Neetel Inside ニートノベル
表紙

死人延長線
第二話 【誕生日】

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「貴方は死にました」

「…」

「大変残念ですが死にました」

「え?」

目の前には一人の女子がいた

理子さんだった

ゆっくり周りを見渡してみた

理子さんが轢かれそうになった横断歩道だった

「あれ?…」

「頭の中はスッキリしましたか?」

「いや、全然…てか理子さん!?大丈夫でしたか?」

「なにがですか?」

「いや!車がアレして…轢かれそうになったから俺が…」

「あぁ私は大丈夫です、でもあなたは死にました」

あぁ

やっぱ轢かれてたか、俺が

あれ…でも今ここは昼間の横断歩道だ

もう日も暮れて夕方だけど

「大変でした、貴方を轢いてパニック状態の運転手から逃げるのは」

「なぜ逃げたし、てか死んでなくないですか?」

「いえ、死にました」

「いや!今こうしてココにいるし!」

「それはそうですよ、私が直しましたから」


     

「私が直しましたので大丈夫です」

「大丈夫って、さっき確かに轢かれたし…ッ!」

その時俺は自分の首元に触れた

冷たかった

「え?」

「右肘を見てください」

「え?」

「それは膝」

「あぁ…って何これ!」

俺の右肘には一周ぐるりと縫い目があった

「頑張って縫いました」

「あっ、ありがとうございますじゃなくて!?」

よく見てみると色々なところがツギハギだらけだった

「大変でしたよ、すごい勢いで跳ね飛ばされていたので死体の損傷がひどかったです」

まだよく理解できない

でも轢かれたのは確かだ、すごく痛かった、泣きそうだ

でも生きている、体は冷たく、ツギハギまみれだが

目の前には理子さんもいる

「貴方は死んで、また人生をリセットしました」

「ちょっと待ってください」

「はい」

「俺今ここにいますよね、動いてますよね」

「はい」

「何でですか」

「私が直しました」

「つまり何ですか?生き返ったんですか!?」

「はい、半分だけ」

     

意味のわからない愛しの理子さんとの会話が続く

「説明しても良いですか?」

「なにが?」

「今あなたが知りたい事、全てを」

願っても無い

「じゃあ質問です」

「はい」

「なんで理子さんは死んだ僕を生き返らせることができたんですか」

「それは神様が命を与えてくれたからです、私は貴方の肉体を修復しただけです」

まさかの宗教発言!だがスル―して質問を続ける

「神様って誰ですか」

「全知全能なる神、代々木 木津野(よよぎ きつの)さんです」

「えらく日本名の神様ですね」

「はい、日本担当の神様ですから」

だいぶ信憑性がなくなったが本当に僕は死んでいるっぽいから信じてみよう

「じゃあ何故、何故僕は生き返ったのですか!?」

「それは私のミスが始まりです」



「それはどういう事ですか」

「私は日本担当の死神です」

信憑性が消え失せた

「真面目に答えてください」

「?大真面目です」

そんなキョトンとされても

     

俺が好きになった人宗教的発言をしまくる中二病かもしれない

「信じられないでしょうが信じてください」

「頑張ってみます」

「ありがとうございます」

もういっぱいいっぱいだが

「それでは順を追って説明します」

「お願いします」

「私は日本で生きる全ての人々の死を管理しています、代々木さんが決めた寿命が来た人の命の火を私が消します」

代々木さん…?あぁ神様か、解りにくいっ!

「しかし貴方はまだ死ぬ予定ではなかったのです」

「はぁ」

「命の火を消すのは予約制で前日のうちに火を弱めておきます」

「へぇ」

「しかし私が…」

「どうしたんですか?」

「…あの、つい昨日うたた寝をしてしまって貴方の命の火を弱めてしまっていたのです」

「何故ぇ!!?」

「本当にすいませんでした、完全にこちらのミスでした」

「あっまさか土下座するとは、大丈夫です!ホラ、ちゃんと生き返らせてくれたみたいですし…」

「…」

理子さんの顔がどんどん暗くなっていく

どうしようアババ

     

「あの…」

理子さんがさらに申し訳なさそうに言った

「正直な話、こういったミスはそのまま死んでもらって無かったことにするんですが」

まじで正直に言ったな

「貴方には子供が生まれる予定だったのです」

「ハィッ!!?」

声が裏返ってしまった、何を言い出すのか彼女は

「しかも貴方の子供は医者になり何人もの人々を救う立派なお子さんになる予定でした」

「それはすごい…てかそんなことも知っているのですね代々木さんは」

「全知全能ですから」

あぁ、そっか

「しかし貴方が死んでしまった以上その子供が救うはずだった人たちの命までも消えてしまうのです」

すげぇな俺の息子

「だから貴方を代々木さんが特別に生き返らせたのですが…」

「ですが?」

「人の命は消すことは簡単ですが生み出すことは大変難しい事なのです」

あぁセックs(ry

「なので大変苦戦し、貴方の体は心臓も動かず」

だから体超冷たいのか

「しかも…」

まだ何かあるのか

「貴方の存在がリセットされ、全ての人の記憶から消え去ってしまったのです」



     

正直どこから信じればいいのか解らない

「今貴方の事を覚えているのは私くらいです」

要するに俺の周りの人みんなに忘れられたって事か

なんか…信じられないというよりも信じたくない話だ

「本当にすいませんでした、これからは私があなたの事をサポートします」

「サポート?」

「はい、あの…貴方の親御さんも間違いなく貴方に関する記憶がなくなっているので…」

「あぁ…その事なら大丈夫です」

「何故?」

「僕の親はもういないのです」

「えっ、でも生者リストにいますからまだ…」

「いないのです」

「…そうですか」

僕の親は僕と姉を捨ててどこかに行ってしまった

まぁただそれだけのことなんだが…

「あっ!」

「どうしました?」

「姉が…姉がいるんです、少し姉のところに行っても良いですか?」

多分姉も忘れているのだろうが今のうちに会っておきたい

「でもお姉さんも…」

「解ります、それでも一度だけ」

そういって僕は小走りで自分の家へと向かった

「ま、まってください!」

理子さんは体育が苦手だ、おっそい!!

     

あまり離れた場所ではなかったので早めについた

「ん?」

何か違和感があった

姉がもう家にいる、いつもなら仕事でまだ家にいないはずの時間なのに

理子さんが息を切らせて僕の肩を掴んだ

「ッ…ハァ…ハァ…なッ…何かッ…」

死にそうなほどに息を切らせている

「どうしました?大丈夫ですか」

「ハァー…貴方に関する記憶が消えたという事は貴方無しの生活になっているということなんです、つまりお姉さんの生活に何らかの変化ができたという事です」

あぁ…そうか、もう姉は僕のいない事になっている生活を送っているのか

忘れたのか、なんか熱いものがこみ上げてくる

「ちょっと会ってきます」

「えっ、待ってください!」

「はい?」

「…多分、つらいものですよ、自分が知っているのに相手は自分の事を知らないという事は…」

「大丈夫です」

何を無責任なと思ったが怒ってはいない

僕は死んでも理子さんの事が好きなんだとしみじみ思った

とりあえずインターホンを押してみた

ピポーン!

どうでもいいがインターホンって押すとピーンではなすとポーンなんだよね

すぐはなすと今みたいな音が鳴るんだ

トタトタと足音が聞こえる

忘れているという事はどういうものかはわからないが覚悟はしておいた

扉が開いた

「セールスおことわrってお前かよ、おかえりー」

「うんただいまーっッて!?」

話が違うぞ、と理子さんの方を見た

理子さんもすごく驚いている

じゃあ誰が説明するんだよ

     

「今日は仕事を早めに終わらせてきたんだ」

「へぇ…」

「で!後ろの子は誰よ!彼女作ったんか!お姉ちゃん出かけてこよっか!?ウヘヘ!」

「いえ、違いますのでお構いなく」

理子さんマジクール

てかそんな普通に否定しなくても…あれ、何だろう?目から汗が

「ふーん…まぁいいや、上がって」

「お邪魔します」

てか、姉の記憶は普通にあるっぽい

やっぱりドッキリか?なんであれ少し安心した

「なぁ、姉ちゃん」

「ん―?」

「俺は誰でしょう!?」

「ゴミ」

よかったいつも通りの姉だ

さて、理子さんは普通に家に上がったがやっぱりなんか言うんだろうな

すごく驚いていたっぽいし

てかお姉さま、ズボンぐらい穿いてください

三人、広いとは言えない部屋のド真ん中に置かれたコタツに入った

     

「で、こちらのお嬢さんは何用ですか?」

「急な話ですいませんが弟さんを貸してください」

!?

「ウハッ!!何何!やっぱりそうゆう関係なの!ギャハハ」

姉が半狂乱と言ってもおかしくないぐらい舞い上がっている

それにしても下品な笑い方だ、黙ってさえいればモテそうな顔立ちをしているのに

てか理子さんも何を言い出すのか…どうせ死んだ事関連の話なんだろうが

「弟さんは今悪の組織に追われていて私の核シェルターでかくまうのです」

理子さんが何を考えているのかわからないけど嘘をついている事は解った

てか正直理子さんの言っている事すら怪しくなってきた

冷たい体も外の気温のせいだったのではないだろうか

ツギハギはよく解らないが

ムムムと考えていたら姉が寄ってきた

「なぁなぁ、あの子何者?彼女じゃないん?」

「あー…なんていうか、友人?」

「へ―…悪の組織は?」

「それは…」

ふと理子さんの方を見てみるとなんか…ってなんだアレ!なんかすごい顔してる!

あぁ、きっとアレはウインクだ、理子さん出来てない

でもおk伝わりました

「悪の組織ってほどではないけどちょっと事情があってさ、彼女にかくまってもらうんだ」

「そうなんか―…」

よく事情は俺も解らないんだ、すまん姉よ

       

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Neetsha