Neetel Inside ニートノベル
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もし学校がテロリストに占拠されたら
対テロリスト?戦

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 四条河原洋介はこの状況において恐らく唯一冷静な人間であったであろう。
 智久の妄想癖を知る数少ない友人である彼は、荻野が凶弾に倒れた時も、智久が窮地に立たされている様子にも一切動じず、ただ冷静にこの場の状況を分析していた。
 それは彼が中学生活を喧嘩と隣り合わせに生きてきた事が大きく起因しているのかもしれないが、単純に、彼が頭脳明晰であった事が尤もな理由だと思われる。
(妄想に花を咲かせ過ぎて、視力まで花咲かせた馬鹿はほっておくとして……)
(普通に見ればこの状況、確かにテロリストが学校を占拠した構図に見える)
(しかし……あまりに奇妙な点が多過ぎるな)
(大体いくら今日の日本の政治が堕落しているとはいえ、個人の実生活に強い影響を受けない限り、人は批判やデモ行為はしてもテロ行為にまで発展するなんてまずないだろう)
(もし過激派いたとすれば考えられなくもないが……あっても暴動が限界だろう)
(それに、智久に絡んでいるあの男、荻野を殺した時に一丁前にデザートイーグルなんて使っていたが、あれを片手で撃つなんて明らかに銃の扱いに慣れてない証拠だ)
(現にバランスを崩していた。……だが、荻野を躊躇なく殺したんだ。あいつがテロリストである可能性は必ずしも無いとは言えない)
(……しかし、もう一人の男はどうだ)
(教室に入ってから一度も銃を取り出していない、それどころか荻野が殺されてから明らかに挙動不審だ、目の前で人が殺されてビビるテロリストなんているのか?)
(……だが、もしそうだとすれば、この構図は大きく変わってくる事になる)
(試してみる価値はある、か)
 洋介は智久に絡んでいるテロリストが自分に背を向けているのを一瞥すると、自分の列で携帯を回収しているもう一人のテロリストが自分の所に来た事を確認する。
「お、おい、持っている携帯を早くだせ」
「……」
 それに対し、彼は黙って言われた通りに携帯を渡し――
 ――たように見えた次の瞬間、彼はテロリストの腕を強く引っ張り、大勢を崩したテロリストは、その次の瞬間には自分の腕が痛みを伴う方向に曲げられ、そしてさらに、こめかみには銃が突き付けられてしまっている事に気づく。
「おい! そこのオッサン! 相棒さんの命が惜しかったら降伏しな」
「くっ、くそ……! おっ、おい……! 助けてくれ!」
その言葉に智久から携帯を回収しようとしていたテロリストが、覆面越しからでも分かるほど、苛立ちにも似た、非常に不快そうな顔で洋介の方を睨み付けた。
「……あ? おいおいおい、ガキが何舐めた真似しちゃってくれてんだ? お前、今自分がどういう立場にいるのか分かってんのか? もし、お前みたいな正義面したクソガキ1人で何とかなる立場だと思っているなら、それは随分とおめでたい脳をしちゃってるぜ」
「へぇ、ならさっさと俺を殺せばいいじゃないか、少しでも不審な動きを見せたら容赦なく殺す、とかほざいていたよな? そういう事ならさっきから俺がしている事は不審な動きどころか、豪快な動きになってしまうぜ」
「言うじゃねぇかクソガキ!ならお望み通りぶっ殺してやるよ」
「おっおい! 止めろ! 俺に当たったらどうするつもりだ!?」
 洋介によって作られた予想外の展開に教室は俄かにざわつき始める。それに対し、洋介は少し焦ったが、それでも顔色一つ変えずに淡々とテロリストに対し言葉を発し続ける。
「この相棒さんの言う通りだ。たださえ扱い慣れていない銃だっていうのに、その技量でこの距離を、さらには的は随分と小さいときたもんだ。いくらお前が三下みたいな糞野郎でもどうなるかぐらいは分かるよな? いやまあ勿論、この相棒さんごと纏めて殺してしまえばわざわざそんな事を考える必要はないのだが……、果たしてお前にそれが出来るかな?」
「てんめぇ……」
「おっ、おい……、頼むから馬鹿な真似はよせよ、俺が死んだらお前だって死――」
「おい! 余計な事を喋ってんじゃねぇ!!」
「そうか、テロリストが学校を占拠したにしては、どうにも納得のいかない点が多いと思っていたが……、どうやら俺の予想は大方間違っていなさそうだな、お前らが中々のカスコンビで助かったよ」
「いっ、言わせておけば……」
 智久側にいるテロリストは形勢を逆転された事に加え、自分より遥か年下の高校生に明らかに見下されている事に感情を抑えきれなくなっているのがはっきりと洋介には分かった。
 いや、違うのだ、実はそれもまた彼の予想通りであり、怒りの矛先を自分に向けさせる事で、その間に、形勢が逆転している状況に気づき、冷静さを取り戻した生徒達が地面へ伏せたり、少しでもテロリストから離れる時間を稼いでいたのであった。
 勿論、それで生徒達の安全性が大幅に上がった訳は無いのだが、そうする事によってこの状況を突破出来る算段が、彼には僅かながらあったのであった。
 しかし、この期に及んでも、彼はそれを実行出来ずにいた。
 それはこの状況に1人だけ適応出来ない者がいたからである。明坂詩織だ。
 荻野が殺される瞬間を生徒の中で唯一、その目で間近で見てしまった彼女は、心的外傷――トラウマを負ってしまっていたのである。
 例え状況が有利に置かれていても、根底に植えつけられた恐怖は取れないのだ。
 それも最悪な事に、テロリストのすぐ側で、有ろう事か立ち竦んでいたのだった。
 生徒達は自分の命が最優先の気持ちからか、誰も彼女に声をかける事はしなかった。
 だから言って、洋介が叫べば当然、テロリストに気づかれる事となる。
 実の所、彼らは優位に立っている訳では無かったのだ。
 そして不安は現実のものとなり、彼の算段は脆くも崩れ始める。
 無論、それは智久側のテロリストが詩織の存在に気付いた為、それも、怒りと焦りによって浮き足立ったいた彼は、冷静な判断が出来ず、詩織の存在に気付いたと同時に、銃口を彼女に向け、引き金を引こうとしていた。
「チクショウ!」
 洋介もそれに対し、即座に銃口をテロリストに向けるが、狙いが定まらない。
頭の中では偉そうな事は言っても、一端の高校生が銃を扱った事などある訳ないのだ。
「く、くそ……!」
「フハハッ、フハハハハハハハハハハァ!! おんんん!!!」
 そして次の瞬間、荻野がそうであったように、膝から崩れ落ちるように倒れたのであった。
 詩織ではなく、テロリストが。
 主に、股間を抑えながら。
 そして、その崩れ落ちたテロリスト後ろには、智久が不服そうな顔で立っていた。
「おい、俺の世界の主人公はお前じゃないぞ、この糞モブ野郎」
「はっ、三下テロリストに銃向けられただけでう○こちびってるような平和ボケの権化が主人公の世界だと? どこの糞ゲーだよ。運ゲー過ぎてクリア出来ねーわ」

       

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