やれやれ。大変な事件だったみたいだね。ずっとハラハラしながら見ていたよ。
なんせ身体が完全に再生するまでは暇で仕方がない。それに、みんなのことが気にかかるからね。
ハンマー、リストレイン、アサシン、パラレル。どれも見たことのないメモリだった。ミュージアムの残したものはまだまだたくさんあるらしい。
しかし、どのメモリも実に興味深い。特にパラレルメモリだ。こんな特殊なメモリは初めて見た。
パラレルワールドに関する能力みたいだが、なかなか幅の広い使い方ができるようだ。
まず一つの能力として、自らの体内に攻撃対象の理想を反映した並行世界を作り出す。一つ目の時点ですさまじい能力だ。
世界そのものを自身の体内に生み出すのだからね。世界が完全に完成するのに七日間かかるとのことだが、僕からしたらたったの七日間だ。さらにそこへ人間を閉じ込めるというのだから恐ろしい。七日間経てば出られなくなるのだから翔太郎は本当に危機一髪だったようだ。
閉じ込められた世界で何があったのか、ぜひ翔太郎に聞いてみたいね。もしかしたらその世界の中にはもう一人の僕が存在したのかもしれないんだろう? 考えただけでゾクゾクするね。もう一人の自分と会話できたらさぞかし刺激的だろう。
これは二つ目の能力だと思われるが、実在する複数の並行世界へ干渉してそこから自分を連れてくるという荒技には驚嘆させられた。
あれは実際にどれほどの並行世界が存在するのか把握することができるのだろうか? この世界と並行世界の違いを認識することは? 自分以外の生物、あるいは物を連れてくることは可能なのか? 一つ目の能力のように他人を並行世界に連れていくことは? さらに自分が並行世界に行くことは?
適合率も関係してくるのだろうが、いったいどれほどの応用が可能なのだろうか。ああ、考えるときりがない……おっと、つい癖が出てしまったようだ。いったんスイッチが入ってしまうとこうだ。翔太郎たちもこれには苦労させられてきたんだろうね。
さて、今回の事件を一通り観察して思ったことがある。
翔太郎、やはり君はハーフボイルドだ。僕に対する未練があるのは嬉しいことなんだけど、もうちょっとしっかりしたらどうなんだい。
その弱みを付け込まれて、君は今回パラレルドーパントの術中に嵌ってしまったじゃないか。亜樹ちゃんもさぞかし心配しただろう。
その後は照井も敵に捕まってしまうしどうなることかと思ったよ。敵はまだ残っているのに戦える仮面ライダーがいないんだから。
でも、まさか亜樹ちゃんがあそこまで体を張るとは思わなかったよ。彼女の活躍が無かったら、どうなっていたことやら。
でも、流石に亜樹ちゃんだけでは危なすぎるからね。つい僕からも助け舟を出してしまった。そう、ファングに助けるよう指示を出したのは僕さ。
身体の半分以上が再生済みだからなんとかエクストリームメモリの中からファングに僕の意思を伝えることができたよ。
特に最後の戦いはギリギリだったね。見てるこっちも本当に負けてしまうのではないかとヒヤヒヤさせられた。
だけど翔太郎、あのときの戦い方はなかなか良かったよ。いつも見たいにがむしゃらに攻めるだけじゃなく、きっちり敵を分析しながら冷静に作戦を立てることができていた。まるで僕が君に助言しているかのようだった。
でも最後は危なかった。ファングが助けなかったら、あのまま負けていたかもしれないからね。
つまり翔太郎、君はまだまだ半人前。一人じゃ危なっかしくて見ていられない。
だから待っていたまえ。もうすぐ僕の身体は完全に再生する。若菜姉さんによって与えられたこの身体が。
だがもう少し時間がかかる。だからそれまで――
僕の“大好きな”街をよろしく。仮面ライダー左翔太郎!
~Fin~