Neetel Inside 文芸新都
表紙

隊長 藤岡の逆襲
目覚めた眠れる獅子、藤岡、

見開き   最大化      

「なぜ僕だけがここまで生きていられるんだろうか、いや、生きなければならないんだろうか」 
自宅の庭で巻き割りに精を出す藤岡は、すでに400歳という、生物学的に有り得ない年齢に達しているにもかかわらず、痩せ細る兆しを全く見せない自分の腕を見て、ふとそんなことを思った。
老いないという悲しさ。
百三十歳辺りまでは、マスコミも「奇跡のアンチエイジングを体現する男」「その若さの秘訣に迫る!」「永遠の存在」などなど好意的な報道をしていたが、その報道も彼が160歳を超え、百戦連続KO勝ちでボクシングチャンピオンになった辺りから「死ねない悲しきDNAを持つ野獣」「若さへの異常なまでの執念」「もはや喜劇」「薬物使用か」などと、ネガティブで攻撃的な論調へ変わっていった。
元々俳優だった藤岡は、その高い演技力が買われて、ある番組のメイン出演者に選ばれた。
その番組こそ、「藤岡仁、探検シリーズ」である。
ティームを編隊し、秘境を探検し未確認生物を発見するという番組の内容上、危機迫る演技の出来る俳優が必要だったので、彼が抜擢された。
ティームの隊長として彼は出演し、その必要以上に真剣な演技と愛すべき人柄で日本中で絶大な人気を博した。
そんな彼もいまや長野の山奥に追われ、一人淋しく暮らすただのキワモノ。
「もう一度、吸血鬼チュパカブラを、そして伝説の野人ナトゥーを探すんだ!」
彼はそう叫んだが、もはや自分がその伝説の野人になってしまっているという悲劇。
それでも、それでも彼は望んだ、また隊長と呼ばれることを。
胸から熱い衝動が沸き起こる。
「やるんだ!やってる!やってやるおおおおああああああ!」

 意識を取り戻し、周囲を見回した彼は、自分のログハウスが全壊していることに気づいた。
「俺が壊したのか」
これで失うものは何も無くなった。
藤岡仁の第二の人生が今、大胆な形で幕を開けた。

       

表紙

インドの大女 先生に励ましのお便りを送ろう!!

〒みんなの感想を読む

Tweet

Neetsha