第一話「こちら藤原探偵事務所!」
「あー、暇だ…」
俺の名前は藤原大助、人気の無い探偵事務所でしがない探偵をやっている。
その人気の無さは俺の実力不足もあるが、一番はその場所にあると思う… とにかくこの付近は人通りが少ないのだ。
依頼に来てもらう為にはまずその存在を知ってもらう事が大前提なのは言うまでも無い。
しかしそれすら敵わないこの状況… まあ、かといって駅に事務所を構えるだけの資金が無かったのだから仕方あるまい…。
そんなこんなでもうかれこれ3ヶ月は依頼が来ていない… そろそろ事務所の維持すら危うい状態なのである。
「…バイトでも探すかあ」
そう言うと俺はデスクに置いてあった新聞から求人広告を抜き取り、パラパラとめくり始めた。
「うーん、できるだけ人の目につかないような仕事がいいなあ、探偵業をやっている限り、公の場に姿を現せば誰に目をつけられるか分からないし…」
そして俺はそのまま10分間求人広告を眺めていた-----------
すると、その時だった
ルルルルルルルルルルルルルルル
デスクの上の黒電話が鳴った。
「きっ、きたあああああ!!」
3ヶ月ぶりの依頼の電話である。
俺は意気揚々と受話器を取り、元気溌剌な声で久しぶりに「いつも」の第一声を放った。
「はい、こちら藤原探偵事務所!」
俺はいつになく元気にそう言った、満面の笑みを込めて。
しかし、受話器の向こうからは何も聞こえてこない。
「もしもーし、何か依頼がおありですかー?」
俺は繋ぎとしてそう言った。
「……。」
しかし何も返ってはこない、だが俺はせっかくの客と思しき相手をなんとしても引き寄せたかった。
なんといっても3ヶ月ぶりの依頼である、ここで逃す訳にはいかない 俺はめげなかった。
「あのー、大丈夫ですよ安心してもらって 何か困りごとがあってお電話をくれたんですよね?僕でよかったら相談に乗りますよ?」
「……。」
しかしそれでも返事はない
なぜだ、わざわざ電話をかけてきて何もしゃべらないなんておかしいじゃないか。
そこで俺は薄々感ずいてはいたが、もしかするとこれはただのイタズラ電話なのではないか、という考えが浮かんできた。
くそぅ…なんだよ、ぬか喜びさせてくれちゃって。
そして俺がイタズラ電話の相手に一括しようとしたその時---------
「…た す け て」
!?
女性の、小さく、震えた、か弱い声が今確かに聞こえた。
俺はすぐさま反応した
「も、もしもし!何かお困りなんですね!?詳しくお聞かせください!」
「……。」
しかしまた無言になってしまった。
だが確かに今、この電話の主が俺に助けを求めているのは明らかだ、もしかしたら訳あって話辛い状況下にあるのかもしれない。
「もしもし、いいですよ あなたのペースで話してもらって」
「……。」
「……。」
「……。」
「殺 さ れ る」