Neetel Inside ニートノベル
表紙

姉、アネ、あね
さいご

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“前回の逮捕劇から一年後――私は今日出所します”
「――って、何よ、この嘘モノローグは! 勝手に私の台詞を作らないで!」
「……ちっ、バレましたか」
「おい、そこのクソ女狐。あんたかなり性格が悪いわね」
「気のせいですよ。それにこれは、あなたがわたしに捕まる夢を見たと言ったのが発端ですよ」
「だからといって、勝手にモノローグを入れる必要はないわよね」
「……暇でしたので」
「やっぱ、あんた性格悪いわ」
 前々から気にくわなかったけど、勝手に変なモノローグを入れたりするとか最低だわ。
 仮に入れるとしても『待ち望んだ運命の日。私は洋くんと結婚します』ぐらいの素敵な
モノローグを入れて欲しいわね。
「姉弟で結婚なんか出来ないわよ」
「ふん、法律なんか私の前では意味をなさないわよ。あと、勝手に人の心を読まないでよ愛穂」
「心なんか読んでないわよ。全部、あんたの口から洩れてただけよ。勝手に人をエスパーか
なにか変なものにしないよ」
「うぐ――っ」
 だって、愛穂なら本気で人の心を読んだりしてそうなんだもん。それくらいこの女は
色んな意味で危険なのよね。
「また口から洩れてるわよ」
「――っ!?」
 こ、これはアレよ! 私は素直な人間だから思っていることが全部口から出ちゃうのよ!
 あぁ、なんて純粋で可愛い私。その様はまるで天使のようだわ。
「「ねぇよ!」」
 二人からのツッコミが入る。
 なによ。そこまで声を合わせて突っ込まなくてもいいじゃない。ちょっとした冗談なのに。
「あんたの冗談って笑えないのよね」
「そうですね。あなたの冗談は世界一笑えない冗談ですよ」
「んな――っ!?」
 そこまで言うことはないんじゃないの!? 世界で一番はないでしょ流石に。せめて、
町内で一番くらいにしておいて欲しいわ。
「はぁ……こんな子を外に出すわけにはいかないわよね」
「ほんとですね。こんな変人を外に出すのは有害以外の何物でもないですよ」
「ちょっ、そこまで言う!?」
「あんた自覚なにの?」
「なにそれ、恐いです……」
 ま、待って……私って、そこまで危ない人間なの? 全然自覚とかないんだけど。と、いう
より今まで普通の人間だって思っていたわ。
「ほんとは嫌なんだけど、アタシ達が責任を持って監視しないといけないわね」
「そうですね。それがわたし達の責務ですよね」
 えっ、何なの? その勝手な責任感は……一緒にいてくれるのはいいけど、責任感で一緒
にいてくれるのは嬉しくともなんともないんだけど。
「世間の皆さまのため。そして洋のため――」
「わたし達は彼女を監視ましょう」

「「……はぁ」」
 盛大に溜息を吐く二人。
 何これ。終始私がバカにされていただけのような気がするんだけど。
 しかもただの危険人物として扱われているし。
 納得がいかない……ほんと、納得がいかないわ。こうなったらいずれ――

 あの二人を出し抜いて、洋くんを私の物にするんだから! そして最後には、

「結婚――「「させないわよ!」」っ!?」
 結婚してやろうと思います。うん、絶対に負けないんだからね!
 だって私は洋くんが大好きだから! 姉が弟を好きで悪いか!

       

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