻撃するというもので、つまりは物理的に干渉できる。例えば、炎に変換したならばそれは本当に炎であるし、時に干渉するならば本当に時に干渉できるし、極端に言うなら死を司るなら人を殺すことも一瞬かもしれない。割合としては『物質変換系』が大多数で、時たまそれ以外の(時だとか死だとか、そういう認知しにくいもの)人もいる。
 なお、かつての『神魔戦争』における『魔王』は『全』属性を操り、最強の司力師と呼ばれ(魔法使いとも呼ばれる)ていたものの、全ての属性を操る事ができるなどというのはそれが最初で最後と言われていて、つまりはそちらが例外であったといえる――。


 <『これであなたも禁術使い!魔法初歩編』メイラ(16)チュートリアル>より

       

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