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誰にもわかる数学のはなし
【解説編】カオス

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1.現象と数学モデル


この世界で起こる力学現象は2種類に分類されます。
それは解析可能なものと、解析不能なものです。

《解析可能な力学現象》の例は、
ボールを投げる、振り子を揺らす、大砲を打つなどです。

それぞれ、《実験データ》を凝縮・洗練して得られた《数学モデル》が存在します。



対して《解析不能な力学現象》の例は、
台風の動向、大気の変動などです。

これらの現象はいくら《実験データ》を蓄積しても《理論》が得られません。
《実験データ》の圧縮が本質的に不可能なのです。
現象の《数学モデル》を得ることはできません。


大砲を打ったとき球がどこに落ちるか、
は《解析可能な力学現象》ですので簡単に計算できますが、

明日東京で昼に雨がふるか、
は《解析不能な力学現象》ですので計算できません。




2.初期値鋭敏性


解析不可能な力学現象の有名な特徴として《初期値鋭敏性》があります。


私が北へ向かって
仰角45℃、時速60kmhで野球ボールを投げる、
これは《解析可能な力学現象》です。
経験でわかるように、
仰角を44℃にしたり、投げる速さを59kmhにしても、
ボールの軌道はさほど変化しません。
《解析可能な力学現象》には《初期値鈍感性》があるのです。


対して《解析不能な力学現象》には《初期値鋭敏性》があります。



どういうことか。



まったく同じ地球を二つ宇宙空間に浮かべてみましょう。
パラレルワールドということです。

左の地球では
正午12時に東京で北へ《仰角45℃》で
風速10kmhの風をせんぷうきで起こす。

右の地球では
正午12時に東京で北へ《仰角44℃》で
風速10kmhの風をせんぷうきで起こす。



実験結果は


左の地球では
6時間後にシドニーで中心付近の最大風速80kmhの《台風》がおき、

右の地球では
6時間後のシドニーは《晴天》となった。







これが初期値鋭敏性です。

3.カオス

《解析不能な力学現象》のうち《初期値鋭敏性》のあるものは《カオス》とよばれます。





4.バタフライ効果

『ブラジルでの蝶の羽ばたきはテキサスでトルネードを引き起こす』
という比喩もあります。


2つのパラレルワールドの地球を用意し、
《今、ブラジルに1匹蝶がはばたいたか、いないか》のみの違いがあるとします。



12時間後、左の地球のテキサスは晴天。右の地球のテキサスはトルネードに見舞われた



地球の大気の流れはカオス力学系なので、
これはありえる話です。
蝶一匹のはばたきが地球全体に無視できない影響を与えたと言い換えても良い。


これを『カオス力学系ではバタフライ効果が観測されうる』とよく言います。

       

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