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Life

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 重い足取りで少女は扉へと歩く
 老人の家の奥
 簡素な家に似つかわしくないその扉を少女はゆっくりと開けた

「何よ、これ」

 そこにあったのは
 無数の檻
 無数の水槽
 無数の命

 そしてそれは
 人の都合で奪われるはずだった命


 男は知っていた
 人の命を奪った自分に人を救う資格はないと

 老人は悟っていた
 人の命を奪った自分に救われる資格はないと

 二人は諦めていた
 それでも思い出にしがみ付いていた
 女が愛した命を少しでも守ることで償おうとしていた


 少女は知らなかった
 二人のことを
 命を奪うことで背負う罪の大きさを
 それでも尚償おうとしていた愚か者たちのことを

 そして少女は知った
 知ってしまった
 自分は罪を犯し彼らと同じ愚か者になったことを

 不意に少女を押し潰す
 罪悪感 嫌悪感 敗北感

 それらが彼女に死を選択させるのに
 多くの時間は必要無かった

 絶望の先で少女はこめかみに銃を突きつけ



 その引き金を引いた――
12

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