僕が尋ねる十二の質問
プロローグ/第一の質問
僕には可愛らしい妹がいます。
眼は少し切れ長で、パッチリとした二重。肌は透き通るように白く、滑らかで純朴そのもの。背は158cm、体重は非公開。バストウエストヒップに関しても非公開だけれど、お世辞にもナイスバディとはいえない体。もちろん太っているわけではなく、むしろ細い。というか、細すぎる。この補足説明である程度彼女の悩みを理解してほしい。
僕の妹の名前は、相嶋湊(みなと)
かわいい、かわいい、可愛過ぎてなんだかトリップしてしまいそうになる、僕の妹。
「さあーて、湊ちゃあん朝だよぉ」
僕はそういって、扉を開け布団を捲る。
「まあったく、お寝坊さんだなあ湊ちゃんは! 僕が起こさないと、起きないんだからなあ」
僕と妹の関係はいたって良好、仲の良い兄妹として、周りご近所では有名なほどである。いや、むしろ仲が良すぎて心配されているといっても過言ではない。
「けれど、湊ちゃんももう高校生なんだから、いい加減自分で起きられる様にならないと、駄目だぞ! ほら起きて起きて、……え?」
おいおい、湊ちゃん朝からその要求はちょっと過激じゃないかい?
しかしまあ、そうだな。湊ちゃんは、子供のころから白雪姫の絵本が好きだったものな。
さながら僕は王子様、って、ははは、湊ちゃんにはもっとふさわしい男の子がいるはずだよ。
まあ、でもそんな男の子ができたら必ず僕に紹介するんだよ? とりあえず、さだまさしの親父の一番長い日より苛烈な一発を見舞ってやるから。……ああ! いや、なんでもないよ!? そうだね、そうだね、遅刻しちゃうね。
「仕方ないなあ、……んー」
と、僕は枕のほうに唇を近づけて……。
がちゃりと扉が開く。
「サトルお兄ちゃん起きてる?」
と、制服を着た本人がやってきてしまう。
先ほどの説明とは寸分違わぬ妹が、やってきてしまう。
突然の出来事に体の固まった僕は、起きているのか? という質問に対し、答えることができない。
やばい、見られた。
やばい見られた、やばい、見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた!!!!
「お兄ちゃん、何やってるの?」
見られた、どうしよう、っていうか訝しげにこちらを見ているよ! キモい兄だって思われてしまう! 妹を起こすための練習をしているなんて、バレたら今後一切話しかけてもらえなくなってしまう! 彼女の優しい声色が僕に届かないなんて、それこそ終末世界の到来だ!
いや、冷静になれ、僕。
ごまかせばいいのだ、とりあえず話を変えるのだ。普通に、おはよう今日も天気がいいねウフフって返せばいいのだ。何のことない普通の挨拶、普通の挨拶普通の、普通の……!!
「お兄ちゃん?」
「うっさい、黙れクソガキ」
咄嗟に出てくる、いつもの言葉。
「ひっ!」
と、喉を絞ったような声を上げた湊ちゃんは、扉を開けたまま、固まり、そのまま震えて後ずさる。
厳かに閉められていく扉。
隙間から除かせる彼女の瞳は濡れていて。
僕は今日もやっちまったことを確信する。
ははは、あれ? 世界が濡れてて見えないや……。
ああ、どうもこんにちわ。相嶋湊の兄、相嶋聡(さとる)です。
そうそう。僕には悩みがあります。
みなさんに、聞きたいのですが、というか答えていただきたいのですが。
どうやったら、妹と仲良くなれるでしょうか。
可及的速やかに答えていただけると、幸いです。