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その国家、不滅につき

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 その国の姫君はビッチであった。
 後の王立図書館の政務記録を紐解けば、王である父に頼んで男性の国民全員にズボンとパンツの着用を禁じたという。当然反対するものもあったが、そのうち男は去勢、女は売春宿に歯をすべて抜いてから売り払った。
 そうして護衛たちをひき連れて城下町を練り歩き、その晩の供を選んだという。
 しかしこの姫君、ただの尻軽ではなかった。男性に対して実にこだわりをもって接したという記録が残っている。







 こんな話がある。
 ある日、いつものように街を回っていた姫君は一人の男に眼をつけた。
 それは華のような美少年だったが、着ている衣服はみすぼらしく、つぎはぎだらけで、もっとも低い身分の男であることは一目瞭然。
 純白のドレスを身に着け七つの宝石を散らばせたティアラを頭に頂く姫君とはまるで正反対の男……
 しかし美貌に関して言えば、決して姫君にさえ引けを取らないであろう男だった。
 その男も当然だがフルチンだった。
 姫君は男の股から垂れ下がったものを見て足を止めた。
「どうした。余の御前であるぞ。何を情けないザマをさらしているのだ。ただちに起たせよ!」
「は……」
 男は股間に手をやろうとした。
 それを見た姫君はカッと頬を朱に染めた。
「そなた、余を愚弄する気か?」
「そ、そんなことは……おはずかしながら、さきほど自慰にふけったばかりでありまして、力が涌かないのです」
「ほう……」
 姫君は切れ長の目を細めた。唇がぞっとする冷笑をたたえる。
「そなた、女はおらぬのか?」
 男は歯を食いしばって俯いた。この時代、土地も家来も持たない男がいかに美しかろうと女性に振り向いてもらえるはずがなかった。
 地位も、安い女を買う金さえなく、男は貧民窟のそばを通り過ぎる派手な女たちで震える自分を癒していたのだった。
 姫君は託宣のような高い足音を響かせて男に近づき、その前にひざまずいた。
「っ! 姫さま!」
 たかが下層階級の男の前に一国の姫が膝をつくなどあってはならぬこと……だがこのとき姫君は一にらみで言葉もなく護衛たちを黙らせたという。
 後のカリスマはうら若き頃から萌芽していたことがうかがえる一節である。
 姫は男の垂れ下がったモノを絹の手袋に覆われた指でもてあそんだ。男は身を固くし、声も出ないようだった。
「よかろう。そなた余を満足させられたなら、未来の玉座を約束してやってもよいぞ」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ――余の攻めに耐えられたらな?」
 そのとき浮かべた笑みはまるで魔女のようであった、と見物していた民の日記には記されている。
 姫君は狼の子孫と呼ばれる王家の血筋に恥じない動きで、男を組み伏せた。
 フリルのついたスカートが、男の腹から膝頭までを覆い隠した。
 潮の満ち引きのように、スカートが路面をこする。
 男の顔がどんどん赤面し、そばにいた民たちも頭から湯気が立ち昇るかと思われた。
「あ、ああ、あああ!!」
「ううん……」
「こんない、いきなり……あ、あっ」
「ふふ……よいぞ、よいぞ。これはなかなか……んっ」
「あっ、や、やめ、そこはぁ……いっ!!」
「んっ……く……はあ……あぁ……」
 不思議なことに姫君はことが進むに連れて顔が青ざめていったという。
 男との繋がりを感じるごとに肌が透き通るように白くなり、まるで情事が姫をさらに美しくさせているかのよう……。
 天賦の魔性だ。
 それを真下から、息のかかるような距離で見ていた男が耐えられるわけもなかった。
「あああああああああ!」
 スカートからはみ出した男の生足がびくびくっ、と痙攣し、憑き物が落ちたように弛緩した。
 男はぐったりと路上に伸びたまま青空を見上げている。
 姫君は立ち上がり、それまでスカートに覆われていた男の恥部があらわになった。死んだミミズのように力なく腿にもたれている。
 ずれていたティアラの位置を直すと姫君は眉をひそめて吐き捨てた。
「早すぎる」
 そういうと、もう男には見向きもせずに、護衛に一言耳打ちすると、すたすたと賑やかな市場の方にいってしまった。
「え……」
 男は呆然としてその後ろ姿を見送る。その端整な顔に影がかかった。
「恨むでないぞ」
 護衛のひとりは短剣を抜くと、それをしなびた男の性器に向けた。ひゃっと男が情けない悲鳴をあげる。
 しかし切断されるようなことはなかった。姫君は血を嫌ったのだ。
 護衛が何事か囁くと、剣から稲妻が走り、男のおいなりさんを直撃した。
「ぎゃあ!」
「…………」
 護衛たちは顔を見合わせると姫を追って去っていってしまった。
「な、なんなんだいったい」
 男はふらふらと立ち上がった。いちもつはまだくっついている。
 よかった。男の唯一の楽しみはこの肉棒に血をたぎらせることだけなのだ。去勢などされたらとても生きていけない。
 それにしても気持ちがよかった。ああ、初めてが姫様だなんて奴隷仲間になんて自慢したらいいだろう? あの柔らかい秘肉を自分の一部が埋めていく感覚……。
 見ろ、いちもつもあまりの快感に役目は終えたとばかりに縮み上がって……
 あれ?
 男は性器をつまんでみた。
 自分のものはこんなにも小さかっただろうか。いくら勃起していないとはいえ、親指の半分もない。毛の中にほとんど埋もれてしまって……
 そのとき。
 つるん、と、男の手からチンコが逃げた。
 え?
 チンコに逃げられた経験など無論、男にあるわけがない。男は茂みをかきわけてチンコを探した。
 あった。
 あったけれど。
 ペニスは、いまにも、男の中に沈んでいこうとしていた。


「うわああああああああ!」


 絶叫して皮をかぶった先端をほじくり返そうとした。
 爪が肌を傷つけて血が滲むが構うものか。
 ああ、いってしまう。なくなってしまう。
 男は包茎だった。なんとか皮をつまんで引っ張っているが、いったいどういう力が働いているのかチンコはさらに強い力で吸い込まれていく。
 このままでは皮が千切れてしまう。男は涙を流して叫んだ。
「誰か! 誰か助けて! 助けてください!」
 一拍置いて。
 男のペニスは、新しくできた隙間の中に完全に取り込まれてしまった。
「あ、ああ、あああ……」
 男は膝をついて、股ぐらに手をやった。
 何もない。どんなに辛いときでもそばにいて、自分を励まし、慰めてくれたチンコがない。もう女の子を見ていきり立ち、永遠に来ないであろう至福を夢想するだにできない。
 何人か、ことの始終を見ていた男たちがチンコをなくした男に近づいていった。
 チンコをなくした男は力なく首を振った。
「やめてくれ。同情なんかいらない……うわっ!」
 いきなり男たちはチンコをなくした男を掴むと地面に引き倒した。どうっと倒れこむ。
「なにするんだ!」
 そのとき男はハタと気づいた。
 おかしい、自分はこんな甲高い声をしていただろうか。まるで賛美歌を歌う若いシスターみたいじゃないか。
 自分を引き倒した男たちの目が血走っている。その股ぐらでいきり起ったモノの先端からは、透明な汁が糸をひいて路面を汚していた。
 チンコをなくした男は急に柔らかく弾力に満ち始めた尻をつかって後ずさりした。
「や、やめろ……何を」
 男たちの一人が飛びかかってきて、チンコをなくした男(?)が着ていた肌着を引き裂いた。
「あっ!」
 ぽろん、と。
 破れた布の間から、リンゴ色の乳首のついた、豊満な乳房がまろび出てきた。
「あ、ああ、あああ!」
 群がる男たちの手が女の身体を弄ぶ。たわわに実った乳房をわしづかみにし、もぎ取らんばかりに引っ張る。さっきまで男を守っていてくれたチンコはもはやない。新たにできた空洞に男たちの乾いた指が伸びていく。女は必死に腿をよせて抵抗するが、男たちによって強引に開かれてしまう。
「やめ、やめて、ぼ、ぼくは男だ……」
 誰も聞いちゃいなかった。
 男たちの幾本ものペニスが、女へと殺到する。







 女の絶叫が通りを引き裂いた……。
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