Neetel Inside ニートノベル
表紙

わが地獄(仮)
神様のセオリー

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 犠牲者が必要だった。
 突然だが俺は神である。なに、ついにトチ狂ったかだと。冗談言うな。俺はいつだって正気だ。たとえボケたってなんとかやりくりのひとつふたつつけていくわい。
 で、だ。俺は最近、一人の人間とその一生を作ろうと思っている。ふふふ、人間を作ってはもてあそぶのが趣味の俺だが、この間ようやく長いことかかった仕事を終わらせて一息ついていたのだが、もう飽きた。次へ進もうと思う。
 ところであんた方は人間作ったことある? ない? ならやってみるといい。クセになってなかなか面白い。その時のコツについて俺からひとつ言わせてもらおう――ってのがこの稿の趣旨なわけ。
 俺も昔は厨二病でエターナルがフォースでブリザってたんだけど、人間作るときはそういうのはあんまやっちゃいけない。楽しいよ? すげー楽しいんだけど人間つくりのプロたる俺様からすると下の下だね。
 じゃあどうすればいいのかっていうと、犠牲者を作るのよ。
 まず最初にエタナってフォスってブリザってる人間の型をまァ一応はつくっとく。これがAタイプね。ここからそいつの人生を受精の瞬間から昇天まで作っていくのは時期尚早。何事も練習が必要でしょ? だからBタイプを作るってわけ。
 このBタイプが犠牲者なんだな。
 次に作るAタイプのために、このBタイプは徹底的に苦しめんの。それはもうひどい目にあわせる。その話が現代社会の大学生の話だったら無銭飲食の果てに公園で死んじゃったりとか、それぐらいひどいことをしなきゃ駄目。辛いかもだけど徹底的にやんの。これ、神様のセオリーね。
 要するに負け方ってのをBタイプから教えてもらうわけね。もしAタイプが負けたらどうなるのか? それを大切なAタイプにやらせるわけにはいかないから、Bタイプでよく勉強してからAタイプに反映させる。その頃にはBタイプの影響を受けてAタイプの型もいじりたくなっちゃって、Cタイプになることもある。それはそれでオッケー。俺たち神様ってのはよりよい人間を作るのが目的だからね。
 そうして出来上がったすばらしい人生ってのがこの世に誕生すれば、ま、犠牲になったBタイプどもも浮かばれるってもんじゃん? あの世は俺の管轄じゃないから知らないけどサ。
 でもねえ、たまにいるんだよね。どんなにいじめてもなんか知らないけど生き残っちゃうBタイプが。そんでもってこっちの予想もつかない行動に出てくんの。そういうのがいるとさ、Aタイプに浮気できないし、胸糞悪いBタイプの報われない奮闘ってのを見なきゃいけないから、こっちも辛いわけよ。なにも好きでBタイプいじめてるわけじゃないからさ。
 でもね、あんたもそのうち味わうと思うよ。本当にすげえBタイプってのが現れちゃうとさ、もうAもCもないんだよな。そいつが俺たちのやろうとしてたことやってくれちゃうんだよ。つまり、勝手に幸せになりやがる。それも俺たちからすれば全然不幸なのに、幸せそうにこっち見て笑ってくんの。超ぶきみだよ。でもそういうとき、俺思うんだよ。
 人間ってすげえって。







 終

       

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