ルーリングワールド
第12ターン
【王様】結晶石タイル8枚 勝利まであと4ターン
かつての美貌は嫉妬と富に歪み、今や気品などこれっぽっちもない。サンパドレイグ王妃は、王が砦に出かけた途端に愛人を王宮に呼び寄せ、傍若無人にその欲望を満たしていた。女子のように繊細な顔つきの、媚を浮かべた優男達の笑顔に囲まれる王妃は至極満足そうに、民達から搾取した美酒に酔いしれていた。
無論、王妃がこのような大きな態度を取れるのには理由がある。
王妃はもともと、グリルテン国王の二女。言い換えてみれば人質のような存在だが、つい先日グリルテンからの要求を王が受け入れた事により、その上下関係は確かな物となった。
何かは分からないが、王は自分に隠し事をしている。王妃は数日前からぼんやりと考えていた。「わしの力によって、大事な資源をもたらす事が出来る」王は絶対的な自信を持ってこう言うが、果たしてそれは本当の事だろうか。少なくとも、私にはそうは見えない。この男がそんな大層な器の持ち主ではない事は分かりきっている。20年を共にしてきて、この男に感じる私の意見は一つ。
「あやつり人形……って所かしら」
口にしてみてその滑稽さに笑いがこみ上げる。男達がわざとらしく気を使いながら王妃を見上げる。
その時だった。玉座の間の方から、何か重い物がどしん、と落ちる音。――敵襲。まずはそう思ったが、それにしては玉座が落ちるまで兵達が何の反応も示さないのはおかしな事だ。ならば、兵士達が企てた反乱……。
普段ならば絶対に入る事など許されない王妃の寝室に、兵士の一人が飛び込んできた。
「王妃! 非常事態です! 突然、城内に魔物が現れました。ただいま、兵士達が取り囲んで事態の収束に努めておりますが、危険なのでここから退避を……」
王妃はローブを羽織り、兵士を睨みつける。
「わたくしは逃げません。今すぐその魔物とやらの下に案内しなさい」
兵士は息を飲み、答える。
「で、ですが……」
王妃は決めつけていた。兵士は嘘をついていると。だが、それが命取りになった。
王妃が髪をまとめ、最低限の宝石を身に纏い、侍女を連れて玉座の間にやってくると、数十人の兵士が武器を持ち、何かを取り囲んでいた。正確に言えば、「何か」ではない。少しだけだが、それは見えた。見えたが結局、「何か」が分からなかったのだ。
巨大な禿げ頭。それも真っ赤な。目を瞑って、一文字に結んだ口から牙が出ている。
「な、何よあれは……?」
王妃は立ち止まり、兵士に言う。兵士は汗だくになりながら答える。
「で、ですから、あれが先ほど申し上げた魔物です」
王妃に気づき、何人かの兵士が前を開けると、思わず王妃は後ずさった。兵士達の群れから頭一つ高いだけだと思ったその巨体は、あぐらをかいて座っている状態の物だったからだ。
全身真っ赤な巨躯と、腰には蓑。これまた巨大な棍棒を手に持っている。目を閉じているという事は、瞑想でもしているのだろうか。だがそんなに賢くは見えない。
「一体何をしているの……?」
誰にともなく王妃が訊くと、兵士の一人が言った。
「現れてからずっとあの調子で……」
王妃の顔に見る見る血が上り、怒りが破裂した。
「何をやっているのよ!? とっとと殺しなさい!」
兵士達がざわめく。顔を見合わせ、どうしたら良いかと尋ねあうが、当然答えは出ない。
「ですが王妃……王の許可がありませんと……」
「許可ならわたくしがするわ!」
今にも掴みかかりそうな勢いで王妃が叫ぶが、兵士達の中から我先にと怪物に突撃する者は出ない。それもそのはずだ。相手は得体の知れない化け物。どのくらいの力を持っているのか正確には分からないが、今自分達の手にある槍では敵わないのは馬鹿でも分かる。それでも、兵士達に王への忠誠心と犠牲になる覚悟があれば、無謀と勇敢を摩り替える事も出来たかもしれない。しかし現実はより冷静で、より賢い。いかに恐ろしい怪物とはいえ、無抵抗の相手に自ら攻撃を仕掛けようとする者は、今この場にはいなかった。
それを理解した王妃は、更に甲高く、頭に響く声で叫ぶ。
「しっかりしなさいあなた達! 何の為に給料を払っていると思っているの!? ここで死ぬのがあなた達の役目でしょう! 分かったらさっさと……」
王妃の背後で、ゆっくりと怪物が立ち上がった。大の大人2人分くらいの背があり、高い天井に頭がつきそうになっている。筋肉の塊のような身体を赤い皮膚が包み、その内に秘める膨大なエネルギーを強く感じさせる。開いた眼光は鋭く、牙は鋭利に尖っている。ずしん、と響く一歩を踏みしめ前に進むと、大地がいとも簡単に揺れた。
王妃は振り向き、その視線に気づく。
怪物は無言のまま、一歩一歩王妃に近づいていく。迫り来る程にその巨大さが目立ち、恐怖で足が震えて動けなくなる王妃。周りの兵士達もどうしていいか分からずただその様子を見守る。
「オマエ、ウルサイ」
怪物が口を開いた。それと同時に、その巨体からは想像できないような素早さで、王妃を掴み、そのまま一気に頭から丸呑みした。
ほんの数秒の出来事だった。そこにいた誰もが、目の前の光景を信じなかった。
「な、何かの間違いだ!」
と、誰かが叫んだ。「そうだ。間違いだ」と、誰かが同調した。
今、目の前で起きた事は何かの間違いである。いや、そもそも何も起きてなどいない。という認識が兵士達の間に瞬く間に広がった。
しかし元から兵士達は分かっていたのだ。怪物が現れた時から、こうなる事はある程度予想がついた。それでも皆が皆、口には出さないがこう思っていた。
「あの王と王妃の為に自分がむざむざと死ぬなど、まるで馬鹿げている事だ」
『速報! 魔王に魂を売った王。汚れた資源に未来は無い』
民衆の手にした新聞の見出しは陽気に踊っていた。実用化されたばかりの活版印刷を使い、大量の新聞を刷って、それを無料で王国中に配る財力がある人物など、数えるほどもいない。
この暴露の仕掛け人はグレン。そして狙いは見事に的中した。
民達の怒りがいよいよ沸点に達した。皆それぞれに武器を持ち、城を囲み、口々に言う。
「王を出せ! 説明をしろ!」「そうだそうだ!」
だが、今度は以前のように王が出てくる事は無い。王妃も死んだ。手の施しようがない。
話は少し戻る。玉座の間に突然オークが召喚され、あぐらをかいて座りこんだ場面。
いかに屈強な体と馬鹿力を持つオークといえど、人海戦術には勝てない。大量の兵士達に囲まれ、オークは半ば観念していたのだが、肝心の兵士達には一向に戦う意思が見られない。オークは目を閉じ、精神を集中させて、ネイファとの念力通信を開いた。元々知能の低いオークは、こうしなければ念力通信が出来なかった。
「オレヲ、ギセイニ、シタノカ?」
ネイファはオークの質問にはっきりと答える。
「そうだ」
「ナセダ?」
ネイファは少し考えた後、答える。
「それが必要な事だったからだ」
「ソウカ……」
兵士達のざわめきが強くなり、集中が乱れ、通信が途切れそうになる。どうにか繋ぎとめようと試みたが、突然現れたうるさい女の甲高い叫びで呆気なくかき消されてしまった。
オークは立ち上がり、何歩か進んで、女をひょいと捕まえる。唖然とする一同を尻目に、頭から一気にたいらげる。肉は贅肉だらけで美味くないが、装飾に使っていた宝石はこの上なく美味だった。
それもそのはず。元々は赤い結晶石から生まれたオークだ。赤い結晶石は宝石鉱山の元にもなる。思いもよらない属性の一致だった。
やがて一人の勇敢な兵士が、少しばかりの勇気を振り絞ってオークに突進した。オークはそれを片手で払いのける。兵士達が波を起こす。流れに逆らおうとする者などいない。
あっという間に巨大な胃袋で消化した宝石が、オークに力を与えていた。突撃してきた兵士の槍が腕に突き刺さったが、痛みは感じない。むしろ心地よいくらいだ。
オークは思う。ネイファの為に犠牲になるのは構わない。しかし自分も魔物の端くれ。ただただ人間共にやられっぱなしでは面子が立たない。
真っ赤な顔を更に赤くさせて、頭からは湯気が立ち上っていた。
どしん。真昼間、首都のド真ん中で、地面のひっくり返ったような音がした。
広場に集まっていた民衆全員が、一瞬で黙った。真に物を語るのは、言葉ではない。音でもない。ましてやオークのその見た目でもない。その場にいた全員が感じた空気の振動は非常に雄弁だった。ビリビリと、あるいはヒリヒリと肌を撫ぜる、異常で異様な気配。
取り囲む兵士をゴミのように払いのけるオークの猛突進。王妃を食う前よりも一回り大きくなっているのだが、兵士達から見れば3、4倍は大きくなっているように見えた。憤怒する赤い瞳。今にも爆発しそうな全身の筋肉。人が鶏の羽のように宙に舞う。
誰がどう見たって、「犠牲」には思えない。
民衆は悲鳴をあげ、広場から逃げた。その波に押しつぶされる人間も居た。混乱に次ぐ、大混乱。直接手を下さずとも、オークが吼える度に人が10人ずつ死んでいった。
一方その頃、首都北東の砦では王が頭を抱えていた。一応用心して、大事な魔王との契約書だけは持ち出しておいたが、まさか戻れなくなるとは思ってもみなかった。
首都での大惨事が伝えられるのは、夜になってからの事だった。
・赤のレベル5、赤のレベル6タイルを設置
かつての美貌は嫉妬と富に歪み、今や気品などこれっぽっちもない。サンパドレイグ王妃は、王が砦に出かけた途端に愛人を王宮に呼び寄せ、傍若無人にその欲望を満たしていた。女子のように繊細な顔つきの、媚を浮かべた優男達の笑顔に囲まれる王妃は至極満足そうに、民達から搾取した美酒に酔いしれていた。
無論、王妃がこのような大きな態度を取れるのには理由がある。
王妃はもともと、グリルテン国王の二女。言い換えてみれば人質のような存在だが、つい先日グリルテンからの要求を王が受け入れた事により、その上下関係は確かな物となった。
何かは分からないが、王は自分に隠し事をしている。王妃は数日前からぼんやりと考えていた。「わしの力によって、大事な資源をもたらす事が出来る」王は絶対的な自信を持ってこう言うが、果たしてそれは本当の事だろうか。少なくとも、私にはそうは見えない。この男がそんな大層な器の持ち主ではない事は分かりきっている。20年を共にしてきて、この男に感じる私の意見は一つ。
「あやつり人形……って所かしら」
口にしてみてその滑稽さに笑いがこみ上げる。男達がわざとらしく気を使いながら王妃を見上げる。
その時だった。玉座の間の方から、何か重い物がどしん、と落ちる音。――敵襲。まずはそう思ったが、それにしては玉座が落ちるまで兵達が何の反応も示さないのはおかしな事だ。ならば、兵士達が企てた反乱……。
普段ならば絶対に入る事など許されない王妃の寝室に、兵士の一人が飛び込んできた。
「王妃! 非常事態です! 突然、城内に魔物が現れました。ただいま、兵士達が取り囲んで事態の収束に努めておりますが、危険なのでここから退避を……」
王妃はローブを羽織り、兵士を睨みつける。
「わたくしは逃げません。今すぐその魔物とやらの下に案内しなさい」
兵士は息を飲み、答える。
「で、ですが……」
王妃は決めつけていた。兵士は嘘をついていると。だが、それが命取りになった。
王妃が髪をまとめ、最低限の宝石を身に纏い、侍女を連れて玉座の間にやってくると、数十人の兵士が武器を持ち、何かを取り囲んでいた。正確に言えば、「何か」ではない。少しだけだが、それは見えた。見えたが結局、「何か」が分からなかったのだ。
巨大な禿げ頭。それも真っ赤な。目を瞑って、一文字に結んだ口から牙が出ている。
「な、何よあれは……?」
王妃は立ち止まり、兵士に言う。兵士は汗だくになりながら答える。
「で、ですから、あれが先ほど申し上げた魔物です」
王妃に気づき、何人かの兵士が前を開けると、思わず王妃は後ずさった。兵士達の群れから頭一つ高いだけだと思ったその巨体は、あぐらをかいて座っている状態の物だったからだ。
全身真っ赤な巨躯と、腰には蓑。これまた巨大な棍棒を手に持っている。目を閉じているという事は、瞑想でもしているのだろうか。だがそんなに賢くは見えない。
「一体何をしているの……?」
誰にともなく王妃が訊くと、兵士の一人が言った。
「現れてからずっとあの調子で……」
王妃の顔に見る見る血が上り、怒りが破裂した。
「何をやっているのよ!? とっとと殺しなさい!」
兵士達がざわめく。顔を見合わせ、どうしたら良いかと尋ねあうが、当然答えは出ない。
「ですが王妃……王の許可がありませんと……」
「許可ならわたくしがするわ!」
今にも掴みかかりそうな勢いで王妃が叫ぶが、兵士達の中から我先にと怪物に突撃する者は出ない。それもそのはずだ。相手は得体の知れない化け物。どのくらいの力を持っているのか正確には分からないが、今自分達の手にある槍では敵わないのは馬鹿でも分かる。それでも、兵士達に王への忠誠心と犠牲になる覚悟があれば、無謀と勇敢を摩り替える事も出来たかもしれない。しかし現実はより冷静で、より賢い。いかに恐ろしい怪物とはいえ、無抵抗の相手に自ら攻撃を仕掛けようとする者は、今この場にはいなかった。
それを理解した王妃は、更に甲高く、頭に響く声で叫ぶ。
「しっかりしなさいあなた達! 何の為に給料を払っていると思っているの!? ここで死ぬのがあなた達の役目でしょう! 分かったらさっさと……」
王妃の背後で、ゆっくりと怪物が立ち上がった。大の大人2人分くらいの背があり、高い天井に頭がつきそうになっている。筋肉の塊のような身体を赤い皮膚が包み、その内に秘める膨大なエネルギーを強く感じさせる。開いた眼光は鋭く、牙は鋭利に尖っている。ずしん、と響く一歩を踏みしめ前に進むと、大地がいとも簡単に揺れた。
王妃は振り向き、その視線に気づく。
怪物は無言のまま、一歩一歩王妃に近づいていく。迫り来る程にその巨大さが目立ち、恐怖で足が震えて動けなくなる王妃。周りの兵士達もどうしていいか分からずただその様子を見守る。
「オマエ、ウルサイ」
怪物が口を開いた。それと同時に、その巨体からは想像できないような素早さで、王妃を掴み、そのまま一気に頭から丸呑みした。
ほんの数秒の出来事だった。そこにいた誰もが、目の前の光景を信じなかった。
「な、何かの間違いだ!」
と、誰かが叫んだ。「そうだ。間違いだ」と、誰かが同調した。
今、目の前で起きた事は何かの間違いである。いや、そもそも何も起きてなどいない。という認識が兵士達の間に瞬く間に広がった。
しかし元から兵士達は分かっていたのだ。怪物が現れた時から、こうなる事はある程度予想がついた。それでも皆が皆、口には出さないがこう思っていた。
「あの王と王妃の為に自分がむざむざと死ぬなど、まるで馬鹿げている事だ」
『速報! 魔王に魂を売った王。汚れた資源に未来は無い』
民衆の手にした新聞の見出しは陽気に踊っていた。実用化されたばかりの活版印刷を使い、大量の新聞を刷って、それを無料で王国中に配る財力がある人物など、数えるほどもいない。
この暴露の仕掛け人はグレン。そして狙いは見事に的中した。
民達の怒りがいよいよ沸点に達した。皆それぞれに武器を持ち、城を囲み、口々に言う。
「王を出せ! 説明をしろ!」「そうだそうだ!」
だが、今度は以前のように王が出てくる事は無い。王妃も死んだ。手の施しようがない。
話は少し戻る。玉座の間に突然オークが召喚され、あぐらをかいて座りこんだ場面。
いかに屈強な体と馬鹿力を持つオークといえど、人海戦術には勝てない。大量の兵士達に囲まれ、オークは半ば観念していたのだが、肝心の兵士達には一向に戦う意思が見られない。オークは目を閉じ、精神を集中させて、ネイファとの念力通信を開いた。元々知能の低いオークは、こうしなければ念力通信が出来なかった。
「オレヲ、ギセイニ、シタノカ?」
ネイファはオークの質問にはっきりと答える。
「そうだ」
「ナセダ?」
ネイファは少し考えた後、答える。
「それが必要な事だったからだ」
「ソウカ……」
兵士達のざわめきが強くなり、集中が乱れ、通信が途切れそうになる。どうにか繋ぎとめようと試みたが、突然現れたうるさい女の甲高い叫びで呆気なくかき消されてしまった。
オークは立ち上がり、何歩か進んで、女をひょいと捕まえる。唖然とする一同を尻目に、頭から一気にたいらげる。肉は贅肉だらけで美味くないが、装飾に使っていた宝石はこの上なく美味だった。
それもそのはず。元々は赤い結晶石から生まれたオークだ。赤い結晶石は宝石鉱山の元にもなる。思いもよらない属性の一致だった。
やがて一人の勇敢な兵士が、少しばかりの勇気を振り絞ってオークに突進した。オークはそれを片手で払いのける。兵士達が波を起こす。流れに逆らおうとする者などいない。
あっという間に巨大な胃袋で消化した宝石が、オークに力を与えていた。突撃してきた兵士の槍が腕に突き刺さったが、痛みは感じない。むしろ心地よいくらいだ。
オークは思う。ネイファの為に犠牲になるのは構わない。しかし自分も魔物の端くれ。ただただ人間共にやられっぱなしでは面子が立たない。
真っ赤な顔を更に赤くさせて、頭からは湯気が立ち上っていた。
どしん。真昼間、首都のド真ん中で、地面のひっくり返ったような音がした。
広場に集まっていた民衆全員が、一瞬で黙った。真に物を語るのは、言葉ではない。音でもない。ましてやオークのその見た目でもない。その場にいた全員が感じた空気の振動は非常に雄弁だった。ビリビリと、あるいはヒリヒリと肌を撫ぜる、異常で異様な気配。
取り囲む兵士をゴミのように払いのけるオークの猛突進。王妃を食う前よりも一回り大きくなっているのだが、兵士達から見れば3、4倍は大きくなっているように見えた。憤怒する赤い瞳。今にも爆発しそうな全身の筋肉。人が鶏の羽のように宙に舞う。
誰がどう見たって、「犠牲」には思えない。
民衆は悲鳴をあげ、広場から逃げた。その波に押しつぶされる人間も居た。混乱に次ぐ、大混乱。直接手を下さずとも、オークが吼える度に人が10人ずつ死んでいった。
一方その頃、首都北東の砦では王が頭を抱えていた。一応用心して、大事な魔王との契約書だけは持ち出しておいたが、まさか戻れなくなるとは思ってもみなかった。
首都での大惨事が伝えられるのは、夜になってからの事だった。
・赤のレベル5、赤のレベル6タイルを設置
【鍛冶屋】勝利まであと:3100G 作成した武器:妖剣ノイニモッド
酒場にて祝杯をあげるグレンと、グレン率いる革命軍。
和気藹々としたムードの中、勝利は確定的な物だといわんばかりに皆に笑顔が溢れていた。
しかし、有志の中にはグレンのやり方に異論を唱える者もいた。20そこそこの青年が、思いつめた表情でグレンの前に立つ。
「グレンさん、僕は……僕はあなたのやり方は間違っていると思う」
グレンの取り巻きは青年をじろりと睨んだが、グレンはあくまで笑顔で優しく尋ねる。
「どうしてそう思う?」
「あなたは僕達に無血革命を約束した。だけど、魔王を利用して玉座に魔物を召喚するのは、矛盾していないか? もしかしたら、敵の兵士が死ぬかもしれないじゃないか……」
グレンは頷き、答える。
「ああ、君の言う通りだ。だがね、元々魔王との契約をしたのは王だよ。そしてその死ぬかもしれない兵士も、王の為に死ぬ覚悟でその仕事についた。私はそれを利用させてもらっただけに過ぎない。火種を作ったのは王で、私はただそこに空気を送った。違うかな?」
青年は押し黙る。かろうじて、「だ、だけど……」と言ったが、その先は言葉にならない。
「私達鍛冶屋はね、自分で作った剣で刺し殺されても構わないという覚悟で鉄を打つんだよ。まあ、これは師匠の受け売りだがね」
グレンはそう言って、子供のように無邪気な笑顔を浮かべた。
それから少しして、広場での魔物による虐殺を知らせる第一報が届いた。
・赤のレベル3タイルを採取、-300G
酒場にて祝杯をあげるグレンと、グレン率いる革命軍。
和気藹々としたムードの中、勝利は確定的な物だといわんばかりに皆に笑顔が溢れていた。
しかし、有志の中にはグレンのやり方に異論を唱える者もいた。20そこそこの青年が、思いつめた表情でグレンの前に立つ。
「グレンさん、僕は……僕はあなたのやり方は間違っていると思う」
グレンの取り巻きは青年をじろりと睨んだが、グレンはあくまで笑顔で優しく尋ねる。
「どうしてそう思う?」
「あなたは僕達に無血革命を約束した。だけど、魔王を利用して玉座に魔物を召喚するのは、矛盾していないか? もしかしたら、敵の兵士が死ぬかもしれないじゃないか……」
グレンは頷き、答える。
「ああ、君の言う通りだ。だがね、元々魔王との契約をしたのは王だよ。そしてその死ぬかもしれない兵士も、王の為に死ぬ覚悟でその仕事についた。私はそれを利用させてもらっただけに過ぎない。火種を作ったのは王で、私はただそこに空気を送った。違うかな?」
青年は押し黙る。かろうじて、「だ、だけど……」と言ったが、その先は言葉にならない。
「私達鍛冶屋はね、自分で作った剣で刺し殺されても構わないという覚悟で鉄を打つんだよ。まあ、これは師匠の受け売りだがね」
グレンはそう言って、子供のように無邪気な笑顔を浮かべた。
それから少しして、広場での魔物による虐殺を知らせる第一報が届いた。
・赤のレベル3タイルを採取、-300G
【魔王】所持モンスター:ウーズ(黄1)×1 ウーズ(緑1)×1 オーク(青3)×1 オーク(赤3)×1
支配モンスター:ウーズ(黒1)×2 ワーム(緑4) デーモン(青5)
支配中の街:西
ようやく、長い間閉ざされていた北の街へ進む道が開いた。人気の無くなった宝石鉱山を、ネイファは威風堂々と歩く。
「ネイファ様、どうしてあの鍛冶屋との約束を守ったのですか?」
デーモンが不思議そうに問いかける。裏切りこそが悪だと言わんばかりに、ネイファのした行動に納得出来ない様子。
それもそうだ。同じ魔物であるオークを生贄にし、人間との約束はしっかりと守る。それでは悪の権化である魔王の仕事は勤まらない。いかに屈強なオークといえども、敵陣のド真ん中に送り込まれれば死は免れないだろう。二人とも、そう思っていた。
ネイファはしどろもどろになりながら答える。
「こ、これが私のやり方だからだ」
だが、デーモンは本当の理由を知っていた。
南の街の民達は、突如として上空に現れたデーモンに、届くはずもない石を投げたり、槍で突っつく動作をしながら威嚇をしている。そんな無力な人間達を見下ろしながら、デーモンは思う。
なぜネイファ様は、このような矮小な存在に恐怖し、悪夢まで見てうなされるのだろうかと。
・オーク1体を召喚 ワーム1体、デーモン1体、魔王を移動
支配モンスター:ウーズ(黒1)×2 ワーム(緑4) デーモン(青5)
支配中の街:西
ようやく、長い間閉ざされていた北の街へ進む道が開いた。人気の無くなった宝石鉱山を、ネイファは威風堂々と歩く。
「ネイファ様、どうしてあの鍛冶屋との約束を守ったのですか?」
デーモンが不思議そうに問いかける。裏切りこそが悪だと言わんばかりに、ネイファのした行動に納得出来ない様子。
それもそうだ。同じ魔物であるオークを生贄にし、人間との約束はしっかりと守る。それでは悪の権化である魔王の仕事は勤まらない。いかに屈強なオークといえども、敵陣のド真ん中に送り込まれれば死は免れないだろう。二人とも、そう思っていた。
ネイファはしどろもどろになりながら答える。
「こ、これが私のやり方だからだ」
だが、デーモンは本当の理由を知っていた。
南の街の民達は、突如として上空に現れたデーモンに、届くはずもない石を投げたり、槍で突っつく動作をしながら威嚇をしている。そんな無力な人間達を見下ろしながら、デーモンは思う。
なぜネイファ様は、このような矮小な存在に恐怖し、悪夢まで見てうなされるのだろうかと。
・オーク1体を召喚 ワーム1体、デーモン1体、魔王を移動
【勇者】武器レベル3 所持金:1600G
首都、それも中心から、強大な魔物の気配を感じた少年は、ファンクルを急がせた。
まだ傷は痛む。片腕では、手綱さばきもままならない。しかし少年とファンクルには、それを埋めても余りある絆があった。勢いに耐え切れず少年が落ちそうになると、ファンクルは自身の体重を移動してそれを防ぐ。少年は、失った物にむしろ感謝していた。
自分にもようやく戦う理由が出来た。義務でもなく、私欲でもなく、戦いの中で何かを失う事で、少年はこの世界に受け入れられていくのを感じていた。
・西へ移動
首都、それも中心から、強大な魔物の気配を感じた少年は、ファンクルを急がせた。
まだ傷は痛む。片腕では、手綱さばきもままならない。しかし少年とファンクルには、それを埋めても余りある絆があった。勢いに耐え切れず少年が落ちそうになると、ファンクルは自身の体重を移動してそれを防ぐ。少年は、失った物にむしろ感謝していた。
自分にもようやく戦う理由が出来た。義務でもなく、私欲でもなく、戦いの中で何かを失う事で、少年はこの世界に受け入れられていくのを感じていた。
・西へ移動