Neetel Inside ニートノベル
表紙

紅月の夜
10夜目 最終・決着・正義の味方よ!!俺を助けてくれえぇぇぇぇ!!

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長い間このエレベータに乗っている気がする。階数が徐々に増えていくのを俺は黙って眺めていた。
しばらく待っているとエレベータが大きく揺れる。上で戦いが始まったのだろうか・・・。
エレベータは地下30階で止まってゆっくりと扉が開く。
扉の向こうには薄暗い廊下が先まで伸びていた。
エレベータから俺が降りるとすぐにドアがしまりエレベータは上へと向かって行った。
機械のオイルやなんらかの薬品の匂いが俺の鼻を擽る。
俺は一歩一歩警戒しながら歩みを進める。
廊下のサイドにはいくつも部屋や脇道があるが俺は一直線にある部屋を目指していた。
というのもエレベータに乗ってすぐに地下の地図が書かれた紙がはられていたのだ。
そして『私はここだよん( ´・ω・)y』っといかにもふざけた顔文字が付いた案内が書かれていた。
俺はその案内をたどってある部屋を目指す。この地下研究所で一番広い空間。地図には地下巨大ホールとそのまんまの名前がつけられていた。
しばらく歩くと廊下は突き当たりそこには鉄で出来た頑丈そうな扉が現れる。
そして鉄の扉の前で立ち止まる。

十紀人「ここか。」

鉄の扉に触れようとした瞬間。
扉が勝手に開き始める。どうやら中に入れと言っているようだ。
俺は再び歩き出して鉄の扉をくぐり抜ける。
急に足の力が抜けてその場に跪く形となった。

十紀人「あいつら遠慮なしに生命力使ってるなぁ。」

どうやら生命力を大量に使われたせいで足の力が抜けてしまったようだ。
再び足に力を入れて中に入る。
中には大型の機械(おそらくはスーパーコンピュータだろう。)が並べられている。その先には一台のノートパソコンがありその前に白衣を着た男が座っていた。
俺はそいつにゆっくりと近づく。
丁度、そいつの後ろに付いたところで。
そいつは椅子を回してこちらを向く。
白衣をきてメガネをかけていて頭はぼさぼさヘヤーで見た目の歳は30代くらいだ。

斉藤「お初にお目にかかる。私はこの研究所を任されている。斉藤健吾と言う者だ。よろしく。」

男は椅子に座ったこちらを見てままそういった。

十紀人「俺は道明十紀人だ。」
斉藤「ふむ、君の噂は聞いているよ。よくここまで来てくれた。」
十紀人「俺はただ友達とコアデバイスを返してもらうために来ただけだ。」
斉藤「これかい?」

そう言って斉藤は右手に持っていたコアデバイスを俺の前にチラつかせる。

斉藤「いいだろ返してあげよう。だが条件がある。」
十紀人「条件?」
斉藤「私に協力してくれないか?」
十紀人「・・・・」
斉藤「私に協力してくれるなら君には全てを与えよう。富、名声、権力。好きなモノを言いたまえ。私は神だからね何でも君に与えることができよう。」
十紀人「友達と大切な場所・・・。」
斉藤「は?」
十紀人「それだけで十分だ。富?そんもんでお腹は膨れない。名声?そなもんでは笑うことすらできねぇ。権力?そんもんで仲間は救えねぇ。俺がほしいのは・・・俺にあるのは友達と大切な場所!!ただそれだけだ!!」
斉藤「・・・・つまり私に協力しないということかい?」
十紀人「お前の向かう道に正義はあるのか?」
斉藤「正義?っぷはあははははははははははははははは。君面白い。実に面白い。正義?今の特撮ヒーロー物でもそんなこと言わない。あははははははは。ふぅ~・・すまない。思ってもいないこと言うものだからつい笑ってしまったよ。」
十紀人「答えろ。」
斉藤「私にとってそんなもんこそいらないものだ。まぁ・・強いて言えば私は神になった男だ。そうならば私こそが正義だろな。」
十紀人「そんなくだらない正義の為に楓やあの子たちを利用していたのか。」
斉藤「なにを言っている。彼女たちを救ったのは私だ。救ったのだからどう扱おうと私の勝手だ。あぁ実に勝手なことだ。」
十紀人「てめぇは何も救っちゃいねぇよ。救われていたならあいつらはもっと笑顔なはずだ。なのにあいつらは泣いていた。」
斉藤「そんなことより話を戻そう。君が協力してくれれば私たちはさらに高みを目指せる。それこそこの世界を手に入れることが出来るくらいの力が手にはいるのだよ。そして新世界の始まりだ。」
十紀人「そんな糞な世界なんて俺がぶっ壊してやるよ。」
斉藤「っくくくくく。無力な君にそれができるのかい?私の体内にもコアデバイスがはいっているのだよ?」
十紀人「だったらどうした?」
斉藤「はっきりと言ってあげよう。君では私に勝てない。大人しく私に協力すのがいい考えだろ?あぁ実にいい考えだ。そうだな、なんなら君のところにいる旧デバイスたちを保護してやってもいい。どうだ?」
十紀人「歯、食いしばれ。」
斉藤「は?」
十紀人「歯ああぁぁ!!食いしばれええええぇぇぇ!!」

十紀人の拳はしっかりと斉藤の頬を捉えて斉藤は椅子一緒に吹き飛んでいく。
粋のコアデバイスが十紀人の足元に転がり十紀人はそれを拾いあげながら口を開く。

十紀人「目は覚めたか?斉藤さん。」

斉藤はゆっくりと立ち上がり十紀人を睨みつける。
その目は赤色に染まっていた。

斉藤「残念だ。実に残念だ。まぁいい。君の協力が無くとも私には世界を変えるだけの力がすでに備わっている。・・・神に手を上げた道明十紀人くん。君には死んでもらうよ。」
十紀人「俺はお前には負けねぇよ。」
斉藤「ガキがあまり調子にのるなよ・・・デバイス・オン・・・ゴッドハンド。」

斉藤の右腕に爪の尖った篭手がが装備される。
十紀人もそれをみて拳を握る。

斉藤「神の怒りを表したのは雷だ。」
十紀人「御託はいい。来いよ。相手になってやる。」
斉藤「私の誘いを断ったことを後悔するがいい。」
十紀人「後悔なんでしねよ。」
斉藤「そうかい。覚悟はいいのだね。」
十紀人「上等!!博士、生命力の貯蔵は十分か!?」

十紀人は斉藤に向かって走りだす。
斉藤は篭手が嵌められている右手を軽く振り下ろす。
どこからとも無く十紀人の頭上に小規模の落雷が落ちる。
十紀人はすかさず右に飛び退いてそれを回避した。

斉藤「ほぉ~、避けるか。このままここで暴れらるのはちょっと困るな。」

斉藤はPCのところに歩み寄り何かのスイッチを入れる。
すると周辺にあった機械とかが全て地面に埋まって行き、この部屋が障害物が何も無いただの広い空間となる。
つまりは斉藤の攻撃がより俺に当たりやすくなったということだ。

斉藤「広さは十分だろ?あぁ実に十分だ。」
十紀人「それはどうも。」

斉藤は再び腕を振り下ろし雷を落とす。

十紀人「防御障壁!!」

雷は俺の障壁にあたりあさっての方向に飛んでいく。

斉藤「ほぉ~興味深いね。生命力を具現化して盾にしているのか・・・。まぁ君だからできることだろうね。」
十紀人「余裕の分析か?」

十紀人は一瞬で斉藤の後ろに回りこんで拳を突き出す。

斉藤「接近戦に持ち込めば勝てると思ったのかね?」
十紀人「なっ!!」

しかし、十紀人の攻撃は軽くかわされる。

斉藤「さっきのお返しだ。」

斉藤の拳が十紀人の顎に入る。
十紀人の体が宙に放り投げられた。

斉藤「それでは避けられないだろ。」

斉藤は宙に浮いた十紀人に目掛けて雷を落とす。

十紀人「ぐあああぁぁぁああぁぁぁ!!」

空中で避けられるはずもなく十紀人は苦痛の叫びを上げて地面を転がる。

斉藤「あれだけ大口を叩いてこの程度か。」
十紀人「まだだ。」

十紀人はゆっくりと起き上がる。

斉藤「ふふふ、そうでなくては面白みがない。来い。」

起き上がろうとする十紀人の体が斉藤の方に引き寄せられる。

十紀人「っな!!」

斉藤は引き寄せられてくる十紀人の腹部に目掛けて拳を繰り出す。

十紀人「がはっ!!」

為す術も無く十紀人は攻撃を受け入れるしかなった。

斉藤「驚くのも無理は無いだろ。人間にはだれでも多少なり磁場を持っている。君に雷を当てることで磁場を強くして私はこの篭手で君の磁場と反対の磁場を出す。そしたらどうなると思う?・・・・簡単だ引き寄せられるということさ。」

斉藤の攻撃は止まらなかった。
倒れこもうとする十紀人の頭をつかみ膝で突き上げる。
追い打ちと言うように突き上げた顔面にかかと落とし。

斉藤「吹き飛べ!!」

そして吹き飛ばそうと拳を繰り出す。

十紀人「温いんだよ!!」
斉藤「なに!!」

拳はたしかに十紀人に当たっていた。しかし、十紀人が吹き飛ぶことはなかった。
いや、体は吹き飛び欠けたが十紀人の拳が斉藤の胸ぐらをしっかりと掴んでいたため耐えれたのだ。
十紀人は一気に腕を引いいて頭突きを斉藤に食らわす。

斉藤「ぐはっ!!」
十紀人「反撃させてもらうぜ!!」

かかと落としに飛び膝蹴り、正拳突きにアッパーいろいろな技を組み合わせる。
一気に畳み掛けるように十紀人は攻撃を食らわす。

十紀人「これで終わりだ!!掌底波!!」

以前楓に使ったは技だ。生命力を相手に打ち込んで相手の内部を破壊する。
今回は手加減などしていない。
斉藤は衝撃で吹き飛んで壁にぶち当たる。

十紀人「っく!!やっぱり反動がすごいな。」

十紀人は技を放った右腕をだらんとたらして吹き飛んだ斉藤の方を見る。
斉藤はゆっくりと起き上がり十紀人を睨みつけた。

十紀人「アレを打ち込んで動けるのかよ。反則的だな。」

斉藤は唾を吐き捨てる。
その唾には赤色の物が混じっていた。

斉藤「私は少々君を見くびっていたようだ。」
十紀人「そりゃどうも」
斉藤「虎は ウサギを狩るときさえ全力を尽くすという。ならば私も本気をだそうではないか。」
十紀人「来いよ。受けて立ってやる。」
斉藤「笑っていられるもの今のうちだ。POSシステム起動。第五ゲート解放。出力100%安定。」
十紀人「そんなに飛ばしていいのか?」
斉藤「旧型のコアデバイスと一緒にしないでほしい。旧型よりはるかに調整は取れている。生命力が続く限りこの状態でいられるのだよ。」
十紀人「ほんとに反則的だな。」
斉藤「私は神なのだ。」

刹那。
斉藤の姿が消えて十紀人の後ろに現れる。

十紀人「防御障壁!!」
斉藤「甘いな!!」
十紀人「なに!!」

斉藤の拳は障壁を突き破り十紀人を殴りつける。
十紀人は吹き飛ばされて壁にぶち当たる。

斉藤「さぁ、ショータイムだ。」
・・


百鬼「ん~。すごいことになってるでありますね。」

百鬼は肩に赤を担いでみんなの後を追う。
みんなが向かったオフィスビルの前に来るとそこらじゅうにドールズの残骸が転がっている。
その奥の正面玄関にみんなが集まっているのが見えた。
百鬼は足早にそこに向かう。

百鬼「そろっているでありますね。」
白雪「百鬼、どうやらお前も勝ったようだな。」
百鬼「当たり前であります。」
静「百鬼さんもその肩に担いでる人も手当しますからこっちに来て下さい。」

静は白雪の腕に包帯を巻きながらそう言った。
赤をゆっくりを地面に寝かせて百鬼は座る。
楓が百鬼の前に立ち頭をさげた。

楓「百鬼さんゴメンなさい。」
百鬼「楓。今度勝手にどっか行ったら許さないでありますよ。」
楓「・・・はい。」

楓は瞳を潤わせてうなずく。

翠「よかったですね。楓お姉様。」
楓「翠。貴方にも迷惑をかけましたね。」
翠「そんなことはありません。私は楓お姉様に笑っていてほしいだけです。」
楓「翠。」
黒美「ガールズ・・・ラブ」

みの虫の様になっている黒美が見つめ合う二人を見て呟いた。

赤「空気を読むっス」

いつの間にか気がついて静に手当をしてもらっていた赤が黒美の頭を軽く小突く。

黒美「・・・痛い。」
静「赤さん動かないでください。傷にしみますよ。」
赤「痛!!」

消毒液がしみたのか赤が涙ぐむ。

黒美「翠・・・いい加減・・・離せ。」
翠「いいだろ。もう抵抗できる力も残っていないだろうしな。」

翠は黒美にまとわりついていた木を木の棒へと戻す。
黒美は地面へと着地した瞬間。
その場から走りだした。

翠「黒美!!」
楓「翠。」

それをお追うとする翠を楓は止める。

楓「追わなくても大丈夫ですよ。黒美は強い子ですから。そっとしておいてあげましょう。」
赤「・・・黒美。僕はあいつと友達になれたっスかね。」
翠「あいつは猫みたいな奴だからな。」

ひと通りの手当が終わり白雪はゆっくり立ち上がり口を開いた。

白雪「さて、私はご主人様のことろにいくが皆はどうする。」
百鬼「行くでありますよ。」
楓「行きましょう。」
静「行きます。」
翠「行く。」
赤「ひ、一人は寂しっスから付いていくっスよ」

全員立ち上がり左から三番目のエレベータに乗り込み
十紀人の元へと向かう。
しばらくエレベータにゆられていると再び扉が開き薄暗い廊下が現れる。

楓「ここからは私が案内いたします。」

全員で楓の後ろを歩く。
しばらく行くと大きな鉄の扉が現れて楓はそこで立ち止まる。

楓「おそらく、ご主人様と斉藤博士はこの中にいると思われます。」
白雪「開けてくれ。」
楓「・・・わかりました。我、神の守護者。」
『音声認証を確認しました。ゲートを開放します。』

機械音声が返答をして鉄の扉がゆっくりと開かれる。
そして中には一人の白衣を来た男が立っていてそのすぐ側に十紀人が倒れていた。
白雪たちが入ってきたことに気がついた男がこちらを見る。

斉藤「おやおや、お揃いだね。これは君たちに返そう。」

そういって斉藤は十紀人を蹴り上げる。
十紀人は白雪たちの前に転がる。
十紀人の体からは煙が上がっていて皮膚の焼ける匂いが鼻を刺激する。

白雪「ご主人様!!」
百鬼「マスター!!」
静「お兄ちゃん!!」
楓「ご主人様!!」
翠「十紀人殿!!」

白雪たちが十紀人に駆け寄り抱き抱える。

白雪「まだ息はある。静。」
静「はい。」

静はすぐに十紀人の手当を始める。
そんな白雪たちを傍目に斉藤は楓たちを睨みつけた。

斉藤「楓くんに裏切り者の翠くん、そして赤くん。どうして旧デバイスがまだ動いているのかね。」
楓「私たちは負けました。そして私はもう戦う意志はありません。博士もうこんなことはやめましょう。」
翠「お姉様の言うとおりだこれ以上の争うは無意味。」
斉藤「赤くん君の意見をきこうか?」
赤「・・・僕ももう戦いたくないっス。」
斉藤「そうか。残念だ。あぁ実に残念だ。道明十紀人くんは私に負けたのだ。今更引く必要は・・ない。君たちが出来ないと言うなら私が旧デバイスどもを破壊しようじゃないか。」
楓「させません。彼女たちは私の友達です。こんな私でも友達と読んでくれた人たちです。そんな人達を傷つけると言うなら私がそれを止めます。」
翠「私も楓お姉様と同意です。」
赤「僕も楓と翠がやるならやるっスよ。」
白雪「お前たち。」

楓、翠、赤はそう言って白雪たちの前に出る。

斉藤「使えないならまだしも私を裏切るとは・・・まったくもてって不愉快だ。あぁ、実に不愉快だ。みんな私が壊してやろう。君たちの換えぐらい今の私の力を持ってすればたやすい。」
白雪「私たちの力をナメるなよ。」
百鬼「そうであります。」
楓「白雪さん、百鬼さん。」

白雪と百鬼も前へと出る。

斉藤「ははははははははは!!私もなめられたものだ。そんなボロボロな君たちに何が出来る!!愚かだ。実に愚かだ。死ね!!」

斉藤が腕を振ると白雪たちの前に落雷が落ちる。
白雪たちはその反動でその場に倒れこむ。
必死で立ち上がろうとするが先の戦いからこの短時間で体力が戻るわけでもなくみんな立ち上がれないでいた。

静「みなさん!!無理をしたらダメです!!ここは引きましょう!!」
斉藤「弱い。実に弱い。一瞬で消し飛ばしてあげよう。」

斉藤の掌に紫色をした大きな球体が出来はいじめる。

斉藤「荷電粒子砲、プラズマ砲。こいつを使うのは初めてだが威力的にはこれで十分だろう。」
静「まずいです!!皆さん!!早く!!」

静の叫びも虚しくみんなはゆっくりとしか起き上がることが出来ない。

斉藤「消し飛べ!!」

斉藤が放ったプラズマが静たちに迫り静はぎゅっと目を閉じた。

十紀人「鉄壁!!」

刹那。
あたりに轟くほどの爆発音がしてあたりに煙幕が上がり視界を遮る。

斉藤「ふん。終わったか。さて。」

斉藤は振り返り歩き出そうとした。

十紀人「おい。どこに行く。」
斉藤「なに?」

斉藤は声に驚き振り返ると煙幕が収まりそこには十紀人が立っていた。

斉藤「馬鹿な。あれをどうやって防いだのだ!!」
白雪「ご主人様!!」
百鬼「マスター!!気がついたでありますね!!」
楓「・・・ご主人様。」
翠「十紀人殿。」
十紀人「みんな無事だったんだな。」
静「お兄ちゃん。」

静は心配そうに俺を見上げる。

十紀人「大丈夫だ。この戦いを終わらせる。」
静「はい。」

静の頭を撫でてやると静は安心したように俺に笑って見せる。
俺はポケットからコアデバイスを取り出して静に渡す。

十紀人「静、これを頼む。」
静「これは?」
十紀人「粋のだ。」
静「大切に預かります。」
斉藤「死ね!!」

斉藤は十紀人に向かって落雷を落とすが十紀人に簡単に防がれてしまった。
雷を防いだのは十紀人の周りに現れた金色の砂のよな物だ。

斉藤「なんなんだ・・それは。」
白雪「答えを見つけたのか?」
十紀人「あぁ、形の決まらない武器・・・それが俺の武器だ。」
斉藤「馬鹿な。そんな武器があるか!!精製なしに原子だけを集めるだと!!ありえない!!」
十紀人「さぁ、決着を決着をつけようぜ。」

そして再び斉藤を見て俺は歩き出す。
背中にみんなの視線を感じる。俺は負けるわけにはいかないのだ。
俺が負ければこれまでの戦いが全て意味がなくなってしまう。
誰も救えなくなってしまう。拳に力をいる。

斉藤「まぁいい。そんなモノを身に纏ったところで状況は変わらん私の勝利で終わる・・。あぁそうに決まっている」
十紀人「次で最後だ。」
斉藤「・・・私もそのつもりだ。いい加減に君の相手も疲れた・・・次で楽にしてあげよう・・・。」

斉藤はゆっくりと右手を上げてさっきのプラズマを創り上げる。
今回はさっきとは比べ物にならないくらいの大きさにふくれあがっている。

斉藤「威力は最大だ。これを君は受け止めきれるか。」
十紀人「どんな攻撃でも受け止めてやるよ。」

十紀人が纏っていた金色の砂が横に集まりはじめて巨人の様な大きな金色をした腕が現れる。

斉藤「そんなモノで私が止められるともでも思っているのか?」
十紀人「試してみればいい。」
斉藤「どこまでもへらない口だ。あぁ実に減らない。それごと粉々に砕け散るがいい。」
十紀人「ぶん殴る!!」

俺は斉藤に向かって走りだす。
俺が拳を振り上げると連動して巨人の腕も振りあがる。

斉藤「跡形も無く消え去れ。」

斉藤が腕を振り下ろすと巨大なプラズマが俺目がけて落ちてくる。

十紀人「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉぉ!!」

俺もそれにめがけて拳を振るう。
プラズマと巨人の拳がぶつかり合い衝撃波が生まれる。
俺は体が吹っ飛びそうになるのをグッとこらえてそれに耐えた。
両足が少しずつずり下がって行くのが分かる。
巨大の腕も徐々にプラズマによってとかされているようだ。
足に力を入れて押し返す。

斉藤「そのまま堕ちろおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
十紀人「負けるかあああああァァァァァァァァァァァ!!!」

巨人の腕にヒビが入り始めた。ビキビキという音が耳に届く。
生命力で修復するがヒビの進行のほうが早いようだ。
けど、どうしてだろうか全くと言っていいほど負けるがしない。
そうか・・・。そうだよな・・・・。

斉藤「ははははははははははははははは!!そのまま押し潰されろ!!」
十紀人「お前は俺に勝てねぇよ!!」
斎藤「戯言を!!」
十紀人「俺には仲間がいる!!友達に教えてもらった正義がある!!あいつらが俺の背中を押してくれる限り俺は負けない!!」

そうだろ?白雪。俺一人だったら俺はとっくにまけてるよな?けど、みんなとだったらどんな奴にも負けないよな!!
そう心のなかでささやいた。
『行け!人間!!』
『十紀人くん!!頑張って!!』
どこからか俺を励ます声がする。
それが空耳なのかそうでないのかわからない。
けどその声はたしかに俺の耳に残った。
そして、力が湧いてくる。

十紀人「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

巨人の腕が砕け散る。
それと同時に斉藤が作り出したプラズマも砕け散っていった。

斉藤「馬鹿な!!私の最大プラズマが!!」
十紀人「覚悟はいいか?」

あっけに取られた斉藤が俺の方を見る。
俺の周りにオーラのよな物がまとわりつく
そして一歩一歩、斉藤近づいて徐々にスピード上げる。

斉藤「ありえない!!生命力が具現化して見えるなどあるハズがない!!あれだけの生命力を使ってなぜ立っていられる!!なぜまだ生命力が残っている!!どこからそんな力が湧いてくるのだ!!・・・来るな・・・来るなあああァァァァァ!!」
十紀人「歯ああぁぁ食いしばれよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

俺の力いっぱい振り下ろした拳が斉藤の顔面をしっかりと捉える。
斉藤は仰け反って体制を崩す。

十紀人「まだぁまだああぁぁぁ!!!」

それに続けて反対の手の拳を振り上げてガラ空きになった腹部をしっかりと捉える。

十紀人「これで終わりだあああぁぁぁぁぁぁ!!」
斉藤「・・・この底なしが。」

再び巨人の腕を作り出す。
そして俺は力の限り拳を突き出した。
斉藤は攻撃をくらい吹き飛ばされて壁に叩きつけられて力なくその場に倒れこんだ。
あたりに静寂が訪れる。

十紀人「全部終わった。」
百鬼「マスター!!」

百鬼が俺に飛び付いて来て俺はそれを抱きとめる。

白雪「百鬼!!貴様!!ドサクサに紛れて何をしている!!」
百鬼「抱きついているであります。」
白雪「そんなことは分かっている!!今すぐにご主人様から離れろ!!」
百鬼「いやであります。」
白雪「貴様ああぁぁ!!」
静「お疲れ様です。お兄ちゃん。」
十紀人「静。」
楓「ご主人様。お疲れ様です。」
十紀人「楓。・・・お帰り。」
楓「ただ今戻りました。」
翠「まさか、勝つとはな。」
十紀人「あぁお前たちのおかげだ。」

みんなが俺のところに集まってくる。
しかし、一人だけ離れたところで俺たちを眺めている子がいた。
見た目は静と同じ年くらいだろうか・・。
赤い髪をしてボーイッシュな格好をしている女の子。
百鬼と戦った子だ。
目が合う。

十紀人「君。名前は?」

俺の問にその子は恥ずかしそうに答える。

赤「ぼ、僕は赤、上坂赤。」
十紀人「知ってると思うけど俺は道明十紀人。できたら友達になってくれないか?」
赤「いいの!?」
十紀人「君がいいなら俺達は大歓迎だ。」
赤「・・・・」
楓「赤。」
翠「赤。」
白雪「まぁご主人様がいいというなら。」
百鬼「はぁまたご主人様に変な虫が付くでありますか・・・。しかたないでありますね。」
静「大勢のほうが楽しいですね。」
赤「うん!なるよ!!僕も友達になるよ。」

赤の顔がパッと明るくなって無邪気にそういった。

十紀人「さて、帰ろうか。」
静「そうですね。帰ってご飯にしましょう。」
百鬼「もうお腹ぺこぺこであります。」
白雪「お前は食べ過ぎだ。太るぞ。」
百鬼「百鬼は太らない体質であります。」

俺達がこの部屋と出ようとした時。
急に鉄の扉が閉まる。

白雪「どうしたいうのだ!」
楓「なんで扉が・・・。」
『施設を爆破します。係員の指示にしたがって非難してください。・・・・施設を爆破します。係員の指示にしたがって非難してください。』
斉藤「ははははははは!!みんなここで死ね!!」

斉藤がいつままにか起き上がりパソコンの前に立っていた。
あたりに付いていた赤色の回転灯が光り始める。

斉藤「全部終わりだ!!これで全部おわりだ!!はははははっはははははあぁはっはっはっはっは!!」

斉藤は力なくその場に座り込む。

白雪「貴様!!」
十紀人「白雪。」

白雪が斉藤に向かおうとしたのを俺は呼び止めた。

白雪「ご主人様。」
十紀人「今は一刻もはやくここから脱出しなくちゃいけないんだ。」
白雪「・・・わかった。」
十紀人「楓、他に通路は?」
楓「確か奥に緊急脱出用のエレベーターがあります。」
十紀人「わかった。そこへ急ごう。楓。」
楓「はい。」

俺は斉藤の方を見る。
斉藤は何か焦点があっていない目でただ高い天井を見上げてブツブツと何かを言っていた。

楓「ここです。皆さん乗り込んでください。」

全員が緊急脱出用のエレベーターに乗り込む。

楓「では行きます。」

楓がエレベーターのボタンを押す。

十紀人「・・・いや、ダメだな。」

十紀人が扉が止まる瞬間にエレベーターからするりと降りた。

白雪「楓!!ドアを開けろ!!」
楓「無理です。もう閉まって発進してしまいました!!」
白雪「止めれないのか!!」
楓「無理です。これは地上まで直通のエレベーターです。」
百鬼「力づくでやるでありますか!?」
十紀人『白雪・百鬼聞こえるか?』
百鬼『マスター!!』
白雪『ご主人様!!何を考えている!!』
十紀人『そう怒るな。斉藤博士を救うのを忘れていた。』
白雪『あんな奴ほっておけ!!』
百鬼『そうであります!!』
十紀人『ごめんそれはできない。俺は正義の味方だから。』
白雪『そんな事言っている場合じゃない!!』
十紀人『大丈夫だ。俺は必ず戻る。白雪、百鬼、みんなを頼んだぞ。』

そこで意識通信が途絶えてしまた。

白雪「ご主人様!!」
百鬼「マスター!!」

二人はその場に座り込む。

楓「・・・」
翠「・・・」
赤「・・・」
静「・・・お兄ちゃん。」
百鬼「・・・・行くであります。」
白雪「・・・・そうだな。」

同時にゆっくりと立ち上がり前を見た。
それと同時にエレベーターの扉が開き外の風景が現れる。
二人はゆっくりとエレベーターを出る。

静「白雪さん、百鬼さん」
楓「ご主人様を置いてくんですか!!」
白雪「ご主人様は必ず戻ると言った。私はそれを信じて待つ。」
百鬼「百鬼も同じ気持であります。」
静「お兄ちゃんは戻ると言ったんですね。」
白雪「あぁ。」
静「わかりました。みなさん。ここは危険です。外に出ましょう。」

オフィスビルの外に出て間もなくして地響きが起こる。
おそらく地下の研究所が崩壊したのだろう。
それに伴ってか、さっきまでいたビルがゆっくりと倒壊し始める。
ちょうど夜が開けるのか山際が赤くなり始めた。
しかし、その場から誰も動こうとはしなかった。
白雪と百鬼はずっとその瓦礫の山となった元オフィスビルを見つめている。

白雪「・・・・」
静「白雪さん」
白雪「ご主人様は言ったのだ。必ず戻ると・・・。」
静「ですが・・・。」
百鬼「マスターが嘘を付いたことはないであります。」
静「そうですが・・・。」

太陽の光が山の間から顔を出して瓦礫の山を照らし出す。
そこに頂上に起き上がるようにして誰かの姿が現れる。

楓「・・・黒美。」

瓦礫の上に立っていたのは黒美だった。
両腕に二人抱えた状態で白雪たちの元に歩み寄る。
左腕には斉藤。そして右腕には十紀人が抱えられていた。
そして彼女は右腕に抱えていた十紀人を白雪たちの前にそっと置く。

白雪「ご主人様!!」
百鬼「マスター!!」

みんなが十紀人の周りに集まる。

静「良かった。気絶しているだけです。」
黒美「博士を・・・助けて・・くれた・・・お礼。」

それだけ言い残して黒美は斉藤を抱えたまま去ろうとする。

楓「黒美!」

背を向けている黒美は楓に呼び止められて顔だけをこちらに向ける。

楓「一緒に行きませんか?」
黒美「私は・・・博士と・・・生きる。」
赤「なんでっスか!!一緒のほうが楽しっスよ!!」
黒美「馴れ合い・・・嫌い・・・・。」
赤「仲間じゃないっスか!!なんでっスか!!なんで・・・」
翠「赤。」

翠は赤の肩にそっと手を置く。
赤は目にいっぱいの涙を貯めて翠の顔を見る。

白雪「黒美といったな・・。ご主人様をありがとう。」
黒美「・・・・。」

黒美はただ静かにその場を去っていった。
太陽が完全に山際から顔を出して朝が来る。
さっきの騒ぎが嘘のように朝の街は静かで、小鳥たちの囀りが聞こえ始める。

静「みんな揃いましたね。帰りましょうか。」
白雪「そうだな。私たちの家に帰ろう。」
百鬼「行くでありますよ。」
楓「私たちもご一緒してよろしいでしょうか。」
白雪「当たり前だ。」

白雪たちは十紀人を抱えて帰路に着く。
夜明けと共にこの長い戦いは終わりを告げた。
・・


黒美「・・・・」

黒美は斉藤を連れて暗い路地を歩く。

斉藤「・・黒美。下ろしてくれ。」

黒美は立ち止まりゆっくりと地面に座られる。
そして斉藤の横にちょこんと座り黙ったまま大人しくしていた。

斉藤「まさか敵に救われるとな。滑稽だ。実に滑稽だ。」
・・


研究所が爆発し始める。
警報機の音が部屋中鳴り響いてここもあと数十秒すれば倒壊するだろう。
斉藤は死ぬ覚悟をしていた。政府を裏切り、自分は敗れた。そして研究施設も今まさに壊れようとしている。
自分に残っているものはもう何も無いのだ。
絶望に打ち拉がれ彼はただ壊れていく研究所を眺めている。
真上の天井が壊れ斉藤に瓦礫が降ってくる。
彼の瞳にはそれが映っているが彼は避けようとはしなかった。
それどころかゆっくりと目を閉じてまるでそれを受け入れるように両手を開く。

十紀人「何やってんだ!!!」

斉藤の体が誰かに突き飛ばされる。
さっきまで彼がいたところに大きな瓦礫が落ちて地面に大きな穴が開く。

十紀人「逃げるそ!!」

十紀人は斉藤の体を抱き起こす。

斉藤「君は何をしている。」
十紀人「はぁ?お前を助けるんだよ!」
斉藤「私を?ふっ君は馬鹿か?私は敵だぞ?」
十紀人「なにいってんだ。もう戦いは終わっただろ。終わったんなら敵も味方もねぇよ!!」
斉藤「私はもう生きている意味をなくした。この研究所と共に死にたいのだよ。はなしてくれないか?」
十紀人「ふざけんな!!お前は多くの人に迷惑をかけたんだ。なに死んで逃げようとしてんだ!!生きろ!!死ぬまで生き続けろ!!それが償いだ!!」
斉藤「君は私がまた同じことをするとは思わないのかね?」
十紀人「同じ事をしたってまた俺がぶっ飛ばすだけだ。」
斉藤「ははは。それは楽しみだ。あぁ実に楽しみだ・・・。」
十紀人「帰るぞ。」
斉藤「ここからどうやって出るというのだ?私はしばらく力が使えんのだよ?」
十紀人「任せろ。」

十紀人は再び銀色の砂を纏う。
そして巨人の腕を創り上げて拳を構える。

十紀人「あの鉄の扉をぶっ壊せば逃げ道くらいどこかにあるだろ?」
斉藤「エレベーターが生きていればな。」
十紀人「いくぞおおおぉぉぉぉ!!」

大きく振りかぶって鉄の扉を殴りつける。
扉は少し歪むだけだった。

十紀人「おおおぉぉぉぉ!!」

再び振りかぶって扉を殴る。殴る。殴る。殴る。・・・・・・。

十紀人「はぁ~はぁ~はぁ~。」
斉藤「やめたまえ。もう無駄だ。私たちはここで死ぬのだ。爆発も始まった。時期にここもなくなる。」
十紀人「諦められないんだよ。俺には待ってくれている仲間がいるからな。こんなことで諦めたら怒らるだろ?」
斉藤「仲間・・か。」
十紀人「砕けろおぉぉぉぉ!!」

十紀人は振り上げた拳に全身全霊を込めて振り下ろす。
巨人の腕は扉にぶつかり砕け散ってなくなる。
十紀人も力尽きたのだろうか、その場に倒れこむ。

斉藤「全く君には驚かされるよ。核ミサイルにも耐え切る壁をこの短時間で穴を開けるのだから。」

鉄の扉には大人ふたりが丁度通れそうなくらいの穴が空いていた。
十紀人は倒れたまま起き上がろうとはしなかった。

十紀人「・・・・。」
斉藤「力尽きたか・・。しかたない。」

斉藤は十紀人を担ぎ上げて穴を潜り廊下に出る。
エレベーターまではここを真っ直ぐ歩いて行けば付くのだが斉藤も限界は近い。
ましてや一人の男を担ぎながら歩いているのだ。この廊下の先にあるエレベーターがここにとどまっている可能性は低い。
しかし、斉藤は一歩一歩踏みしめながら歩く。

斉藤「くそ、力の使い過ぎで自分の生命力をも削ったか。私もここまでが限界のようだ・・・。」

斉藤はエレベーターの前で倒れこむ。
あと数を歩けばエレベーターのボタンは押せるのだ。
後ろの方からはついに爆発音が聞こえ始める。
ゆっくりとエレベーターの扉が開いた。
そしてそこに黒美がいつもの無表情で愛想ない顔で立っていた。
斉藤は朦朧とする意識の中で口を開く。

斉藤「黒美・・・彼は私の命の恩人だ。助けてやってくれ。」

そして、斉藤の意識はそこで途絶えた。
・・


斉藤「礼を言うのを忘れてしまったな・・・。」
黒美「・・・・」

薄暗い路地に太陽の光が挿し込む。
斉藤は太陽に手をかざして挿し込む光を眺める。

斉藤「まったく、外はこんなにも明るかったのだな。あぁ実に明るい。」
黒美「博士・・・どこ・・・行く?」
斉藤「久しぶりに旅に出てみるか・・。」
黒美「付いて・・・いく」
斉藤「あぁ。構わん。実に構わんよ。」

斉藤は腰を上げて路地を奥のほうに消えて行った。
その後ろをとてとてと黒美が付いって行った。
・・・
・・


俺が目を開けると見慣れた天井が眼に入る。
あたりは薄暗く月上がりが部屋に差し込んでいた。
状態を起こす。
どうやら、ここは俺達の家のリビング。俺はソファに寝かされていたみたいだ。
みんな疲れているのだろ、思い思いの格好で雑魚寝状態になっている。
俺は起き上がり一人一人に掛布団を掛ける。
みんなの体は傷だらけで泥だらけだった。
おそらくここに帰ってきてそのまま寝てしまったのだろう。
リビングから縁側に出て座る。
外の空気は随分と冷たくなっておりもう数ヶ月たてば季節は冬に移り変わるだろ。
白雪と出会いから全ては始まった。
クロに百鬼、粋に黒川、楓に翠、赤と黒美と斉藤。いろいろな出会いがあり別れがあった。
全てはあの紅い月の夜からの始まりだ。

白雪「起きたのか?」
十紀人「あぁ。」

起きてきた白雪が俺の隣に座る。

白雪「体は大丈夫か?」
十紀人「痛みもないし問題ないと思う。そういう白雪は?」
白雪「私は寝れば治る。」
十紀人「そうか。」
白雪「・・・」
十紀人「・・・」
白雪「もう終わったのだな。」
十紀人「あぁ、終わった。」

俺の胸元でスターサファイアが月明かりに照らされて小さく光る。

白雪「綺麗な石だな。」
十紀人「クロからもらたんだ。」
白雪「そうなのか?」
十紀人「あぁ。あいつはもう俺の中に居なくなっちゃったみたいだ。」

起きてから感じるこの胸にぽっかりと穴が空いた様な感覚はきっとそのせいだろう。

十紀人「どこに行ってしまったんだろうな。」
白雪「ご主人様、私は思うんだ。あいつはきっとどこかで生きているとただ場所が変わっただけなのだけなのではないかとな。」
十紀人「なんでだろ不思議と俺もそう思うよ。」
白雪「私たちも生きていこう。私と共に・・・みんなと共に。」
十紀人「うん。」

胸のスターサファイアがキラリと返事をするように光った。

白雪「ご主人様。今一度アレしてくれないか?」

白雪は顔を真赤にしてそういった。

十紀人「アレ?」
白雪「アレはアレだ。私に言わせるな恥ずかしい。」
十紀人「あれ・・・あれねぇ・・・・ん~。!!。アレか!!」
白雪「そうだアレだ!」

白雪は俺の方を向いてゆっくりと瞳を閉じる。
俺は両手を白雪の肩に乗せて白雪を見る。
肌は雪のように白い頬を薄紅に染め、唇は潤んでいて見てると吸い込まれそうになる。
ゆっくりと目を閉じてゆっくりと肩を引き寄せる。
白雪の吐息が俺にかかるのかがわかる。
あと数センチで唇は重なりあうだろう。
あと数センチ・・・・。

翠「ごほん!!」

わざとらしい咳払いに俺は停止して恐る恐る目を開け横を見る。

翠「すまない。邪魔をするつもりはなかったのだが・・・。」

ムスッとした顔して翠はそういった。

赤「翠。なんで止めたっスか!!もうちょっとでブチューっといったっスよ!!」

目を輝かしながら赤そういう。

楓「ご主人様たら、言ってくだされば私がお相手しましたのに。」

楓はその横で頬を染めながらそういう。

百鬼「いつもいつも白雪ばっかりずるいであります。」

そう言って百鬼は頬を膨れ上がらせる。

静「お兄ちゃん。何をしているのかな?」

黒いオーラを立ち上がらせながら静は静かにそういった。
どうやらみんな起きてきたらしい。
いやそれよりもこの状況をどう打破するかが問題だ。
一歩間違えれば俺の命は今日を持って終了するだろう。
白雪はというと目を瞑ったままの状態で停止している。
どうやら彼女なりにこの状況を打破しようとしているのだろう。
俺はゆっくりと立ち上がり後退りをする。

十紀人「いやぁ~なんといますか。」

静を先頭にみんなが一歩づつ前にでる。
おれもそれに伴って一歩下がる。
この迫り来るプレッシャーは俺が今まで経験したどのプレッシャーより重く恐ろしい物だ。

十紀人「みんな、どうしたんだ?」
静「お兄ちゃん?どこに行くんですか?」
百鬼「マスターこっちに来るといいでありますよ?」
楓「ご主人様?私がお相手では不足ですか?」
翠「十紀人殿の変態な根性を直さないといけないな。」
赤「なんかよくわかないっスけど僕も参加するっスよ。」

じりじりと追いつめられて塀垣に背中を付ける。
どうやらこれ以上後ろに逃げ場はないようだ・・・。

十紀人「えぇ~っと。ちょっと出かけてくる!!」
静「逃がしませんよ!!虎!!」
虎「ここに。」
静「お兄ちゃんを捕まえてください!!」
虎「御意。」

黒尽くめたちがどこからともなく現れて俺を追ってくる。。

百鬼「逃がさないでありますよ!!」
赤「僕の速さからは逃げられないっスよ!!」

百鬼と赤が其れに続く。

楓「翠!私たちもご主人様を追いますよ!!」
翠「はい!!楓お姉様!!」

楓と翠もその後を追う。

白雪「あぁ~。今日も月が綺麗だな。」

などと縁側に座った白雪がボーっと月が浮かぶ夜空を眺めはじめた。

十紀人「正義の味方よ!!俺を助けてくれえぇぇぇぇ!!」

俺の声は虚しく夜に消えていく。
少し欠けた月は夜空に浮かび優しい光で俺たちを照らし出す。
風は冬の匂いを運び虫たちが夜の音楽を奏でる。
きっとこれからもこんな日が続くのだろう。
甘ったるくて暖かい俺達の大切な場所。
これから何が起きても俺はこの場所を守り続ける。
ここにいる仲間と共に・・・。
大切な仲間と共に・・・。
・・・
・・

       

表紙

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Neetsha