Neetel Inside 文芸新都
表紙

宇宙裁判所
プロローグ

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「有罪!ギャラクシー銀河の惑星ニート星は破壊とする」
 サイ・バンチョの声が部屋に響きわたる。
「また、破壊か~。そんなにポンポン星を壊していいもんなんすかね~」
「たしかに、拙者らが仕事に就いてから悪い判例ばかりですのう。こちらまで気が滅入ってしまいますぞ」
 独特の喋り方で返事をするカンサイ・ジンと相槌をうつトウ・メイジンの二人。
「まあ、そういうな。私だって好きで星を壊しているわけじゃないんだ。全宇宙の秩序を守るためには悪い芽は早いうちに摘まねばならんのだよ」
「それに私だって悪い判決を言い渡すのはいい気分じゃないんだ。あまりいじめんでくれたまえ」
 サイ・バンチョはため息をつきながら返事をした。
「それはそうですけど、やはり星を壊すというのはいい気分がしませんわね。せっかく宇宙陪審員になれたのに星を壊してばかりのような気がしますわ。」
 バンチョに追い討ちをかけるようにバケラッタ・フジコが口を開いた。これにはさすがのバンチョも参った様子だ。
「わかった、わかった。次はなるべく秩序のよさそうな星を審査対象にするから、今日はもう勘弁してくれたまえ」
「む・・・バンチョ氏がそうおっしゃるなら今日のところはもう何も言うまいとしましょう。では私は部屋に戻らせていただきますぞ」
 そう言うと上着を手に取りトウ・メイジンは部屋を出て行った。
「さすがトウはやさしいのう。ジンもフジコも今日はそれでいいな!」
「はぁ~い」
「へいへいっと・・・」
ジンとフジコの二人もこれ以上バンチョを責めても無駄なだけとわかったのか、気のない返事で部屋を後にした。
「ふぅ~まったくなぜこんな仕事に就いてしまったのやら・・・。私だって今すぐにでもやめたいものだよ・・・」
再びため息をつきながらバンチョも独り言をいいながら部屋を後にした。


 宇宙には宇宙裁判所という機関があり、宇宙に点在する無数近くある星を監視し、定期的に星に訪れ星の様子を観察し、全宇宙の秩序のために、その星が無害なものか有害なものかを判断する組織なのだ。
 裁判所にもレベルがあり、全宇宙の統率を行うところが最高宇宙裁判所というところで、先ほどバンチョ達が喋っていたここは、第2中宇宙区域ギャラクシー銀河の太陽系に位置する太陽系第1裁判所である。バンチョ達は宇宙裁判隊で、バンチョ自身は宇宙裁判長である。トウ、ジン、フジコはそれぞれ最近宇宙陪審員に配属され、バンチョの隊に配属され、いくつかの仕事をこなしてきたところである。


「しかし、俺らごときの判断でそう簡単に星なんて壊していいもんなんかね~」
「いいんじゃないかしら?私達は私達の仕事をすればいいのよ。せっかく才能をもって生まれてきて、名誉ある仕事につけたんだからもっと楽しむべきだわ」
「そうですぞ。それに宇宙にとって無害な星や、有益だと判断された星は、恩賞を受けてさらに星としての発展をすることができるんですぞ」
一度部屋に戻ったジン達はどうやらジンの部屋に集まってお酒を飲みながら談笑しているようだ。
「まぁそらそうだけどよ~。知能を持つ生物がいて、更に、文明が栄えてて宇宙連盟に加盟している星はよ~宇宙の規約(ルール)がわかってるけどよ~、そうじゃない星は悲惨だとおもうぜ~?」
「そうはそうだけど、私達は裁く側にまわれたんだからいいじゃないのよ」
「そうですぞ!それに生物がいる星もいればいない星もいる。知能を持つ生物がいる星もあればそうではない星もある。宇宙の色々な星をまわれて拙者は幸せですぞ」
 お酒が進むにつれて議論がヒートアップしてくるが、これはいつものことである。
「拙者はもっと仕事をして出世し、早く上のレベルの裁判所へ配属されたいものですぞ!」
「やめとけやめとけ、銀河地方裁判所ならともかく、星間裁判所の配属になんてなってみろ、星同士の争いごとに巻き込まれるだけでなーんもいいことありゃしねぇぞ」
「お~い、お前たち~明日も仕事なんだし、そろそろお開きにしとけよー」
 議論がヒートアップしてきたところで、タイミングよくバンチョが声をかけにくるのもいつものことである。バンチョが来たら談笑タイム兼議論タイムはお開きなのだ。


 実は宇宙裁判所という機関のほかに宇宙連盟もあるのだ。宇宙連盟は全宇宙で一定以上の文明を持つ星が加盟する宇宙最大の組織で、知能を持つ生物が住む星である程度の文明をもつと、宇宙連盟から使者が現れ、宇宙連盟への加盟を要求されるのだ。加盟を拒否すれば宇宙連盟からの一方的な星の破壊や第1種繁栄種の殲滅などが行われるので、実質的に強制的に加盟しなければならない。
 第1種繁栄種とはその星において最も繁栄している生物のことである。例えば地球で言うところの人間である。

 彼ら裁判隊の仕事は、担当区域の星を訪れ一定期間滞在をし、星の内部の観察を行い、最高宇宙裁判所の定めたルールに則り話し合いを行って、その星が宇宙にとって有益か無益かを判断して罰や恩賞を与えることである。つまり、星が有罪か無罪かを判断するのだ。
 彼らが喋っていたように、生物のいない星を訪れることもあれば、知能を持たない生物しかいない星を訪れることもある。こういった星は大抵無罪となるのであまり問題ないが、問題なのは第1種繁栄種が知能を持つ生物であり、さらに宇宙連盟へ加入していない星だ。
 調査期間が来てしまうと宇宙連盟の加盟の有無に関係なく有罪、無罪の判決を決めなければいけない。
 しかし、こういった場合の対策として執行猶予なるものも定めており、執行猶予がつけば、宇宙連盟への加入までは罪を執行しないなどの措置がとられることもある。


 それでは小難しい話はこの辺にいたしまして本編へと移っていきたいと思います。名誉ある宇宙陪審員になったジン達の冒険をお楽しみください。

       

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