Neetel Inside ニートノベル
表紙

紅月の夜
6夜目 開戦(後)・敗北・これじゃもう戻れないじゃないですか!!

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翠「待てええぇぇぇぇ!!」
十紀人「待てるかあああァァァァ」

俺は今公園に向かって全速力で走っていた。
後ろからは翠が全速力で追いかけてくる。
翠が俺に付いてきたということは白雪は楓と1対1のようだとひと安心する。

翠「伸びろ!!」
十紀人「ぎゃああぁぁ!!」

翠は持っている棒を伸ばして俺を攻撃してくる。
俺はなんとか防御障壁を使って避けて再び走りだす。
公園まではまだ距離がある。
出来れば翠をまいた後に行きたいが百鬼の声色からすればそんな時間はないと考えられる。
それに今まいてしまったら翠が楓のところに戻ってしまう可能性の方が高い。

翠「くそっ!逃げ足だけは早いんだな!!。」
十紀人「褒めてもら得てるのかな?」
翠「褒めてない!!」
十紀人「ぎゃああぁぁ!!」
翠「また避けられたか」
十紀人「あぶねぇ~。・・・・あと少しか。」

そうこう話しているうちに道の先に公園の出入口が見え始める。
どうやら決着はまたこの公園のようだ。
粋と戦った時もこの公園だった。
この公園にはなにか因縁があるのかも知れない・・・。
突如、俺の中から何かが消えゆきそうな感覚がする。

十紀人「なん・・・だ。」

胸が苦しくなり俺は立ち止まった。
最初に思い描いたのは百鬼と白雪だ。
なぜかはわからない・・・。
ただ無性に彼女たちのこと気になるのだ・・・。

十紀人「だ、大丈夫だよ・・な。」
翠「なっ!!いきなり止まるなあああぁぁぁ!!」
十紀人「え?」

後ろを振り返ると目の前には翠の体があった。

十紀人「おっ!!」
翠「きゃああぁぁ!!」

翠とぶつかり、絡みあうように地面を転がりながら公園の中に入る。

十紀人「いてててて・・・。!!」

俺は目の前にある物を見て硬直した。
それを見たら誰もが固まり凝視してしまうだろう。
それは男として当然のいや、人として当然のこと、致し方ないといっていいだろう。うん。

翠「痛たたたぁ~・・・ん?」

翠も今の状況に気づいてしまった。
俺は恐る恐る顔を上げると翠は口をパクパクとさせて声にならない声を出しているではないか・・・。
そして目と目とがあってしまったのだ。

翠「なななななななな!!!」
十紀人「えぇ~っとなんと言いますか・・・これは不可抗力というやつでして・・・」

読者の皆様に今の俺達の体制を説明しようではないか・・
俺たちぶつかり絡みあうわけだ。
目の前には翠がいるわけだ。
翠の格好はスカートでまたを大胆に開いているわけだ。
その股の間に俺の顔をがあるわけだ。
ここまで言えばお分かり頂けたと思う。
そう・・・俺の目の前にはなんとも可愛らしい緑色のボーダーが入った縞々バンツがあるわけなのだ!!
そして俺はピンチなのだ・・・。

翠「お前という奴は!!」
十紀人「まって!!さっきも言ったがこれは不可抗力で!!」
翠「問答無用だ!!」
十紀人「ぎゃああぁぁぁ!!」

あぁそりゃもう殴られたね・・。力一杯殴られたね。

十紀人「いてええぇぇ。」
翠「自業自得だ。」

翠は腕を組みながらそっぽを向いてそういった。
頬を真っ赤にして目に涙が少し溜まっているのが見て取れる。

翠「・・って私は何をやっている。どうもこいつといると調子が狂う・・・。」

翠は肩をガックリと落としてため息を漏らした後に俺を睨み見て再び口を開く。

翠「道明十紀人。大人しく私たちと一緒に来るがいい。その方が楓お姉様も喜ぶ・・・。」

そう言った翠の顔はどこか悲しさを帯びていた。

十紀人「わかった。付いてくよ」
翠「え?」

俺の返答が予想外だったのだろう。
翠は間の抜けた返事を俺に返す。

十紀人「ってちょっと前ならそう言えただろうな・・。けど、今は無理だ。俺には守るべきものが出来たからな・・・。俺はあいつらの側を離れたくない。」
翠「・・・そうか。なら、無理やりにでも来てもらまでだが。」
十紀人「なら、全力で来い。そう簡単には捕まってやらねぇぞ。」
翠「っふ!望むところだ。はああぁぁぁぁ!!」
十紀人「防御障壁!!」
翠「馬鹿の一つ覚えだな!!」
十紀人「そうでもないさ。」

翠は振り上げた棒をまっすぐに俺に向かって振り下ろす。

十紀人「爆!!」
翠「なっ!!」

翠の棒が当たる寸前で俺は防御障壁一気に生命力を送り込んで暴発させる。
あたりには煙が舞い上がり十紀人と翠の姿を包み隠す。
俺は煙から飛び出した。
どうやら煙幕作戦はうまくいったようだ。

十紀人「よし、早く粋と合流しないとな。」

十紀人はその場から走り去る。
煙が収まり視界が開けていく。
その場には既に十紀人の姿はなくただひとり翠が佇んでいた。

翠「不覚だ。まさかこんな幼稚な技にひかかるなんて・・・・。くっそ!!」
・・


粋「はぁ~はぁ~はぁ~」

粋は木上に登り隠れながら体を休めていた。

粋「っく!!」

体は傷だらけで至る所から血が滲み出している。
黒川を行かせてから随分と時間がたったように感じる。
あれ以上黒川を戦わせるわけにはいかなかったのだ。
黒美への攻撃はすべて彼女の操る影で無効されてしまう。
しかも影は変幻自在で黒川の大幻影も一瞬で消されてしまった。

粋「やっぱり・・。一人であの子の相手は厳しいねぇ。」

木の影からちらっと黒美の方を見る。
黒美はあたりを見渡して粋を探しているようだった。

粋「ここからなら・・・。」

粋は左手に持っている弓を構えて弦を引く。

粋「矢を精製・・・形状の固定・・・。」

そう唱えると弓と弦の間に矢が現れる。

粋「動かないでね。」

そしてゆっくりと狙いを定めて手を放す。
矢は一直線に黒美へと向かって行く。

黒美「影。・・・見つけた」

矢は黒美に当たる直前で影に粉々にされる。
そして矢飛んできた方向から黒美に粋の居場所がバレてしまった。

粋「まったく厄介な影だよ。」

粋はすぐに枝先から飛び降りて黒美と距離をとろうとする。

黒美「もう・・・かくれんぼ・・・あきた・・影。」
粋「っく!!」

影が逃げようとする粋の前に回り込む。
前には影、後ろには黒美が粋を挟むように立っている。

黒美「お前の・・・コアデバイス・・・貰う。」
粋「万事休すってところかなぁ。」

額から頬に掛けて嫌な汗が流れる落ちて行くのがわかった

黒美「・・・やれ」

黒美の合図で前方にいた影が粋に迫り来る。
後退しようとするが疲れから足がもつれてその場に倒れこんでしまう。

粋「しまった!!」

すぐに起き上がろうとしたが影の攻撃は粋の眼前に迫っていた。
粋はすかさず防御をとろうとする。。

十紀人「させるかよ!!」
黒美「!!」

攻撃が粋に当たる直前で視界から影が消え去る。
それと同時に拳を振り下ろした十紀人の姿が粋の視界に飛び込んで来た。
黒美は急にお腹を押さえてその場にしゃがみこんむ。

粋「十紀人!!」
十紀人「またせたな。」
粋「まったく絶妙なタイミングだよ。狙ってるのかい?」
十紀人「正義の味方は遅れて登場するもんだ。」
粋「はははは。」
十紀人「ひどい傷だな。大丈夫か?」

十紀人はボロボロの粋を見てそういった。

粋「問題ないよ。
黒美「油断・・・した。」

黒美がお腹を抑えながらゆっくりと状態を起こして粋や十紀人を見る。
そして再び黒美の横に影が浮かび上がる。

粋「十紀人のおかげで少し相手のことがわかったよ。」
十紀人「ん?」
粋「彼女のが操っている影のことだよ。あれは僕や黒川が攻撃しても歪むだけで消滅しなかった。だけど十紀人の攻撃を受けたら消滅したんだよ。」
十紀人「どういう事だ?」
粋「十紀人は攻撃の時に何をしてる?」
十紀人「生命力を拳にためて打ち込む・・・!!。なるほど。」
粋「そう。あの影は生命力でコントロールして具現化させているみたいだね。そのため通常の攻撃はきかないけど、生命力を打ち込む事によってコントロールが乱れて消滅してしまう。しかも、影のダメージが直接本体のダメージになるって言うおまけ付きでね。」

そう言って粋がお腹をさする黒美を方を見る。

十紀人「ってことは俺があの影を相手すればいいってことか」
粋「物分りがよくて助かるよ。僕は本体を叩く。」
黒美「怒った・・本気で・・・行く。POSシステム・・起動・・・第二ゲート・・・100%解放・・・・・安定・・覚悟・・する。行け・・・影。」
粋「来るよ。」
十紀人「任せろ!!」

襲いかかってくる影を俺が飛び出して相手をする。
影の攻撃を防御障壁で受け止め抑えこむ。

十紀人「粋!!」
粋「まかせて!!」

粋は俺の横をすり抜けて黒美の方へと向かう。

黒美「予測・・・済み・・分離・・・影は・・一つじゃ・・・ない」
粋「っく!!」

粋の目の前に別の影が現れる。

十紀人「任せろ!!はああぁぁぁぁ!!」

俺は捨て身で粋の目の前の影に体当たりをする。

黒美「消去」
十紀人「っく!!」

攻撃が当たる直前で影が消えさる。
俺はそれに対応できずに勢い余ってその場に転倒する形となった。
しかし粋はその一瞬の隙を見失わなかった。
俺を飛び越えて黒美の目の前に迫っていた。

粋「これでチェックメイトだね。」
黒美「つめが・・・甘い・・・影」

黒美の後ろからまた別の影が現れる。

粋「えっ!っぐは!!!」

影からの攻撃を粋はもろにくらってしまう。

十紀人「粋!!」
黒美「お前・・・油断・・・しすぎ」

立ち上がる俺の後ろには影がいた。

十紀人「かはっ!!!」

攻撃を延髄にくらい意識が遠くなる。

十紀人「す・・・い・・・・」

目の前が真っ暗になり俺はその場に倒れこんでしまった。

黒美「・・・回収・・・する。」

なんとか意識を保とうとするが揺れる脳がそれを許してくれない。
薄れ行く意識の中で黒美がゆっくりと粋に近づいて行くのが見え俺は意識失った。
・・


???「起きろ人間。」

薄い意識の中で俺は誰かに呼びかけられる。
俺はこの声を知っている。

???「起きろと言っている。」

俺の頬に柔らかい物が触れる。
意識が戻り徐々にきてぼやけていた視界がはっきりとしてくる。

十紀人「ここは?」
???「意識の中だ。」

俺は声のする方を見る。
そこには懐かしい真っ黒の姿にカギ尻尾の猫がいた。

十紀人「クロ・・・なのか?」
クロ「あぁ私だ。いや桜と言ったほうがいいのかもな。・・・久しいな。」
十紀人「なんでお前が・・・。」
クロ「なにを言っている。私はずっとお前の中にいたぞ。そして桜もな・・。」
十紀人「そうなか・・・前から疑問に思っていたんだけどお前と桜姉ちゃんは同じ物なの?」
クロ「似て非なるものだな。私は桜であって桜でない。桜は私であって私ではない。」
十紀人「わかんないよ。」
クロ「ははは、私もだ。それよりこんなところで時間を潰していていいのか?」
十紀人「!!。早く起きないと!!」
クロ「さっさと目覚めろ。そしてみんなを守ってやれ。」
十紀人「おう。こんどまたゆっくり会えるか?」
クロ「会いたいものだな。」
十紀人「会えるさぁ。だってお前は俺の中にいるんだろ?」
クロ「ふふふ。そうだな。これを持って行け。」
十紀人「ん?」

クロは口に加えていたペンダントを俺に渡してきた。
蒼色に輝いて見ていると吸い込まれそうだ。
しかし、このペンダント見覚えがある。

クロ「それは生前桜が付けていたものだ。」

クロに言われて思い出した。
たしかにいつも桜姉ちゃんの胸元でこの石が輝いていた気がする。
桜姉ちゃんの瞳の色と同じ輝きで・・・。

クロ「さぁ行け。人間。」
十紀人「おう。終わらしくるよ戦いを・・。またな」
クロ「あぁ。」

意識の中から徐々に十紀人の姿が消えていく。

クロ「いいのか会わなくて。最後になるかも知れいのだぞ。」
桜「うん・・・会いたくなかったかというと嘘になるけど・・・今あったら決意が揺らぎそうなの。」
クロ「そうか・・・中に入ってわかったが人間の潜在的な生命力は異状だ。」
桜「私もそう思うよ。私たちが支えれるものではなかったみたいだね。」
クロ「人間は直感的に私たちが壊れないように制御していたのだろうな。」
桜「十紀人くんはやさしいから・・・。」
クロ「そうだな。しかし・・・これからは人間とって厳しい現実になるだろな」
桜「大丈夫だよ。きっと乗り越えられるよ・・・十紀人くんは強いから。」
クロ「そうだな。私も同意しておこう。」
桜「最後に大仕事が残ってるね」
クロ「あぁ、開放してやろ人間の潜在能力を・・・。」
桜「じゃぁ行こうか。」
クロ「あぁ。」
桜・クロ「さようなら・・・十紀人。運がよければまたお話しようね」
・・


十紀人「ん・・・いててて。」

意識が覚めると後頭部に痛みを感じる。
俺は周りを確認するが既に粋と黒美の姿がない。
さっきの意識の中での出来事はただの夢だったのだろうか・・・。
いや、俺の左手中にあるこのペンダントが夢でないことを物語っていた。
あまり石には詳しくないが確かスターサファイアと言われるやつだ。
月の光を当てると石の丸い中心に6条の線が現れる。
それが星の様に見えることからその名が付いた石だ。
確か石言葉は信頼、幸運だったか・・・。

十紀人「信頼、幸運・・・か。桜姉ちゃんらしいや。」

俺は立ち上がりペンダントを首にかけて走りだした。
この戦いを終わらせるために・・・。
・・


黒美「そろそろ・・・降参・・・する?」
粋「それは無理は話だね。」
黒美「なら・・・痛い目・・・みる。」
翠「黒美!!」
黒美「・・・ん?」

黒美が粋に攻撃をこう得ようとすると誰から黒美に声をかける。
そうして一人の少女が現れて黒美に近づいていく。

翠「すまない。十紀人と見失ってしまった。」
黒美「翠か・・・いい・・・対象は・・・あっちで・・・寝てる。」
翠「そうか。なら後で回収しておく。それより・・・」

その少女は粋の方を見て睨みつけてきた。

赤「翠、そんなに睨んだらかわいそっスよ。」
楓「お待たせしました。」
翠「赤に楓お姉様。」

彼女たちの仲間が続々と集まり始める。
その中に楓の姿があることに粋は気づいた。

粋「やっぱり・・嫌な予感は当たるものだね」

楓はこっちを見ている粋をまっすぐに見て口を開いた。

楓「粋さん。終りにしましょう。貴方の仲間はすべて私たちが倒させていただきました。これ以上の抵抗は無意味です。大人しく私たちに付いてきてください。」
粋「そんなこと出来ると思ってるのかい?」
楓「既に旧デバイスである。黒川、白雪、百鬼、3機の破壊が終わったと言っているのです。今頃は政府の処理班が残骸を回収していると思われます。」

楓は背筋が凍りそうになるほど冷たくそう言い放った。

粋「彼女たちが??」
粋『黒川!!答えて!!黒川!!』

黒川に意識通信を飛ばすが黒川からの返事をなかった。
粋の内心を察したように楓が口を開く。

楓「おわかりいただけたと思います。貴方達がどれだけ抵抗したところで政府の力には勝てないのですよ。」
粋「君たちは何が目的なんだ・・・。」
楓「私たちの目的は日本の武力向上です。」
粋「そんな事のために・・・そんな事のために多くの犠牲を払ったというのか!!」
楓「そんなことではありません。それに犠牲を払ってしまったからこそ今更止まることなんて出来ないのです。犠牲なった人たちのために・・・。」
粋「詭弁だ!!君たちは自分たちがしていることを分かっているのか!!」
楓「分かっています!!でも私たちには力が必要だったんです!!例え・・・犠牲を払ってしまったとしても・・・。」

楓は何かを訴えるように言い放った。

楓「私たちはこうするしかなかったのです!!」
粋「君たちはちゃんとコアデバイスの事について理解しているのかい?コアデバイスはね何をするのも生命力を必要とする。でも生命力の供給に適用した人からではないと命の危険に関わる代物・・・言わば諸刃の剣なんだよ。君たちが確保している生命力の供給者の中には適用していな人も含まれているだろ!!」
楓「力がなくては生きて行けないんです!!・・・私は望んで力を手に入れました。この力のお陰で私の世界は変わった。弱い自分から生まれ変れたんです。」
粋「君をそこまで追い詰めているのはなんなんだ。」
楓「貴方に、語る必要はありません。・・・私はもう既にたくさんの罪を犯してしましました。今更後には引けないんです。それが私が犯した罪への償いです。」
粋「なにを言っても無駄みたいだね・・・。2つだけ聞かせてくれるかな?」
楓「なんでしょうか」
粋「十紀人に近づいたのは命令なのかい?」
楓「命令であったことは否定しませんが例え命令が無くても私は十紀人さんとお近づきになったでしょう。」
粋「そうかい。それを聞いて安心したよ。じゃぁもう一つ黒川、百鬼さん、白雪さんのコアデバイスは破壊したかな?」
楓「いえ、戦闘不能しただけですが・・・今頃は政府の人に」
粋「残念だね。彼女たちはコアデバイスを破壊しない限り死ぬことはない。それなら僕にはまだやらなければならないことがあるんだよ。」

粋はそう言って静かに武器を構える。

楓「なぜです!!戦力の差は誰が見てもわかります!!なのになぜ拳を握るんですか!!」
粋「僕は強くあり続けたいんだよ。力があるのが強さかい?誰にも負けない武力が強さかい?いいや、そんなのは強さじゃない。目の前に自分より強大な力があったとしてそれに屈服ことがない強い意志。自分の正義を貫く通すこと。どんな力にも屈すること無く立ち向かえるのことこそ本当の強さだと僕は思う。」
楓「貴方は怖くないんですか!?」
粋「怖いよ。怖いけどそれ以上に僕は友達の笑顔を無くすほうが怖い。」
楓「・・・・・粋さん」
粋「僕は自分の正義を信じている。君も自分の正義が正しいと思うならそれを貫いたほうがいい。僕は黒美「もう・・・面倒・・・。」

大人しく聞いていた黒美が一瞬で粋の前に来る。
粋はそれを避けようとするが後ろから現れた影が粋の手足を拘束して身動きがとれない状態にする。

黒美「影・・・」
粋「いつの間に!!」
楓「黒美、なにを・・・」
黒美「これで・・・第一任務・・・完了」
粋「っぐ!!!」

黒美は勢いよく粋の腹部に指先を突きたる。

粋「ぐあああああぁぁぁぁぁぁ!!」
黒美「五月蝿い・・・。」

黒美の指は徐々に粋の腹部へとめり込んでいく。
粋の悲鳴があたりに反響する。

楓「黒美!!やめなさい!!」
黒美「任務・・・コアデバイスの・・・回収・・・対象の生死は・・・とはない。・・・あった。」

そして黒美は勢い良く手を引きぬく。

粋「がはっ!!」

粋の口から血が吐き出される。
そして、腹部からはおびただしい血が地面へと流れ落ちる。
黒美の手には血に染まったコアデバイスが握られていた。
影が拘束を解除すると粋は力なく地面に倒れ込む。

黒美「次・・・任務・・・十紀人の・・・回収。」
楓「私はこんなこと望んでは・・・こんなこと・・・」

楓はその場に座り込む。
その様子を見た翠は黒美の胸ぐらを掴み上げた。

翠「貴様!!楓お姉様の命令をなぜ無視した!!楓お姉様はやめろといったのが聞こえなかったのか!!」
赤「翠!!やめるっスよ!!」

翠を赤が押さえにかかるが赤が胸ぐらを放すことはなかった。

翠「答えろ!!黒美!!」
黒美「任務を・・・遂行・・・したまで・・・・私の・・・マスターは・・・お前や・・・楓じゃ・・・ない」
翠「貴様ああぁぁ!!」
赤「落ち着くっスよ!!たしかに黒美はやりすきっスけど今仲間同士で喧嘩しても意味ないっスよ!!」
翠「離せ!!赤!!私は!!私は楓お姉様を悲しませる奴は許さない!!」
黒美「五月蝿い・・・・ん?」

黒美は誰かがこちらに近寄ってくる気配を感じる。
・・


十紀人「どこ行きやがった?」

あたりを見渡すが戦闘らしい形跡はあるが人影が見えない。
耳を済ませると人の話し声が聞こえて十紀人そちらの方に足を進めた。

十紀人「ここか。ん?」

公園のひらけたところに出たとき俺は目を疑った。
その光景は、血まみれになった粋が地面に倒れていて、さっきまで戦っていた黒美という女の子の手には血まみれのコアデバイスと思われるものが握られていた。
そしてその周りには翠と楓ともう一人翠を抑えこんでいる女の子がいる。
ただ分かることは粋があの黒美にやられてしまっているということだ・・・。
死んでるか生きているかはここからではわからない。
ただ自分の中で何かが壊れそうなそんな感覚が襲いかかってくる。
そして自分の中のどす黒い怒りの感情が湧き上がる。

十紀人「粋になにをした・・・・。」
黒美「対象・・・確認・・・探すてま・・・はぶけた。」
楓「十紀人さん!!」

楓は十紀人の姿を確認して驚きの顔を見せる。

十紀人「粋に何をしたああぁ!!」

俺の叫んだ声に彼女たちが一瞬怯むのが黒美だけは冷静に十紀人を見ていた。

十紀人「何をした・・・何を・・・・」
黒美「対象を・・・戦闘不能にして・・・連行する。」
楓「黒美!!」

黒美が俺に向けて駆け出す。

十紀人「何を・・・何を!!!」
クロ『そのまま解き放て人間。』
十紀人「うおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

俺の中の何かが壊れる音がする。
刹那。
衝撃波が起きて向かってきた黒美がそれによって跳ね飛ばされる。
そして十紀人周りからオーラの様な物が漂う。

黒美「!!」
楓「これは!?」
黒美「ありえない・・・・生命力が・・・具現化・・・してる。」
翠「なんなんだ。これは!?」
赤「すごい生命力っス。一人の人間がこんなに生命力があるのはありえないっスよ。」

十紀人がゆっくりと歩き始めて粋の元に近寄っていく。

十紀人「・・・・」
粋「・・・・」

十紀人は粋を抱き抱えてそっと傷口に手をかざすと傷口がゆっくりを塞がっていく。

楓「傷口が・・・。」
翠「生命力を使って無理やり細胞を活性化させていのか?」

傷口がふさがると十紀人は地面に粋を寝かせて楓たちの方を見る。

十紀人「粋をこんな目に合わせたのは誰だ。」
黒美「私・・・任務の・・・ため。」

黒美は立ち上がり十紀人の方を見ながらそういった。

十紀人「そうか。」

十紀人が静かにそう言って口を閉じる。
刹那。
十紀人は一瞬で黒美の横に移動して拳を振り上げる。

黒美「っく・・・影」

黒美は影で防御をするが今の十紀人の前では無意味に等しかった。
十紀人の拳は影を破壊して黒美の腹部を殴りつける。

黒美「がはっ!!」

黒美は吹き飛ばされその後苦しそうにお腹を押さえてその場に丸くなる。

赤「黒美が一撃で・・・。やばいっスよ!!今の私たち勝てる相手じゃないッス!!撤退するッス!!」
十紀人「逃がさない。」
赤「え!?」

いつのまにか赤の背後に回りこみ十紀人が赤に背中にそっと手を載せる。
刹那。

赤「きゃああああぁぁぁぁぁ!!」

赤はけたたましい叫び声と共にその場に倒れこむ。

十紀人「次はお前たちだ。」

十紀人はゆっくりと楓と翠をみてそういった。

翠「楓お姉様。お逃げください。こいつは私が抑えます。」
楓「私は・・・私は・・・」
翠「楓お姉様!!」

翠は楓の肩を揺らすが楓は力なくその場に座り込むだけだった。

翠「クソ!!どうすれば・・・。」
十紀人「覚悟しろ。」

拳を振り上げて一歩一歩ゆっくりと翠たちに近づいていく。

???「ごめんなさい。」

突如、十紀人の背後に黒尽くめが現れて十紀人に当て身を打つ。

十紀人「っぐ!!」

十紀人は気を失い黒尽くめの腕の中に倒れこむ。

翠「何者だ!!」
???「反対派と言えば貴方には通じるでしょうか。」
翠「政府の者か。」
???「ここは引いてください。あとの処理は私たちがします。」
翠「十紀人をこちらに渡せ。それで任務はすべて完了する」
???「できかねます。おに・・・この方は反対派の唯一の鍵となる人です。」
翠「いいのか?そんなことをすれば・・・。」
???「構いません。それにあなたひとりで私たちに勝てるとでも?」

そう言い終わるとと周りからぞろぞろと同じ黒尽くめが姿を表す。

???「貴方達が確保していた、生命力の糧も底をつきかけていますよね?これ以上の戦闘はお互いのためになりません。」
翠「それがどうしたというのだ。」
???「まだわかりませんか。見逃してあげると言っているんですよ。」
翠「っく。」

黒尽くめはそう言って翠を睨みつける。

楓「もういいの翠。ここは引きましょう。」

楓はそっと構えを取る翠の服の裾を力なくつかむ。

翠「楓お姉様!!」
楓「作戦は失敗です。翠はみんなを連れて戻ってください。私は殿を努めます。」
翠「しかし!!」
楓「お願い・・・これ以上は・・・」
翠「・・・・わかりました。」

翠はすぐに黒美と赤を打き抱えてその場を去る。
楓は静かに十紀人を抱える黒尽くめを見つめた。

楓「静さんですね。」
???「・・・・」
楓「まさか貴方が反対派なんて皮肉なものですね。」
???「私は、お兄ちゃんたちさえ巻き込まなければ動くつもりはなかったです。」

そう言って黒尽くめは頭巾を取る。
そこに現れたのは静だった。

楓「いつからですか?こんなに早く貴方が部隊を動かせるとは思いません。」
静「はじめから警戒はしていました。確信を得たのはあなたとぶつかったときです。」
楓「やはり、目を見られていました。」
静「はい。日本人の目が赤色になるわけは一つを除いてありませんから・・・。」

楓は前髪を分けて赤色の瞳で静を見る。

静「楓さん。貴方なら止められたのではないですか?」
楓「ごめんなさい。私にはその勇気は持てなかったみたいです。貴方達が思っているより賛成派の勢力は超越しております。私はそれに負けてしまった。それに今となっては戻ることも許されません。時期に反対派はすべて駆逐されるでしょ。願わくばこの街・・いや、この国からお逃げになることを」
静「お兄ちゃんを甘く見ないでくださいね。きっとすべてをひっくり返してくれますよ。」
楓「・・・・」
静「では、私たちも引かせてもらいます。」

静は仲間と思われる黒尽くめたちに指示を出して十紀人と粋を連れてその場を去っていた。
一人取り残された楓は力なくその場にしゃがみ込む。

楓「私は・・・私は・・・・」

楓の目から涙がこぼれ落ちる。

楓「私はこんなことをしたかったわけじゃない!!なのになんで!!すべてが終わったらお戻れると思ったのに・・・。これじゃもう戻れないじゃないですか!!」

楓の声はただ虚しく公園に響き渡る。
こうしてこの戦いは俺達の負けで幕を閉じたのだった。
・・・
・・

       

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