Neetel Inside ニートノベル
表紙

賭博残虐王シマヘビ
臨界点

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蛇崎は崩れ落ちた。両膝が力を失って地を打ち、左腕を下敷きにしてコンクリートに倒れこむ。標本にされたような気分だった。身体のあちこちが熱した針で串刺しにされたみたいに、熱い。
返り血を浴びた少女ガンナーが蛇崎の額をポイントしていた。弾丸はあと一発残っている。
「ほんとうに悲鳴をあげないんだ……いいね、そういうの、いい。ぐっとくる」
蛇崎はぺっと痰を吐いたが、それは放物線を描いて落下しシマの顔を穢しはしなかった。
「ぐちゃぐちゃ股間でもほじってろ、ひとりぼっちのシマ」
「…………」
冷たい眼差しを血まみれの少年に注ぎながら、シマは撃鉄をあげた。
蛇崎は、そっと、下敷きにした左手で、脇腹をまさぐった。
テープを音がしないように引っぺがす。
秘密兵器は、闘う友達の専売特許ではない。
とっておきをくれてやる。
最後の力を振り絞って獣のように踊りかかり、蛇崎は、シマの腕に深々と注射針を刺し込んだ。血管も静脈も知ったことじゃなかった。
注入した。
前蹴りを喰らってコンクリートの壁にペーストされ、ずるずるとしりもちをつきながら、あの白垣が訪ねてきた日のように崩れ落ちながら、蛇崎は思った。
ケリはついてないといったはずだ。
ざまあみろ。おれは負けない。必ず勝つ。
そうでなければ生き残れなかった。そんなのは、天才じゃなくたって、みんなそうなんだ。
勝たなきゃいけないときなんか、おれたちにだってザラにあって、それを逃してばっかりじゃすぐ死んでしまうのなんか、当たり前なのだ。
おれは生きる。生き抜いてみせる。
たとえ不幸にまみれていようとも。
 シマは、腕を押さえてあとじさりしながら、その美しい頬に汗を浮かべていた。じきにその身体には脂肪を分裂増殖させる薬品が駆け巡るだろう。
「やるじゃん……」息も絶え絶えにシマは、友達に向けるような気の抜けた笑顔を見せた。
「ここまでされたら……さ」びくん、と身体が一度、大きく痙攣する。顔色がどんどん青ざめていく。
それでも、シマは笑う。きっと怖いくせに。泣きたいくせに。
それでも、シマは闘う。心臓を踊らせて、一瞬の閃光になにもかも投げ込んで。
ここまでされたら、
「――負けてらんないって、思っちゃうじゃん!」



自分の腕に、シマは銃口をあてた。
トリガーに指をかけ、


なにもかも静かになった。

       

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