ほとほとに疲れ果て家に帰った俺は、鏡を見て
今日のことを後悔した。
「うわっ、見れば見るほどねぇわな。」
サングラスを取り、はげた自分の頭皮を撫でる。
「むむっ、でも触り心地はなかなかいいな。」
初めてのスキンヘッド、初めての感覚。なにかに目覚めそうな俺が
そこにはあった。
「いけね、日課を忘れるところだった。」
水で顔を適当に洗うと俺は自室にある亡くなった妻の写真に
挨拶するのが日課なのだ。
「お前が居なくなってもう七年経つな。俺変わったようで変わってないぞ。」
妻の慰霊はここにはない。そりゃそうだ、大切な娘を俺のせいで亡くしたんだ。
相手の父親には勘当され、もう顔も合わせることすらできない。
「俺やっと前に進めそうだよ。がんばるな。」
吉良楓、彼女の顔が過った。亡くなる前に妻が言った言葉。
「私がいなくても、悲しまないでね。貴方は貴方の道を進めばいいの。」
その言葉の意味がいまになってようやく飲み込めるようになった。
「俺は俺の道を行くよ。美樹。」
立ててあった写真立てを静かに倒すと俺は、上着を羽織り情報収集に街へと
行くことにした。
藤堂が去り際に渡した紙袋には、困らないようにとカツラが入っていた。
「あいつ気をきかしたつもりか…。」
だがないよりましだ。このままだと誰がどうみても警察官には見えない。
俺はカツラを装備した。街のショーウィンドーでカツラ姿を確認してみたが
思ったより似合っていて、若返った感じだ。
「髭も剃ったからな。うむ、なかなかいい感じじゃないか。」
道行く人々の視線が痛くなってきたので早々と退散。
「あぶね、あぶね。不審者に思われるところだった。」
さて、一段落ついたところで情報収集といきましょうか。
「鳳凰会、西新宿のオフィス街のど真ん中にビルがあるはずだ。さてどうやって
探るかな。」
警察です、なんていったらお話しにならない。とりあえず困ったのでたけぼうに
連絡をしてみた。
「たけぼう、俺だ。鳳凰会のビルになんとか入れる方法はあるか?」
少し待ってと言われたので少し待った。
「うん、あることもないよ。」
「あることもないよってなんでそんなに曖昧なんだ?」
「あそこは一般人は入れないけどね。特別会員なら入れるんだ。」
「その特別会員にはどうなればなれるんだ?」
「お金を積むんだよ、それも巨額な額。たしか吉良グループの社長も会員なはずだよ。」
なんてことだ、俺にはそんな金はない。どうしたものか。
「どうしようか悩んでるね。身近にいい方法があるじゃない。」
まさか藤堂か?
「たしか今回の依頼人の楓さんも会員のはずだよ。聞いてみたら?」
なるほどだからあることもないよと曖昧だったのか、聞いてみるか。
「わかった。ありがとう。」
「健闘を祈るよ!」
電話が切れると俺は楓に連絡をすることにした。
マーキング!
02_繋がり道しるべ
「もしもし、楓か?俺だ。増田だ。」
「あら、増田さんどうしたの?依頼に息詰まったとか言わないわよね。」
流石、楓と言うべきか鋭い観察眼だ。
「ああ、まあそんなところだ。」
「はぁ、やっぱりね。私に電話してくるていうことはそんなとこだと
思ったわ。」
呆れた声が返ってくる。
「頼まれごとなんだが、鳳凰会って知ってるか?」
「知ってるもなにも、私そこの特別会員よ。それがどうかした?」
「実は今回の依頼絡みでなそこで情報が欲しいんだ。なんとか入れる方法はないか?」
「うーん、ないこともないわよ。でもなぁ…そうなるとなぁ…。」
どうも歯切れが悪いご様子。
「なんだなんだ。そんなに難しいことなのか!」
ついつい声を荒げてしまった。
「わわっ、ちょっといきなり怒鳴らないでよ!分ったわよ!方法はね。ゲストという
形で入るの、ただしそれは親族者に限るのよ!」
なに、ということはそういうことか。
「俺が楓の夫という形になれば入れるということか?」
「そっそうよ。だからちょっと困ってたの!」
ははーん、なるほどな。可愛いところもあるじゃないか。
「別に今になるか後になるかお前は俺のもんになることには変わりはないんだ。
いいんじゃないか?」
「ちょっと!それどういうことよ!―――はぁ、でも仕方ないか…依頼絡みなんでしょ。」
「そういうことだ。というわけでよろしく頼む。」
「もうっ!本当に強引すぎるわよ!準備が整ったら藤堂にでも迎えに行かせるからそこ等辺で
待っときなさい!」
ガチャッ、一方的に電話を切られた。だが俺は不謹慎だと思っても楓と会えることに胸を
躍らせていたりした。
「あら、増田さんどうしたの?依頼に息詰まったとか言わないわよね。」
流石、楓と言うべきか鋭い観察眼だ。
「ああ、まあそんなところだ。」
「はぁ、やっぱりね。私に電話してくるていうことはそんなとこだと
思ったわ。」
呆れた声が返ってくる。
「頼まれごとなんだが、鳳凰会って知ってるか?」
「知ってるもなにも、私そこの特別会員よ。それがどうかした?」
「実は今回の依頼絡みでなそこで情報が欲しいんだ。なんとか入れる方法はないか?」
「うーん、ないこともないわよ。でもなぁ…そうなるとなぁ…。」
どうも歯切れが悪いご様子。
「なんだなんだ。そんなに難しいことなのか!」
ついつい声を荒げてしまった。
「わわっ、ちょっといきなり怒鳴らないでよ!分ったわよ!方法はね。ゲストという
形で入るの、ただしそれは親族者に限るのよ!」
なに、ということはそういうことか。
「俺が楓の夫という形になれば入れるということか?」
「そっそうよ。だからちょっと困ってたの!」
ははーん、なるほどな。可愛いところもあるじゃないか。
「別に今になるか後になるかお前は俺のもんになることには変わりはないんだ。
いいんじゃないか?」
「ちょっと!それどういうことよ!―――はぁ、でも仕方ないか…依頼絡みなんでしょ。」
「そういうことだ。というわけでよろしく頼む。」
「もうっ!本当に強引すぎるわよ!準備が整ったら藤堂にでも迎えに行かせるからそこ等辺で
待っときなさい!」
ガチャッ、一方的に電話を切られた。だが俺は不謹慎だと思っても楓と会えることに胸を
躍らせていたりした。