Neetel Inside ニートノベル
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紅月の夜
第三期 満月 プロローグ

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あの戦いより丁度、1年の月日が流れていた。

十紀人「じゃぁ、行ってきます。」
白雪「ご主人様。わかっているとは思うが今日は黒川と粋が来る。早く帰ってこいよ。」
十紀人「わかっているよ。」

玄関で白雪に見送られて俺は外に出る。
その気温はすっかり下がり北風がもうすぐ冬が訪れることを俺に気付かさせる。
俺がどこに向かっているかと言うよと以前俺たちが住んでいた家へと向かっているのだ。
というのも以前の家では今の人数で過ごすことが難しくなり俺たちはやもなく本家に移り住むこととなった。
白雪、百鬼、静に加え楓、赤、翠そして俺を含めて7人で住むには前の家はあまりにも迫っ苦しい。
ましてや、狭いと言う理由で毎回俺の布団に侵入して来る輩もいて、戦争が起きてしまい家が半壊する始末(今ではもうすっかり直っていが)。
まぁそういうことで俺たちは今本家に住んでいる。親父はどこかにいるらしいがいっこうに姿を表さない。
静が言うには仕事が忙しくて今は海外に行っているらしい。
それでも毎月十分すぎる生活費が俺と静の口座に入ってくるので文句は無いのだが・・。
などと考えなら歩いていると目的の場所にたどり着く。
ポケットから鍵を取り出して玄関を開けた。
埃っぽい香りが俺の鼻をくすぐり鼻をむずむずさせる。
人が済まないと家は死んでいくというが確かにその言葉の意味がわかる。
シーンとした家の中は物寂しさすら感じてしまう。
リビングに入るとガランとしていて以前置いってあった家具とかは既に本家の方に移動してある。
カウンターにスッと指を滑らせると埃が指につく。

十紀人「・・・。」

この家の買い手は既に決まっていて後一週間もすればここには俺の知らないどこかの家族が住むのだろう。
今日はこの家に最後の別れを告げるために俺は一人でここに着ていた。
一通り家の中を見て回ったがこれと言って変化はなかった。
あるとするなら家具や私物が全く無く人気がない寂しい家なっているだけだ。
以前まで俺たちが住んでいたとは思えないくらい物静かになってしまった。
俺は最後に元自分の部屋前に立った。
ドアを開けるとかび臭いに匂いが俺の鼻を刺激する。
やはり中には何もなくガランとしていた。
ふと部屋の真ん中に一枚の写真が裏側に置いてあることに気が付く。
裏には何か文字が描いてあった。俺はそれを拾い上げて文字をジッと眺め見る。
『最愛な二人に心を―――。』
途中で文字がかすれているためそれ以降は読めなかった。
表側を見ると若い男女の腕に抱かれて赤ちゃんが満面の笑みで写っていた。
男女も幸せそうにその赤ちゃんを眺めている。

十紀人「母さん・・・。」

若い男女は俺の母と父だとすぐに分かった。
真ん中で笑っている赤ちゃんは俺だ。
なんで今更こんな写真が出てくるのかわからなかった。
引越しをする際にも気づかずこの写真はここに取り残されていたのだ。
写真をポケットにしまい俺は家に鍵をかけて外へ出る。
名残惜しい気持ちを残して俺は今のみんなが・・仲間がいる家に足を向けた。
・・・・母さん。本名、道明香里。
母さんは忙しい人で年に数えれるくらいしか家にいることはなかった。
まぁ父も同じくらい忙しい人だったのだが・・・。
そんな母さんでも時々家にいるときは優しく俺を抱きかかえて暖かい笑顔を俺に向けながら頭を撫でてくれたものだ。
俺はそんな母さんが好きだった。母さんが帰ってくる日には玄関でよく待っていた。
しかし、そんな母さんは行方をくらましたのだ。そう・・・丁度、桜姉ちゃんがいなくなって数日後に。
捜索願いはすぐに出したが未だに見つかる気配はない。
もうこれだけの年月が過ぎたのだ。おそらくこの世にはいないだろう。
冷たい風が俺をすり抜けて体から体温を奪っていく。
俺は身を縮めて足早に帰路についた。

十紀人「ただいま。」
静「お帰りなさい。お兄ちゃん。」

玄関に入ると静がニコやかな笑顔を向けて出迎えてくれる。
玄関には見慣れた革靴とメンドさんがよく履いている様なエナメルタイプで黒色のワンストラップが綺麗に並んでいる。
既に粋と黒川が来ているのだろう。
粋とは学校で合っているが黒川とはほとんど合っていないのだ。

静「家はどうでした?」
十紀人「変りなかったよ。」

俺は靴を脱いで下駄箱に入れる。

静「そうですか。・・・寂しくなりますね。」
十紀人「仕方ないさぁ。今の人数じゃあの家は狭すぎるしさぁ。」
静「・・・ですね。」

少し寂しそうに下を向く静の頭にそっと手を乗せる。
確かに俺と静はあの家で過ごした年月が多い分寂しさも大き。
静は俺を見上げるようにして口を開く。

静「寂しいですが落ち込んでも要られませんね。さぁ粋さんと黒川さんがお待ちです。」
十紀人「あぁ。」

俺たちは粋たちが待つ部屋に足を進める。
この時俺はまだ戦いが終演していないことに気がついていなかった。
戦いの火種は既に出来ていて俺らに着実に近づいていることを・・・。
再び戦いの炎が俺たちの身を焦がすことを・・・。
今の俺達が知る由もなかった・・・。
いや、戦いは終わったと思っていた俺達が気付けるはずもなかったんだ。
再び紅い色に染まった月が俺たちに警告するまでは・・・。
・・・
・・





       

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