神器〜ZINKI〜
導入〜はじまるお〜
結論から言ってしまおう。
これは夢だ。夢に違いない。
小説的には最悪の夢オチなのだ。絶対そうだ。
あり得ない事が今目の前で起きている。ありえないのだから、
こんなことは夢だと言い聞かせ、頭のゴチャゴチャを片付けるのが正しいのだ。
目に焼きついた光景。明日になれば何の事はない。
夏休みの初日が始まり、昨日の夜は不思議な夢を見たなぁ。で終わるのだ。
しかし、今日の夢は暴力的だ。
痛い。痛すぎる。
夢の中の”美”少女は驚きのあまり、しりもちをついてるのだ。
17にもなる恥じらいだらけの乙女が、お尻を地面に思い切り叩きつけて。
ありえない。全てがありえない。尻もちついてカッコワルイ私もありえない。
………。
…そういえば、今年の夏はありえない事だらけだった。
毎朝テレビのニュースから流れる、日本の至る所で葬儀中の死体が”消える”という事件。
間違いなく今年一番のニュースで事件だ。
夏を目の前に大運動会ですかね?とニュースキャスターの不謹慎な発言も問題になってる。
そのニュースに少し関連して、、、いや、訂正。大いに関係してる。
一番の親友で、幼馴染で、ライバルのアイツが、「交通事故」であっけなく死んでしまった事。
本当に突然で、あっけなくて。 ありえないスピードで葬儀が始まって。。。
そして、、、
そのアイツの遺体は、今年一番のニュースの仲間入りをした事…。
本当に今年の夏はありえない事だらけだ。
まさか、怪奇事件に彼だったものが巻き込まれてる。
私にとっても身近で、一番のニュースで、事件なのだ。
それから、またまた訂正、大訂正。死体が”消える”なんてニュースは今年一番じゃない。
なぜなら、私の目の前で起きてることが大ニュースになるからだ。
人と…「変なもの」が…争っている。
変なもの… 小動物ぐらいのサイズで、二足歩行。
サルでもない。どちらかと言うと口の辺りは犬だ。こんな生物見たこと無い。
それと、人も人なのか怪しいところだ。
なにせ たまーに指からビーム、、、いや、あれはサンダーブレーク(雷)だな。
を出している。
そして、その雷男の隣には男の幽霊。。。だよな。顔しかネェ。
が雷男と会話している。
この謎の三体の争いをポカーンと見ている私。
しばらく見ていると、「変なもの」にサンダーブレークがHITし、動かなくなった。
争いごとの音がなくなり、雷男と幽霊男の会話が聞こえてくる。。
「まぁまぁ、動けるようになったじゃないか。」
「ハァハァ…け、結構疲れるな。この技」
「まぁ、一日5発が限度だろうなぁ。結界を張った後だから”力”もそんなに残らないだろうし、
次は近接近戦の特訓か何かしないとな。」
「ハァハァ…武器の特訓かハァハァ…
……それと…ハァ、ごめん。一つ言い忘れてた。」
「ん?どうしたんだ?」
「ハァ…、、、見られた。ハァハァ… 後ろに…人が…。 しかも少しヤバイ。」
「ありえない。。。」
私は自然に、頭の中で反芻してた言葉を出してしまっていた。
「うはぁ、、、何故だ!どうしてだ!?結界は張ってるだろ!?ありえない!」
それは私の台詞だ。幽霊男。
「ハァハァ…少し、ハァ…アイツは…ハァハァ…特別なんだ…」
「ありえない。。。」
私もまた言ってしまった。
だって、ありえないんだもの。雷男は私が良く知っていて。
いや、雷男の事なんか全然分けわかんなくて…ワケワカメッス!
そんな混乱気味の私に、”アイツ”は声をかけてきやがった。
「ごめん。驚いたろ? 響(ひびき)。俺、今生きてるけど、生きてないからw」
死んだ人間が、雷男が、嫌に聞きなれた声で、私に向かってわけの分からない事を言う。
「こ…」
「ごめんなー。おどろいたろーw 訳は話せないんだ。だかr…」
「この大馬鹿翔太ぁ!訳の分からない事ほざくなぁぁぁ!!」
あぁ、いいアッパーだ。このパンチをガゼルマンパンチと名づけよう。。。
「ひでぶぅっ!」
クリーンヒットした翔太(しょうた)は、その場でなだれ込む。
この夏、一番ありえないのは私だ。
死んだ親友が生きていて、そんな驚く状況にありながら…。
彼を殴り飛ばしているのだから。