Neetel Inside ニートノベル
表紙

昨今の美少女恋愛シミュレーション(以下略
6thActress 陣内 千尋

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 陣内千尋は、表情には出しこそしないが、内心でかなり驚いていた。
 ナイフを持って、主人公の前に立ちはだかる。それは陣内が今までやってきた事のまるで逆の行為だった。
 陣内には傭兵の経験があった。そのいきさつは長く、また楽しい話でもないので割愛する。親がおらず、海外の傭兵部隊に育てられたという端的な事実のみ理解していればいい。陣内自身がそう思っていた。
 何度も命の危機に晒された事があったが、そのおかげでこの町に雇われる事が出来た。傭兵の本分は能力を生かした金稼ぎであり、この町はそれを実現するのに最適だった。陣内は、主人公のボディーガード兼ストーカー役を、2年に渡ってこなしてきた。
 いくらこの町が外から隔離されており、素性の明らかな者しか入れないとしても、それで絶対の安全が確保される訳ではない。長年の生活で気の違えた者がいるかもしれないし、主人公を人質にとって脱出を試みる無謀な者が出るかもしれない。よって、それらのイレギュラーを水際で食い止める存在が必要不可欠だった。そして陣内は、それにもっとも適した人物だった。
 ある時は同じクラスの生徒、ある時は設定上17人いる妹の1人、ある時は主人公の通学を常に一定距離を保って監視するストーカー。しかしてその実態は、異常なる愛情によって主人公の殺人を思い立ったヤンデレであった。……という幼稚な設定を考えたのは言うまでもなく上者名結衣である。
 そして電柱の影から沢渡が飛び出してくる。相対する2人は最初、互いに『見』に回った。まず、佇まいに違いがある。淀みや怯えといった類の感情が一切排除されている。相当な場数は踏んでいるはずだ、とそれぞれのお互いに対する見解はぴたりと一致していた。
 陣内は普通の制服に、刃渡り18cmのダガーナイフを武器として持っていた。よく使いこまれた、相棒のような存在。
 一方で沢渡は長袖の空手着に、下は袴。武器はなく、いや、素手が武器である。つまり戦力の差は歴然。
 しかし沢渡に全く策が無い訳でもなかった。刃物を相手にする事は事前に分かっていたし、対策を怠るほどの間抜けでもなかった。
 沢渡は、両腕に鉄製の『手甲』を仕込んでいた。昔の忍者や武士がしていた古典的な防具の一種である。肘の先から手首までを覆う盾のような役割を果たし、関節を圧迫しないので柔術に適している。手甲は胴着の下に装着してあり、非常に薄く、指先は出ているので敵からは手甲を仕込んでいるのは分からない。
 また、胴体の守りとして鎖帷子を着込んでいたが、これは最低限の物で、鎖骨から心臓、肺までを守るベスト型である。腰や両腕を覆うと、行動に制限が出る為、沢渡はこれを採用した。どちらも刃物には強いはずだが、実戦で使用した事はないので、どこまで耐久性があるかは分からない。
 ただし、これら準備はあくまでも『最悪の事態』を想定して用意した物であり、出来る事ならば活躍する瞬間が来ない事を沢渡は祈っていた。
 沢渡は陣内を見据えて、真剣に尋ねる。
「本当に、上者名に依頼された通りにやるのか?」
 若干の間を置いて、陣内は答える。
「曖昧な質問には曖昧な答えしか返ってこない」
 吸い込まれるような澄み切った声。沢渡は質問を繰り返す。
「……分かった。はっきり聞こう。これから主人公を殺す気なのか?」
「ああ」
 今度は即答した。
 沢渡は苛立ちを覚えていた。相手の正体が見えない苛立ち、そして人の命を軽々しく扱う上者名に対する苛立ち。それらを振り切るように、声を絞る。
「そうはさせない」
 
 ひとまず、沢渡は主人公を安全な位置に避難させる事を優先した。人ひとりを守りながら戦うのはハンデのような物だ。小さな声で、しかしはっきりと後ろに立っている主人公に言う。
「20歩後ろに下がれ。それで……」
「いや」と、聞き逃さない陣内が遮る。「その場所で見る必要がある。自分を守った人間が死ぬ所を」
 陣内は主人公を研究しつくしていた。その中から相沢搭子のケースを思い出して活用した。主人公は自分のせいで誰かが傷つくことを極端に恐れている。
 主人公の両足は、今実際に敵対し、命のやりとりを始めようとしている2人とは対照的に、小刻みに震えていた。2人の両足とはまるで別物と言ってもいいだろう。陣内の言葉がなくとも、逃げる事はできなかったかもしれない。
「逃げろ」「逃げるな」
 2つの言葉を同時にかけられた主人公は、どうしていいか分からずに、そこ佇んでいた。
 仕方ない、と沢渡は諦めた。まずはナイフを無効化し、完全に拘束する。そして気絶させる。そこまでやれば上者名も納得するはずだ。何も主人公の死を望んでいる訳ではあるまい。
 一方、陣内の思考は沢渡を前にして熱を帯びてきた。この町にきてからというもの、危機らしい危機には立ち会っていない。この町は管理された平和を保ち、そして主人公にアプローチする数多の女子は、次々に玉砕していくが恨みを持つ事はない。仮に持ったとしても、行動に移そうとする者はいなかった。それほどまでに、主人公の価値はこの町において非常に高く、かけがいがない。
 上者名に敵役を言い渡され、主人公を殺してもいいとの許可を得た時、内心で巻き起こった謎の歓喜の正体に気づき、陣内は内心でほくそ笑んだ。自分には常に、何かとの争いが必要だった。
「私は平和をもたらす為ではない。剣をもたらす為にきたのだ」
 陣内は福音書のお気に入りの一節を呟いてから、膨れ上がった攻撃衝動を行動に移した。
 沢渡は両腕の間隔を狭く取り、中段に構えた。陣内の初手は必ず、右からの斬りつけだと分かっていたから、それに対応した最も効率のよい構えを選んだ。
 2人の距離が一瞬して縮み、戦闘が始まった。
 陣内は、沢渡の予想通り右から大きく斬りつけた。沢渡がそれを左手の手甲で受け、すかさず右手で陣内の左肩を掴みにかかったが、すんでの所で後ろに下がられ、服の布に少しだけ触れた。
 もちろん、沢渡の反射神経が常人よりも遥かに速かったがゆえに出来た完璧な反応だが、事前に陣内の初手を特定出来たのは言うまでもなく大きい。
 沢渡には、陣内の初手が『右からの中段斬りつけ』であるという根拠がいくつかあった。
 大きく分けて以下の3つ。武器を持っているのは陣内のみ。であれば、戦況は陣内に有利に違いないので、陣内が最初からリスクを負う攻撃方法を選択する可能性は非常に低い。例えばナイフを投げつけたり、沢渡にタックルをしてその後ろにいる主人公を狙うというような行動は、失敗した時に失う有利が大きすぎる。また、そもそもナイフとによる攻撃いう物は斬るか突くかの2種類に分けられる。事前に陣内が沢渡についてどの程度の情報を得ていたかは分からないが、沢渡の見た目(胴着に袴)からして、格闘技を使う事は明らかである。よって、距離を保つのがベター。ナイフで攻撃できる最大射程は、『投げ』であるが、その選択肢がないのなら次にあるのは『斬り』である。
 更に、陣内は右手でナイフを持っていた。左手でも扱える可能性はあるが、だとしても初撃でそれは見せない。相手は見た目では胴着に袴の姿だが、何か武器を隠し持っているかもしれないし、中に鎧を着込んでいるかもしれない。いきなり手の内を見せるのは得策ではない。よって、一撃目は素直な攻撃が望ましく、首や心臓を狙うのは尚早。距離を保ちつつ戦闘における致命的ダメージを与えられる腕を狙うのが好ましい。
 これらの理由を総合して、陣内が右からの中段斬りつけ攻撃を選択する可能性が非常に高いと沢渡は判断、特定をした。
 もしも一撃目をこなした段階で、陣内の肩をしっかり掴めていたなら、すぐさま沢渡は陣内を組み伏せる事が出来ただろう。これが出来なかったのは、沢渡にとって非常に痛い。
 沢渡と同じように、陣内も攻撃後の沢渡の行動をある程度予想していた。しかし相手が格闘である以上、打撃にしても掴みにしても距離をとるのがまず間違いない。よって、踏み込みを甘めに、切っ先で切りつけるようにしたのが功を奏した。
 バックステップで一度距離をとった陣内は、背中で冷や汗をかいた。掴まれそうになった瞬間、確かな危険を感じたのだ。事前に上者名から、「達人クラスの相手を用意させてもらった」と聞かされていたが、ここまで速いとは考えていなかった。
「このナイフの刃は特別製で、肌を斬りつけると傷が塞がりにくいように出来てる。喉や心臓は文句なく即死だけど、腹に刺さっても死ねる。どう、怖くなった?」
 陣内が尋ねる。作戦を練り直す時間稼ぎ。沢渡は正直に答える。
「怖い。すごく」
 しかし構えは崩さない。
 主人公はただ後ろで佇んでいた。いまだに目の前で起きている状況が現実なのかどうか分からずに、しかし自分には何も出来ない事を理解して、ただ立って見ていた。それが精一杯だった。
 陣内は策を模索した。正攻法で戦っても、どうやら反応速度と腕力の戦いになる。それでは8割強しか勝てない。ナイフ対素手の戦いでは絶望的な数字だ。勝率は100%で無ければ意味が無い。
「それは、なんていう格闘術なんだ?」
「……沢渡流柔術」
 この質問にも沢渡は正直に答えた。どの道、先ほどの掴みかかる動作で柔術の類である事はバレている。
「なるほど。覚えておこう」
 そう言って、陣内は3歩後ろに下がった。策は既に練りあがっている。
 右手に持ったナイフを左手に持ち変え、逆手に持つ。もちろん刃は正方向に向ける。こうする事のメリットは、まず順手でナイフを持つよりも、相手から離脱する時に掴まれにくくなるという点。それから、刃の出る方向を手首で隠せるという点。
 それから、空いた右手を何度か開いて閉じてを繰り返し、感覚を戻しておく。抜け目の無い、プロのやり方。
 それに合わせて、沢渡も構えを変える。両腕を先ほど大きめに開き、やや上段に構える。掴むよりも上から落とし伏せさせるのに特化した構え。陣内がナイフを逆手に握った事に起因している。
 陣内は目を鋭く尖らせ、沢渡を見つめて呟く。
「……罪人は罪の奴隷なり」
 ヒュッと短い呼吸を1度して、陣内が突撃を仕掛ける。移動と共に姿勢を屈め、体重を下に持っていく。沢渡は焦る。軌道は分かりやすいが、肝心のナイフは完全に死角に隠れてしまっているからだ。
 沢渡は一瞬、距離をとろうとしたが諦めた。主人公は自分の僅か5歩後ろに立っている。これ以上この距離を縮めれば、主人公に危険が及ぶ。今いるこの場所で、何としてでも陣内の突撃をいなさなければならない。敵が武器を持って突撃してきた場合、それを捉えるのは非常に難しい。仮に服や体の一部をつかめた所で、そのままこちらの体勢が整わないまま絡みあえば、こちらが技を極める前に相手が武器で攻撃してくる。よって、ここは打撃一択。それも出来るだけ相手の推進力を消力させる打撃が好ましい。
 沢渡は数ある打撃からとっさに『膝蹴り』を選択した。理由は2つ。陣内の体の位置が低く、顔面へのクリーンヒットが狙える。そして袴による目隠しで、ギリギリまでこちらの攻撃の挙動が見えない。

 流れるような、素早い動きだった。沢渡の放った膝蹴りを喰らいながらも、ナイフで足を斬りにかかる陣内。沢渡はその手首を右手で押さえ、ナイフの刃側が外側になるように捻る。それと同時に、陣内は、沢渡の体勢を崩そうと、右手で軸足を捉えようとするが、袴の中でやや左側に傾き、あと少しの所で見失う。
 いくら陣内といえど、人体の法則には従わなければならない。捻ったままの手首を上方向に引っ張られ、肘関節、次いで肩関節の自由が奪われる。しかしナイフは決して離さない。肉体は沈み、沢渡が空いた手で背中を押さえつけると、ナイフを持っていない右手の稼動範囲も限られてくる。
 これら一連の動作は、ほんの一瞬の間に行われた。結果として残ったのは、左手を後ろに回し、関節を極められた陣内と、その背後に回り反撃を許さない沢渡。肉体にかなりの負荷がかかっていることは間違いないが、陣内は悲鳴をあげない。ただ一文字に口を結んで、顔だけを持ち上げて目の前の主人公を見た。
 再度、沢渡は主人公に声をかける。
「下がれ!!」
 ビクッと体を震わせた主人公は、その場に腰からへたれこみ、両手と両足を動かして体を引きずりながら後ろに下がった。ようやく、目の前で行われている戦闘が現実のものであり、しかも片方の少女は本気で自分の命を狙っていたという事に主人公は気づいた。未だ離さないナイフの刃の輝きは、紛れも無く本物だった。
 体をよじらせ、どうにか脱出を試みる陣内に、沢渡は一喝。
「暴れるな。折られたくなかったらな」
 陣内はぴたっとその動きを止める。く、く、く、という短い音を連続させる奇妙な声が零れたが、沢渡から表情は見えない。しかし主人公はそれを見ていた。陣内は、口を大きく開き、笑っていたのだ。
「汝の敵を愛し、汝らを責める者の為に祈れ」
 陣内はまた聖書の一説を呟くと、ありったけの力を込めて体を捻った。楕円軌道の右回転。当然、沢渡は掴んだ左手を離さない。となれば、必然的に関節は本来曲がるはずの無い方向に曲がる。いや、曲がるというよりは『抜ける』。
 生々しく痛々しい、聞くのすらも嫌な音。それが2,3回連続で鳴った。力を失った陣内の手からナイフが零れ、アスファルトに落ちた。
 沢渡は眉をひそめる。嫌悪と尊敬が入り混じった複雑な表情で、左腕がありえない形に変化した陣内を見据える。
 勝負は決したかに思われた。現に、沢渡にはもう戦う気がない。主人公は元から戦いなど望んでいない。よって、今この場においてまだ戦う気があるのは、ひどい怪我を負った陣内だけだった。
「……とどめは刺さないのか?」
 陣内は額から汗を流し、後ずさりをすながらそう尋ねた。勝負は既に終わっている。当然、沢渡は答えず、また追いかけようともしない。構えは崩さないが、ただ目で動きを追うだけ。
 沢渡が追い討ちをかけてこないのを確認してから、陣内は身を翻して走った。その先は十字路。陣内が出てきた曲がり角。
 逃亡。当然の事だろう、と沢渡は思った。感触では、左肩、左肘の2箇所を確実に脱臼している。手首もひどく捻ったので捻挫しているはずだ。
 陣内が角を曲がり、死角に入った。一瞬、沢渡の気が緩む。ギリギリではあったが、どうにか主人公も自分も無傷で勝利を収められたようだ。
 安堵したその直後、沢渡の視界に思いもよらない物が映った。
 十字路には大抵、カーブミラーが設置してある。それに、本来ならば塀が遮蔽になって死角にいる陣内が映った。走って逃げずに、座り込んでいる。沢渡は目を凝らす。ミラーに映る陣内の動きを読み取る。
 陣内は、死角を利用して手に応急処置をこなしているようだった。手首に片足を乗せて固定し、左肩を右手で押さえつけ、テコの原理を利用してはめ込もうとしている。
 沢渡は推察する。腕に応急処置を施し、自分を欺く為に一旦引いたのではないだろうか。自分がカーブミラーに気づかなければ、不意打ちを仕掛ける事だってできたはず。使えないはずの左手で攻撃をされればそれは心理的死角からの攻撃になる。武器は失ったとはいえ、警戒していないところからの攻撃は致命傷になりうる。
 そして少なくとも、陣内はまだ戦いを続ける気でいる。更に、勝つつもりでいる。
 沢渡は陣内の行動を止めに走る。左腕の使えない今のうちに対処するのがベスト。怪我人にこれ以上の攻撃を加える事は好ましくないが、気絶しない限り陣内が諦める事はないだろうと理解する。
 角を曲がり、陣内に沢渡が迫る。
 ……と、ここまでは全て陣内の作戦通り。
 陣内にはもう1つの切り札があった。
 制服の裏側に仕込んだ、小型のナイフ。先ほどのダガーナイフよりも刃渡りは遥かに短いが、人を刺す事は出来る。突撃はフェイク。怪我もフェイク。脱走もフェイク。治療もフェイク。あえてミラーで見られる位置でそれをする事によって、相手に『事前に相手の策を見破った』という錯覚を与える。全ては、後ろから近づいてくる沢渡に、振り向きざまの一撃で致命傷を与える為の布石だった。
 治療するフリをしながら、ナイフを取り出し、自らの体で隠しながら構えておく。
 隠しておいた爪を今まさに放たんとする陣内に、沢渡がこう声をかけた。
「私は……お前に近づかない」
 予想外の言葉に陣内は驚く。沢渡は更に続ける。
「だけど、お前がこちらを振り返ったらまっすぐに『これ』を投げつける」
 『これ』一瞬、陣内にはそれが何なのか分からない。投げられて困る物……すぐに答えは出てくる。先ほど自分が落とした、ダガーナイフに間違いない。
 迂闊だった。相手が本格の格闘家だとあなどっていた。例え武器を敵前に放棄した所で、それは使われないとたかを括っていた。陣内は自分の甘さを呪う。
「いいか、絶対に振り返るな。腕を治したら、まっすぐ歩いてそのまま病院に行け」
 陣内は込みあがってきた悔しさに堪えきれず、こう尋ねる。
「いつから気づいていた?」
 わずかな間をおいて、沢渡が答えた。
「……何がだ?」
「隠しナイフ。近づかないのはこれを警戒してるからだろ」
 隠しナイフ、陣内にとっては完全に予想外の物だった。
「……いや、近づかないというのは、それに気づいて言った言葉じゃない。お前が治療に専念出来るように言ったんだ。脱臼を無理やり戻すのは、少しでもずれると取り返しがつかないから」
 奇妙な静寂だった。戦闘の中でも、戦闘の外でも、いつでも2人は静かだが、それらとは違って、今まさに目の前にある静寂は、まるで言葉をド忘れてしまったような、間抜けな静寂だった。
 そして堰を切ったように、陣内が笑った。大笑いした。自分が大笑いしているのを初めて聞いた陣内は、左肩から右手を離し、それを宙に上げ、無抵抗の意を示しながら立ち上がった。
「私の負けだ。そもそも私は、脱臼の応急措置なんて出来ないからな」
 陣内はその後ひときわ大きな笑い声をあげた後、決して後ろを振り返らずに、ゆっくりと歩いていった。
 それを見送る沢渡の手には、何も握られていなかった。

       

表紙

和田 駄々 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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Neetsha