Neetel Inside ニートノベル
表紙

わが地獄(仮)
イライラする

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 なにかがうまくいっていない。それがなんなのかわからない。
 よくわからない焦りがある。何かがしっくり来ない。特に何もつらくない。
 手応えだけがない。
 つまらない。
 イライラして姪にあたってしまった。「お兄ちゃんが怒ってる」と泣いてしまったらしい。どう考えても俺が悪い。すまないことをした。
 無意味にイライラする大人が嫌いだったはずなのに。
 Arkをやってたら遊ぼうとせがまれ、やけくそで買ったFEエンゲージもうまく気が乗らない。せっかくだからやればいい。でも楽しくない。
 何が楽しくないのかわからない。
 だから映画を見た。天気の子を見た。見ているときにふと「これは夏の映画なんだから、夏に見るべきだったかもしれない」と思った。世の中はきっとそう考える。俺はいつも衝動的に動く。衝動性の中にしか自分が存在していない。
 冬に天気の子を見たっていいじゃねぇか。俺に逆らうならブッ殺す。
 そんな気持ちでありたい。
 映画を見ているうちに落ち着いてきた。実際に今も落ち着いている。やばかったのはさっきまで。つまらない現実に取り囲まれて、自分にしか実感のできない苦悩に苛まれる。人からしたらつまらないこと、それが俺にとってはどうしても重要だ。見過ごせないし、忘れられない。
 それを見過ごせて、忘れられるのは、なにか作品に触れている時、それも熱中したときなんだろうと思う。くだらない現実こそ虚構で、空想こそ真実。それを確信できるほど作品に没頭した瞬間以外に幸福なんてない。どんなにくだらない映画でもいい、熱中さえできればそれでいい。
 いい映画は毒だ。それしか見れなくなる。ちょっとやそっとじゃ満足できなくなる。
 現実を忘れたい。ゼロに戻したい。「この加速した世界を停止させる」と通勤しながらずっと反響している。俺はこの世界をストップさせたい。サーバーを停止させるみたいに。止まってしまえばいい。
 面白くないから。
 どこまでいっても手応えがない。バイクで走ってるときに、ふと何も考えず右にハンドルを切りたくなる。その先がどうなろうと構わない。そんな気分。
 何かが物足りない。
 何もかも捨て去りたい。
 永遠に寝ていたい。
 何も考えず、フラットに生きていけばいい。そう悪いものじゃない。それだけのことのはずなのに。
 イライラする。
 本当に、映画を見ることで、一種の麻酔のような効果があるらしい。唇に注射して感覚がなくなって分厚い肉の感触だけが残るように、苦悩の実態が薄れていく。だから俺はドラマが嫌いだ。ドラマはクリフハンガーを多用する。来週も見て欲しいから。ウォーキング・デッドなんて最悪だと思う。ぐちゃぐちゃやって、結局なにも残らない。誰が生きているかしか話題にのぼらない。
 映画にしろ、小説にしろ、瞬間的に完結するものはインスタントに「死」を体験できる。バツッと終わったらそれで区切り。後腐れなんかない。Cパートなんかくそくらえだし後書きなんか読む必要はない。死ぬから楽しいんだ。永遠に生殺しにされて、ぶら下げられた「真実」のニンジンめがけて走るなんて、それこそ給料欲しさに仕事しなくちゃいけない我が身を思い出すだけだ。胸糞が悪くなる。
 死ねばいい。死ねば楽になる。もう何も考えなくて済む。
 伏線なんてうんざりだ。そんなものほしくない。ハッピーエンドにつながるならまだしも、ハッピーとトラブルを往復させて揺さぶって、最後は投げっぱなしエンドなんて最低だ。投げっぱなしにも礼儀というものがあって、これを伝えたところでおまえは幸せになんかならんというのが確定している場合だけ投げっぱなしは許される。とりあえず区切って続編をつくる余地だけ残しておこうというのが一番ムカつく。主人公なんかみんなブチ殺しちまえばいい。その意思を継ぐものさえいれば、何人だって死んだって構わない。
 イライラする。
 俺は終わらせたい。何かを終わらせたい。それを感じたい。継続なんてクソ喰らえだ。努力も希望も灰に沈め。鬱陶しい。
 もっと麻酔が必要だ。俺の意識が朦朧とする作品がもっと欲しい。
 技巧的な作品じゃ満足できない。長期間たっぷり温められた伏線を開かれたって、待ちくたびれたイラつきしか感じない。もっとストレートにぶつけてほしい。悪なら悪で貫いて欲しい。セイブザキャットなんてクソ喰らえだ。まるで誰かが見てることを知ってるような顔したやつが猫を助けるシーンより、どこにも居場所がないやつが彷徨う瞬間のほうが価値がある。俺はそういう映画が見たい。
 この世界はどんどん俺をうんざりさせる。
 これからもずっと幻滅し続ける。
 それをどこかで、終わりにしたい。

       

表紙

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