Neetel Inside ニートノベル
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わが地獄(仮)
ガソリンの夢

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 夏が来てからしばらく経ったが、少しも季節が変わりそうな気がしない。燦々と降り注ぐ太陽はアスファルトを焼き、路面は陽炎で揺らめいている。傾斜したビル群はいつ倒壊するのかわからない。砕けた窓ガラスにひっかかっている人骨が物悲しい。あれからどれだけ時間が経ったのか思い出せない。そもそも時間が経過しているのかどうかすらわからない。そんなことは理解もせず、俺はバイクを走らせている。大切なのは何も考えないことと、給油のタイミングだけだ。海がガソリンになってからしばらく経つが、世界で一番偉大なのはハンドポンプだ。それさえ海に突っ込めば、あとはいくらでも給油できる。13Lあれば3000kmは走れる。200km走って給油したっていい。気まぐれに進んでいけばいつか何かが変わるだろう。変わり映えのしない景色、崩壊した都市、見かけぬ人影。もう終わった世界で時計は意味を為さない。そんなことはない? そうかもしれない。雨は降るし埃は舞う。それを時間と呼んでもいいが、どこにもたどり着かずに揺らめき続けるものにいったいどれだけの意味が? いや意味なんて必要ない。俺がこうして走り続けていることにも意味はない。路面が続く限り俺は走る。星が丸みを捨ててずいぶん経つ。最初からそうだったのかもしれない。永遠に悪夢のように広がり続ける世界。どこまで走っても最初のところに戻ってきたりはしない。もうどこへも帰らなくて済む。進み続けることができる。元の木阿弥なんて言葉は終わった。俺が過ぎ去って捨てていった物は永遠に俺の足元に蘇ってきたりはしない。タイヤの熱と一緒におさらばだ。どこへでも消えていくがいい。記憶こそ人生だ。俺にはもうそれがない。何も思い出すことはない。走り続ける。一瞬先の路面を追う。それだけ


       

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